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- タレント・マネジメントとは
「タレント・マネジメント・システム」については、企業規模の大きい、特に海外などに支社支店が多いクライアントからよく問い合わせがあります。グローバルな拠点展開をするにあたり、慢性的な人材が不足している状態、いわゆる「人材難」はかなり深刻な問題のようです。 今回はそうした「人材難」を解消する方法として、そして今や大切な経営課題でもある「タレント・マネジメント」について、少しまとめてみたいと思います。 目次 タレント・マネジメントとは HRMからTMへ タレント・マネジメントが注目される理由 タレント・マネジメントのメリット タレント・マネジメントを支えるシステムの構築 タレント・マネジメントをスムーズに進めるには タレント・マネジメントの今後 最後に 関連コンテンツ タレント・マネジメントとは 国内では2010年ごろから急激に注目を浴び始めたタレント・マネジメント・システムですが、欧米では1990年代から研究がすすめられ、2000年に入ってからが導入を進める大手企業が出始めました。 当時のアメリカはMcKinsey&Companyの提唱した「War for talent(人材育成競争)」が盛んにおこなわれ、優秀なタレントを如何に発掘して自社に取り込めるかが新たな経営課題となっていました。 その背景には、欧米企業では、優秀な人材ほど、自らのキャリア・アップのため積極的に転職するケースが多く、後継者が育たなくなり、やむを得ず場つなぎ的に外部人材を登用すると言う悪循環がありました。また、大企業ほど短期的な視野で、業績や人材を評価する傾向が依然として強いということもあり、育成がおろそかになり、競争力を急速に落とす企業も現れていました。 こうしたことを反省し、グローバルで中長期的な視点で、人材活用や人材開発の必要性があったのです。 「Talent Management(TM)」を直訳すれば「才能管理」となりますが、意味的には「人財管理」に近く、従業員が持つタレント(英語意「能力・資質・才能」)やスキル、経験値などの情報を可視化し、人事管理データとして戦略的な人事配置や人材開発を行うことをいいます。 「なんだ、そんなことやっているよ」と思われる方も多いかと思いますが、確かに今までも似たようなことをやっていた企業は結構多いようです。ただ、その考え方や手法については部分的であったり体系化されておらず、またシステムとの連携など様々な面で、さらなる進化の段階にきているというのが、今の「タレント・マネジメント」です。 下記は世界最大の人材マネジメント協会SHRMの「タレント・マネジメント」の定義です。 “SHRMの「タレント・マネジメント」の定義” 人材の採用、選抜、適材適所、リーダーの育成・開発、評価、報酬、後継者養成等の人材マネジメントのプロセス改善を通して、職場の生産性を改善し、必要なスキルを持つ人材の意欲を増進させ、現在と将来のビジネスニーズの違いを見極め、優秀人材の維持、能力開発を統合的、戦略的に進める取り組みやシステムデザインを導入すること。 米国人材開発協会ASTD(ATD)(会員7万人の人材開発のプロ集団)の定義ではこのようになっています。 “ASTD(ATD)の「タレント・マネジメント」の定義” 仕事の目標達成に必要な人材の採用、人材開発、適材適所を実現し、仕事をスムースに進めるため、職場風土(Culture)、仕事に対する真剣な取り組み(Engagement)、能力開発(Capability)、人材補強/支援部隊の強化(Capacity)の4つの視点から、実現しようとする短期的/長期的、ホリスティックな取り組みである。 双方とも強調するポイントとしては「人材の採用・獲得」「人材の開発」「人材の適材適所配置・選抜」「能力開発(キャリア計画)」などになります。 HRMからTMへ 旧来の伝統的なヒューマン・リソース・マネジメント(HRM)では、経営者や管理者の視点から、仕事・業務中心に、人材の育成と配置が行われてきました。このタイプのHRMでは、偏った視点による判断と、体系化されていない育成方法により、正しい人材活用とさらなる育成には限界が見えていました。 以前のHRMの問題点 統一した人事評価、管理ができていないことから適切な人材を選定できない。 能力に合わせた能力開発・育成システムがないので人材が伸びない 部署単位で管理されているため、全企業グループ内の埋もれた人材を把握できない 欠員や新規プロジェクトがあっても、適任が分からずビジネスにスピードが出ない こうした欠点を克服させるために、人材マネジメントの視点を、従来の経営者的発想から、現場中心、職場の人中心の考え方に転換するようになります。 それは、タレント・マネジメントを導入するのであれば、まず「人材に対する考え方」を改める必要があるということです。 人材は単なる歯車の一つではなく会社全体の「財産」であると認識する 会社側は、個々のタレントの活用や育成に対する方針を明確化してあげる必要がある 会社が長期的な視点からタレント育成に取組むことに関心を持ち、社員が行動に移すことができる社内環境を整える こうした意識改革により「ヒューマン・リソース(人材)」から「ヒューマン・キャピタル(人財)」に考え方は変わり、時代は人財育成重視のマネジメントに切り変わっていきます。 大切なのは、「人財は、配属先の所有物ではなく、会社全体の財産である」という考え方です。 タレント・マネジメントが注目される理由 人材マネジメントにおいて「タレント」とは、「組織のパフォーマンス向上に大きな影響を与える能力を持つ人材」のことを指して言いいます。 弊社クライアントでは、グローバル展開している大手企業での導入が盛んです。これはやはり、企業がグローバル展開を進めると、まず最初に直面する問題として、グローバル展開に必要な多様性のあるタレント不足、「人材難」が避けられないからでしょう。 海外企業との競争でスピードが求められ、結果が出ないうちに見切りをつけ配置転換をするという事態が起き、結果としてパフォーマンス低下につながるというケースも少なくありません。このような経緯から、2010年以降は人材を活用、発掘、育成する「タレント・マネジメント」を本格的に取り組む動きが見られるようになりました。 ではタレントマネジメントのメリットはなんでしょうか? タレント・マネジメントのメリット タレント・マネジメントの導入によるメリットとして先ず挙げられるのが、人材の適正配置による効果です。人材の持つタレントを一元化して把握しておくことで、役職に見合った人材を社内から迅速に配置することが可能となります。他にもタレント・マネジメントがもたらすメリットとしては、下記があります。 経営戦略に合わせた人員計画・育成を、グルーブ全体で最適化することができる 限られた人材を最大限に活用できるため、空いたポジションなどに相応しい人材を素早く配置できる 新規部門の設立やプロジェクトチームの結成時など、適性にマッチした人材を素早く選択できることにより、ビジネスがスピーディーになる 中長期視点での社員の育成が行える 自分の適性に合った職務に遂行することで個人のタレントや意欲を伸ばすことが可能となる 配置転換などで見失いがちなキャリア情報を蓄積して、可視化できる 逆にデメリットも考えてみますが、やはり運用の難しさや、データを入力する立場にある上長や管理者、メンターなどの負担増が真っ先に思いつきます。さらに旧式の日本型HRMの企業では、転換だけでも相当な時間とコストがかかります。 この問題はスモールスタートで徐々に組み込んでいくしか解決策はないような気がします。タレント・マネジメントの目標を絞って、最適配置なのか、適正評価なのか、人材育成なのか、プロジェクト編成なのかと、優先順位を決め、出来るところから取り組むのも良いと思います。 タレント・マネジメントを支えるシステムの構築 タレント・マネジメント・システムとは、タレント・マネジメントを効率よく実践するためのツールです。 人材管理だけでなく、分析やそれに基づいた最適な配置、能力開発を支援し、採用、優秀な人材の定着、リーダー育成、メンタルヘルスケアなどにも対応しているのが特徴です。 何よりも現場に眠るタレント情報を一元化し、わかりやすく「人材情報を見える化」することが求められます。 またグローバル展開企業においては、システムの多言語化、つまり英語等の外国語対応も重視されています。 そして、「ビッグデータ」をタレント・マネジメントに活用するシステムも開発されています。 混合されがちなんですが、従来の人事システムとタレントマネジメントシステムは、機能的に異なったものです。 従来の人事システム 目的: 人事部門の定形業務を支援すること。「管理」の視点に重心。 ユーザ: 人事部門の担当者 機能: 既存の社員の所属、職歴、評価、給与 提供形態: インストール型ソフト、SaaSなど タレント・マネジメント・システム 目的: 人材資源を経営戦略に活かすこと。「活性化、有効活用」の視点に重心。 ユーザ: 経営層・所属上長・本人 機能: 既存の社員の所属、職歴、評価、給与に加え、潜在的な能力や将来的な要員計画の可視化 提供形態: SaaS、クラウド型が主流 個々人のデータを収集し、日々蓄積することでデータベース化し、全社的に活用できるシステムを整えます。 ここで大切なのは、研修やセミナーへの参加を示す「スキル情報」よりも、実務経験から得る「キャリア情報」を重視すべき点です。タレントは参加したからといって身につくものではなく、逆に参加していなくても実務を通して身についている場合もあるからです。 一旦、タレント・マネジメントの基盤が整い始めたら、次のステップとしてキャリア評価システムを取り入れましょう。評価と個人の希望に沿って、キャリアパスを明示することもタレント・マネジメントの重要な役割の一つです。そのためには、この「評価」と「育成」の重要性を理解したマネジャー、リーダー、もしくはメンターを現場に配置することが必要です。 タレント・マネジメントをスムーズに進めるには 最初に述べた日本企業独自の「日本型人材管理」により、タレント・マネジメントがスムーズに行えない状況にある企業は多いようです。現在でも終身雇用制時代に行われていた「部門固定型雇用」により、自由な人財の配置や育成の障害なり、人材流出を起こしているケースが多々見られます。 繰り返しになりますが、「人財は、配属先の所有物ではなく、会社全体の財産である」という意識に変わることが大切です。一度配属されたら配属先が勝手に使うのではなく、会社が管理し、財産として適切に運用できるようにしなくてはいけません。 本来タレント・マネジメントでは、人材の採用・配置や評価・育成は一元的に行われなければいけません。したがって、タレント・マネジメントを進めるには、まず「日本型人材管理」から脱却する必要があるのです。 そして、「タレント」として何を重視するかの考え方も変える必要があります。 ラーニング・マネジメント・システム(LMS)を導入している企業は多いと思いますが、LMSが蓄積するものは、あくまでも研修や学習で取得した「スキル情報」です。 しかし、「タレント」として重視されるのは「スキル情報」だけではなく、これらのスキルを「実際の業務で如何に活用」してきて、どのような「実績」を積んできたか、更には「どんな方向を目指しているのか」を表す「キャリア情報」が重要なのです。 タレント・マネジメント・システムを正しく機能させるためには、その入力データの評価をする立場の人間が非常に大切です。つまり、マネジャー、リーダー、メンターが、育成の重要性を十分理解していないと、タレント・マネジメントは機能しません。そのための企業風土や育成への考え方など環境整備も同時に行う必要があります。 企業風土や環境整備を進めるには、トップの理解と、現場の理解がどれだけ得られるかが肝になります。いかに組織横断的な相互支援態勢をとれるかにより、タレント・マネジメントの成果は大きく違ってきます。中長期的に労働力が減少していく中、社員のキャリア開発と適材適所をより的確に進めることで、社員のロイヤルティーを高め、社員の能力を発揮させやすくしなければなりません。 タレント・マネジメントの今後 海外の投資家では「タレント・マネジメントに熱心な企業はイノベーションが起こりやすい活力ある企業風土である」と考えられています。つまり、「タレント・マネジメント」に対する投資は「対外的企業価値アップ」への投資でもあるのです。そのため、どういったタレント・マネジメントを行っているかを公開することが、海外では当たり前のように行われています。こうした動きは徐々に日本でも行われており、これを見据えたタレント・マネジメントの検討が行われています。 そして、今話題のキーワード「ビックデータ」です。タレント・マネジメントのデータとして、ビックデータを解析して、今まで見えなかった「人材の価値」を可視化しようという試みがたくさん行われています。 具体的には、「優秀なタレントの行動」などをビックデータから抽出し、それとマッチした人材をピックアップすることができるシステムなどが登場しています。 最後に 最後に「タレント・マネジメント」に非常に密接にかかわる育成手法に「コーチング」と「メンタリング」があります。メンタリング&コーチング活動は、人を中心に、中長期的視野でキャリアと心を支援するタレント・マネジメントには欠かせない要素なのです。特にリーダー育成やメンタルヘルスケアでも、いかに「コーチング」と「メンタリング」を機能させられるかにかかってます。 グローバル展開の鍵になるともいわれている「タレント・マネジメント」ですが、日々いろいろな要素を取り入れつつ発展しており、これからも目が離せない状況が続くと思われます。 最後までお読みいただきありがとうございました。 関連コンテンツ レビックグローバルのラーニングマネジメントシステム SmartSkill Campus(スマートスキルキャンパス) SmartSkill Campus(スマートスキルキャンパス)は組織内に散在するナレッジや情報の共有、業務レベルの向上や均質化、教育・研修やタレントマネジメントに最適なeプラットホームです。
- コンピテンシーとは(その2)
前回は、「コンピテンシー」と「コンピテンシーモデル」についてご説明しました。 自社の各事業部のハイパフォーマーの基礎能力や技術・ノウハウ・習慣に至るまで細かに観察し、その人が「仕事ができる所以」を明確にした「コンピテンシー」を、行動基準や評価基準に導入することによって、他の社員の行動の質を上げていこうというのが「コンピテンシーの活用」です。 「コンピテンシーの活用」には、「コンピテンシー・モデル」と「コンピテンシー・マップ」が使われます。 目次 コンピテンシー・マップを作る 採用時にも導入されてきたコンピテンシーモデル コンピテンシーを成長させる人材育成 コンピテンシー能力開発に役立つ教材 最後に 関連コンテンツ コンピテンシー・マップを作る 「コンピテンシー・モデル」は、自社の職種に応じて必要な基準を明示することで、社員に明確な目的を与え、業績向上を図るものでした。その企業人として全員に必要とされる共通項目に加えて、職種に応じた専門知識やスキル、人間性などを具体的な目標で提示します。この目標がコンピテンシー・モデルの具体像となり、社員はこれを目標として成長します。 当然ですが、このコンピテンシー・モデルは、成長過程において変化するはずです。 例えば、昇級して管理職などに役職が上がれば、管理職として要求される内容に変化します。こうしたグレードの変化とそれに紐づけた能力試験などをマップにしたものが「コンピテンシー・マップ」になります。 コンピテンシーマップを作り、社員に対して公開することにより、コンピテンシーモデルをただ提示するのではなく、将来的な成長のイメージを植え付けることができるため効果的であると言われています。 採用時にも導入されてきたコンピテンシーモデル 面接で優秀だと判断した人材が、入社後、期待したほどの成果を出せなかったという経験をお持ちの採用担当の方は多いかと思います。 リーダー候補を見極めるのに適した「インシデントプロセス面接」のように、採用候補者の潜在能力を面接で見極めようというのが「コンピテンシー面接」です。つまり採用面接において、予め「できる社員」を採用できれば理想的であるのは言うまでもありません。そこでコンピテンシーモデルを使った面接や採用試験に導入する会社が増えてきたのです。 自社内でのハイスコアラーを分析し、そこから定義されたコンピテンシーを採用試験や面接の要件として取り入れます。すでに自社で成果を上げている人のコンピテンシーモデルなので、これに似た人を採用すれば、その人は成果を残せるのではないか?というのが根拠です。なんとも単純に聞こえますが、自社のハイスコアラーからコンピテンシーモデルを分析し、試験ツールを提供するといったサービスも現れています。 当然ですが、コンピテンシー面接は、通常の採用面接と質問内容が異なります。通常の採用面接では、志望理由、自己PR、前職・学生時代の取り組み、キャリア観、将来像などの質問をして、その受け答えによって総合的に判断します。しかしながら、面接官によって質問方法や評価基準にバラつきが出てしまい、本来、候補者が持っているポテンシャル(もしくはポテンシャルのなさ)を見抜けないことがあります。「コンピテンシー面接」は、面接の評価のブレを少なくし、見込み違いの発生を防ぐのにも有効なのです。 コンピテンシー面接は、候補者の過去の取り組みに関して質問を重ねて、それを具体的に事細かに掘り下げていきます。これにより、候補者の「行動動機」「思考方法」「実務能力」などをあぶりだすのです。候補者が説明する一連の内容(取り組みにおける問題解決プロセスなど)に矛盾がなく、候補者が持つスキルなどが自社のハイパフォーマーと照らし合わせて再現性があると感じられれば「コンピテンシーがマッチしている」と判断できます。 志望者の多い大企業では、コンピテンシーの考え方を、面接前のアンケートやテストに盛り込んで、事前にふるいをかけて候補者を絞り込むのに使っている企業もあります。 「コンピテンシー面接」は、Googleで採用している面接方法「構造化面接法」のなかの一つ、候補者の過去の取り組みについて質問を重ねて細かく聞き出す「行動面接(STAR面接)」にも取り入れられているそうです。 コンピテンシーを成長させる人材育成 コンピテンシーを成長させるための人材育成は、従来の新入社員研修や中堅社員研修、管理職研修などの階層別教育や、語学やPCスキルアップ研修などと異なります。コンピテンシーは行動特性を明文化したものなので、コンピテンシーによる能力開発(コンピテンシー開発)は「行動」に焦点をあてて行われなければいけません。 実際にその効果を測定される場合には、まず「行動変革あるいは行動の習慣化が行われているか」を観察し、中間成果の改善あるいは達成を判断します。そして最終的には業績の改善あるいは向上がみれらるかを数値的に判断します。コンピテンシー開発は、業績に直結しており、その影響をデータなどできちんと把握できるようにすることが大切です。 コンピテンシーの能力開発において重要なのが、上司や先輩による「コーチング」や「メンタリング」などのフォローです。対象者の行動や結果に対して、的確でタイミングの良いフィードバックを与えることにより、コンピテンシー開発のプロセスがスムーズに働きます。 コンピテンシー能力開発に役立つ教材 コンピテンシーモデルを使って人材育成を行うことにより、全体の成果が上がる可能性が高まります。また、現在目立たなくても、好業績を生む可能性を持った人を、埋もれさせずにすむ可能性があるのです。 コンピテンシー能力開発においては、行動特性を促すビジネスマインド系と、その行動を支えるスキルとして、コーチング、リーダーシップ、モチベーションなどの人材開発教材、トレーニングなどが使われます。弊社でも、クライアントのコンピテンシーに基づいたコンピテンシーマップを作り、それに教材を配置する形でLMSを提供しています。 最後に コンピテンシー能力開発では、本人の自覚とそれを定期的に評価するシステム、そして、スキルアップのツールの提供が必要です。 何よりも大切なのは、自社のハイパフォーマーの行動分析をしっかり行い、因果関係を明確に分析したうえで、正しくコンピテンシーモデル設定することです。そのプロセスで「自社の強み」と照らし合わせてコンピテンシーモデルを決定すると良いかと思います。 最後までお読みいただきありがとうございました。 関連コンテンツ 新入社員向けコンテンツ 若手・中堅社員向けコンテンツ マネジメント向けコンテンツ
- ダイバシティとは
近年、「ダイバシティの推進」をスローガンに掲げる企業が増えています。 経営戦略としての「ダイバシティ」の考え方は、多国籍・多人種の典型的な国家である1990年代のアメリカで発達しました。日本でも日本経団連などで推進されています。またここ数年のダイバシティ推進で、大きく業績を上げている企業もあり、かなり注目されています。 今回はこの「ダイバシティ」についてお話ししたいと思いますが、「ダイバシティ」と言ってもいろいろな視点がありますし、若干誤解されている点もあるかと思いますので、内容をダイバシティの意味を整理した「ダイバシティとは」と、その推進施策の1つである「ダイバシティマネジメントとは」の2回に分けて掲載させていただきます。 目次 ダイバーシティとは ダイバシティの歴史と日本企業への導入 ダイバーシティを企業に取り入れることとはどういうことか? ダイバシティのメリット ダイバシティの課題 最後に 関連コンテンツ ダイバーシティとは 「ダイバーシティ」とは、英語の「diversity」で「多様性、種々、雑多」と訳され、意味的には「多様性」をあてています。 では「多様性(たようせい)」とは何でしょうか? よく耳にするのは「生物の多様性」と言った使い方です。これは地球環境の中で様々な「種」の生き物が共存している事を指しています。 Wikiで「多様性」は、「幅広く性質の異なる群が存在すること。 性質に類似性のある群が形成される点が特徴で、単純に”いろいろある”こととは異なる。」と定義されています。 この「幅広く性質の異なるものが存在すること」は、ビジネスでは「多様な人材」を指し、戦略としての「ダイバーシティ」とは「多様な人材を活かす戦略」という感じになるかと思います。 ビジネスにおける「多様性」の意味としては、下記のように解釈するのが一般的なようです。 ”メンバーにある様々な違いを尊重して受け入れ、その「違い」を積極的に活かすことにより、変化しつづけるビジネス環境や多様化する顧客ニーズに最も効果的に対応し、企業の優位性を創り上げること” 「様々な違い」をデメリットからメリットとしてうまく活用するために、「様々な違い」を尊重して受容する環境を築けば、メンバーのコミュニケーションが円滑になり、さらに多様な視点が「新たな価値」を創造する可能性を高めてくれるというのがダイバシティ活用の狙いです。 ダイバシティの歴史と日本企業への導入 冒頭で少し出ましたが、ダイバーシティの発祥の地は米国です。当初は女性や有色人種などマイノリティの雇用機会の均等として進められ、差別是正や人権尊重が主な目的でした。 このように、初期は企業の社会的責任や福利厚生的な側面が強かったのですが、やがて1990年代後半になると、アメリカ社会の「人口構造の変化」がダイバーシティのコンセプトを大きく変化させていきます。 1990年代後半になると、米国の白人男性労働者は高齢化が進み、少子化傾向で人口が減少する反面、労働力における女性や白人以外の移民・有色人労働者の割合が急激に増えていきます。 この問題は「労働力の変化(雇用の変化)」だけでなく、消費者の変化、つまり、「市場の嗜好」にも現れ始めました。今までは「白人」をメインターゲットにしていた市場に、それ以外の「女性」や「移民・有色人」が作り出すニーズの割合が増えたのです。これは市場を形成する消費者の割合の変化が、企業収益に大きくかかわってくることになり、企業は自社内の「女性」や「移民・有色人」の声に耳を傾けるようになりました。 このように2000年代の米国では、「市場」と「雇用」双方からダイバーシティの重要度が大きく増したのでした。最初のきっかけは人権問題ですが、現在のダイバシティは、市場で有利になり、多くの消費者・株主・労働者に支援されて経済成長するための経営戦略として期待され取り入れられているのです。 では日本はどうかと言うと、日本は移民は少ないですが、米国よりさらに極端な人口減少時代に突入しています。高齢者の増加、若年層の減少、一人暮らし世帯の増加など、これまでの人口構造とは大きく異なり、さらにこれが「国内市場の縮小」という変化を生み出します。そして、少ない市場でやっていけなくなった日本のビジネスシーンは、IT化とグローバル化に活路を求めるようになり、企業は持続的に成長するために、ダイバーシティの推進に力を入れるようになりました。 旧日経連の「ダイバーシティ・ワーク・ルール研究会」では、以下のように定義されています。 「異なる属性(性別、年齢、国籍など)や従来から企業内や日本社会において主流をなしてきたものと異なる発想や価値を認め、それらをいかすことで、ビジネス環境の変化に迅速かつ柔軟に対応し、利益の拡大につなげようとする経営戦略」 「日本社会において主流をなしてきたもの」とは、「大卒男性社員の終身雇用」といったような、かつては日本成長を支えた日本流ビジネス概念を指し、それが今や成り立たなくなってきたことを示しています。 ただ、外国籍のメンバーとの協業の機会のまだまだ少ない日本では、ダイバシティはどちらかと言うと男女の雇用機会均等などの観点から注目されることが多いと思います。 しかしながら、ダイバシティの本質は、単なる男女平等やパートタイマーや外国人労働者の雇用だけの問題ではありません。性別や人種と言った異なる属性を認めるだけでなく、彼らから生み出される異質な発想や価値までを取り入れるが、本当のダイバシティなのです。 その意味で言えば、日本のダイバシティは今後さらに本格的な変化を求められるようになります。 “(参考)ダイバーシティの具体的な属性” ダイバシティの理解を深めるにあたり、まず、ダイバシティにおける属性の違いにはどのようなものがあるかを考えてみます。 ダイバーシティは2タイプの属性から成ります。 1つ目は「その人の本質的なこと」です。具体的には「年齢、性別、国籍、人種、障がい、LGBT(性的マイノリティ)※」といった属性です。 ※LGBT=レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーを指す表記。 2つ目は、本質的なもの以外のその人を取り巻くものです。具体的には「雇用形態、婚姻状況、宗教、嗜好、収入、親の職業、出身地、価値観」など、その人を取り巻く環境の属性です。 一般的にダイバーシティの属性は「性別、年齢、国籍」など表面的にわかりやすいものが取り上げられますが、実際にはそれ以外に表面的には見えない「家族構成、趣味や価値観」などの要素も含めて考える必要があります。 ダイバーシティを企業に取り入れることとはどういうことか? ダイバーシティの概念を取り入れるのであれば、企業は、個々人の「違い」を尊重し受け入れ、その「違い」に価値を見つけ、性別、年齢、国籍等にかかわらず個人の成果、能力、貢献だけを適正に評価し、全員が組織に平等に参画し、能力を最大限発揮できるようにすることが必要です。 これらを実行することにより、「組織のパフォーマンスを向上させること」がダイバーシティの目的です。 ダイバーシティを成功させている企業は、多様な人材の採用や定着ではなく、その先の「活用」にフォーカスして取り組んでおり、企業内の人材を誰ひとりとして無駄にしないことへつなげています。 このことについては、次回「ダイバシティマネジメントとは」で詳しくご説明いたします。 ダイバシティのメリット 企業がダイバーシティの推進に積極的になってきているのは、ダイバーシティがビジネスでの競争優位性をもたらしてくれるからです。 では、どのようなメリットがあるのでしょうか? ダイバーシティが企業へもたらすメリットは様々ですが、よく言われているのは下記のメリットです。 ダイバーシティのメリット 広範囲からの優秀な人材の確保と活用 多様な市場での有利性の向上 メンバーの創造性・革新性の向上 各メリットについて、1つずつ見ていきましょう。 1.広範囲からの優秀な人材の確保と活用 IT化とグローバル化が進む21世紀の高度情報化社会では、高度な知識とスキルを持つ優秀な人材を国内だけで確保するのは非常に困難です。企業に高い成果を出してくれる有能な人材は、世界規模での争奪戦から確保する必要があり、そこに性別や国籍などの属性が入り込む余地はありません。 また、優秀で多様な人材ほど、ダイバーシティを真剣に取り組む企業は魅力的に映り、そのような人材が集まって来ると言われています。世界のトップ企業がこぞって、CMなどで多国籍の社員を見せて、自社のダイバシティ性をアピールするのはそのためです。 2.多様な市場での有利性の向上 海外企業でダイバーシティが重要視されるのは、優秀な人材の雇用の面だけでなく、多様化する消費者の嗜好や価値観をビジネスに結びつけるのに多様な社員が有効だという理由もあります。つまり、多様な社員がいれば、多様な顧客ニーズや要求に対して、営業、マーケティングや商品開発などで、迅速かつ的確に対応しやすくなるからです。 ある企業の例では、スペイン系住民が多く住む地域に、スペイン語を話せるスペイン系社員に営業を担当させたところ、売り上げが大きく伸びました。同様に他の企業でも中国系顧客が多い店舗に中国系社員を登用し、業績を向上させたりしています。 このようなメリットを得るためには、会社自身が多様になることが求められます。 3.メンバーの創造性・革新性の向上 創造性・革新性のある商品を開発するには、似たような性質の均一的なチームからはあまり期待できないかもしれません。 同質性の高い企業では、皆が似たような視点や価値観を持つため、革新的なアイデアや問題解決策は生まれにくく、多様化する顧客のニーズに適切に応えられなくなります。そのため、組織の競争力を低下させるのです。 革新性や創造性は、異なる視点、経験やアイデアなどが刺激し合い相乗効果によって生まれることが多いと言われます。 異質性の高い企業なら、多様な人材のさまざまな経歴、個性や能力をフルに発揮させることにより、変化激しく不確実な経済環境に柔軟に対応することが可能になります。シリコンバレーの研究者やエンジニアたちの過半数以上が「外国生まれ」という事実は、そのような「多様な人材の集まり」から、今までにない多くの斬新的な製品やサービスが生み出されている証拠です。 ダイバシティの課題 導入することで、企業の競争力を高めることができるダイバシティですが、問題点やデメリットも当然あります。 ダイバシティの一番の問題点は、異質なもの同士が協業することによる「誤解」や「摩擦」などが引き起こす「トラブルの懸念」です。 昔の日本企業のように、同質性の高い集団は、一旦決定されれば、コミュニケーションが取りやすく、スクラムを組んでスムーズで効率的に物事が進んでくれます。 一方、異質性の高い集団はどうしても、コミュニケーションへが取りづらく、異質ゆえの表現差や考え方の違いなどから、軋轢・摩擦・対立・誤解が発生しやすいものです。結果、それがチームワーク・パフォーマンスの低下や大きなトラブルに発展する危険をはらんでいます。これがダイバーシティの大きな課題です。 つまり、先のマネジメントを何も考えずに、単に多種多様な人材を採用するだけでは、企業メリットにつながらないばかりでなく、かえってデメリットが生じ、その結果、チームの生産性やパフォーマンスが低下してしまうことになります。異質なチームであるだけでは高い生産性や仕事の質は約束されないのです。 逆に、違いを適切に受け入れ、効果的にマネジメントすることにより、高い創造性を維持したまま、問題解決やチームの生産性へプラスに影響させることができます。 そのためにも、制度を充実させ多様な人材を「採用・定着」させるだけでなく、全社員の態度と行動にダイバーシティの尊重を反映させることにより、様々な違いを「受容する企業風土」を築くことが重要です。 そのために、全社員のダイバーシティへの正しい理解と適切な行動を促進する教育や意識改革が不可欠なのです。 最後に 今回は「ダイバーシティとは」についてお話しさせていただきました。 次回「ダイバシティマネジメントとは」では、このダイバシティの課題をもう少し詳しく説明し、それを解決する手段として、「ダイバシティマネジメント」についてご説明する予定です。 最後までお読みいただきありがとうございました。 関連コンテンツ コンテンツライブラリ マイクロe-ラーニング マネジメント向けコンテンツ
- 研修代替とは
昨年2020年に続き、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために、政府が大規模イベントの自粛や学校の休校を要請するなど、かつて経験したことがないような厳しい状態になっています。 企業においても、新型コロナウイルスの影響を受け、サービス提供を停止したり一部制限を行うなどのケースが出てきています。弊社でも、部署によりテレワークとシフト出勤を駆使したサービスや業務の継続措置が取られています。 各企業の人事担当者の方々も、今まで経験したことのないような困難な状況に苦労されているのではないかと思います。 弊社顧客の皆様からも様々なお問い合わせや相談が寄せられています。不慣れなテレワークによりメンタル不調者が出そうだとか、コミュニケーション不足による業務上の問題が生じたなど、今まではあまり気にしてなかったオンラインで業務を進める上での穴が見えてきたようです。 特にオンラインミーティングやテレワークなどは、BCPの中心課題でありながら、日本企業全体の対応の遅れがこの騒動で露呈しました。 人材教育分野でもさまざまな影響を受けていますが、弊社においてご相談が多い項目として「研修代替」のサービス提案があります。 ご存知の通り、集合研修は感染拡大防止のための3つの「避けるべき密」である三密(密閉・密集・密接)にモロに抵触するため、どう考えても実施は控えるべき状況にあります。その為、研修の延期や中止はコロナ騒動初期に続々と表明され、弊社パートナーの研修会社様からは悲鳴が上がっていました。 今回はこの「研修代替」をテーマに、このような火急の状況で研修などの人材教育として、どんなことができるのかを考えて見たいと思います。 目次 研修ができない状況を考える eラーニングで研修代替 オンラインミーティングシステムを活用した研修代替 ちょっと変わった研修代替サービス 最後に 関連コンテンツ 研修ができない状況を考える ある研修会社の話しでは、集合型の研修のリスクが大きいとして、昨年2、3月の時点ではまだ「研修延期か保留中」だった企業は半分くらいだったそうです。その後、状況の悪化によりほとんどの企業が「集合スタイルの研修」を「延期」から「中止」としました。昨年は、集合型の研修をほとんど実施できなかった研修会社もあると思います。 理由は言うまでもなく新型コロナウィルスの想定以上の感染力でした。集合研修が三密(密閉・密集・密接)の状況にあたるだけでなく、地方からの参加者を集めての集合研修の場合、新幹線などのハイリスク環境での移動や、研修に参加することで都心で罹患してしまい、地方支局に戻ってクラスターを発生させる2次リスクの危険性などもあったからです。 初期の段階では、集合研修のグループを分割し、3~5名程度でマスクを付けて距離を取って実施すれば大丈夫か?といった案もありましたが、感染が拡大していき、それでは対してリスクは下がらないとして、検討課題に上がらなくなりました。弊社でも昨年2、3月の段階ではマスクをつけて会議をしてましたが、4月に入りテレワークになり、会議はほぼオンラインでの実施となりました。 そうこうしているうちに4月になり新入社員が入社してくる頃になると、企業はさまざまな決断を迫られました。 株式会社パソナグループの調べによりますと、「入社式を実施しない」と答えた企業は26.2%、そのうちの50%は、「社長メッセージの配信」など代替施策を行う代替対策を行うと回答しました。 問題の「新入社員の入社時研修を実施しない」と答えた企業は7.7%でした。実施しないと答えた企業の80%は代替として「eラーニング」など代替施策を行うと回答しました。その他の施策としては、動画視聴等による研修や自宅学習という回答でした。 参考リンク パソナ「入社式および新入社員研修に関する緊急アンケート(2020.03.18リリース)」を開く(外部リンク) このようにメンバーを集めて行う研修が難しくなり、研修を始め人材教育はオンラインでの代替サービスが注目されました。 次は具体的な代替サービス例を考えてみたいと思います。 オンラインによる「研修代替」を考えるうえで、主に2つのアプローチがあります。1つは、「オンデマンドで行う」、もう一つは「リアルタイムで行う」です。 「オンラインでオンデマンドで行う」とは、簡単に言えばeラーニングによる独学習であり、「オンラインでリアルタイムに行う」は、オンラインで行う集合研修を指します。 eラーニングで研修代替 釈迦に説法だと思いますが、「eラーニング」とは、ネットワークを通じて時間や場所を選ばずに、各々が学ぶことのできる学習システムです。 eラーニングについては、2000年初期にブームがありましたが、今回の新型コロナ流行に伴い、eラーニングは集合研修の代替として再び注目を浴びています。さらに、これを機に多様化する時代に適応していくことのできる、自発的に学ぶ社員の育成促進としての役割も期待され、新たな局面に入ったという感触があります。 引き合いのあったeラーニングについて、この場で詳しい説明はしませんが、今回の研修代替ニーズの中心は「新人研修の代替」でした。4月からという時期的なものもありますし、他の研修と違い、「入社時のこのタイミングでやらないわけにはいかない内容」であるからに他ならないと思います。 一般な「新人事研修」の内容としては、トップからのメッセージなど「企業の事業説明や歴史」や社会人の心得や言葉使いなどの「ビジネスマナー」「職場のルール」「ビジネススキル」「Officeツールの使い方」などでしょう。 こうした内容は、仕事をする上で即必要とされるので、後伸ばしにはできないという業務上の事情があります。 幸いなことに、こうした新人教育用のスタートアップ教材は豊富で、弊社でもレベルやシチュエーションに応じてたくさん用意されています。 “参考リンク:新人関連のeラーニング教材・カリキュラム例” 新入社員向けコンテンツ こうした汎用教材では代替のきかない、「トップメッセージ」「企業の事業説明や歴史」と言った「その企業特有の研修内容」については、動画を撮影してオンデマンドで流すといった方法がよく取られています。自分達で作った動画などを教材にする場合は、汎用教材を見るだけのサービスではなく、自社でコンテンツのアップロードができるeラーニングシステムを選ぶ必要があります。 eラーニングはASPやSaaSでスタートまで短期間で始められるので、手続き面やコスト面も考えると、今回のような緊急時の研修代替としてはもっとも手軽かと思います。 特殊な研修でなければ、教材ラインナップも豊富ですし、提供サービスによっては、自社独自の研修内容の撮影や配信を代行してくれたり、スマホで撮影したものを動画配信の形式に変換して掲載してくれるサービスもあります。 eラーニングによる研修代替は、初めてのところでも中々好評なようで、特に動画によるeラーニングは、「文字より動画の方がスムーズに学べる」という、「YouTubeネイティブ」の新人世代に好意的に迎えられているようです。 eラーニングは、「研修会場手配が不要」、「資料の印刷配布が不要」「講師の手配が不要」「受講者の研修のための前泊手配が不要」と言った、人事部を悩ます手続き系の業務も解消してくれるというメリットもあります。 また、受講者側も自身で学習スケジュールを管理できるので、じっくりと各自の理解ペースに合わせて学習できるのがメリットです。今回のように自宅待機中でも、ビジネススキルを身に付ける機会として無駄になりません。 新入社員の教育にeラーニングによる研修を活用することによって、一定のレベルの教育を行うことができるはずです。人事教育担当者の負荷を軽減できますし、導入までのリードタイムも短いので、今回の緊急対策としてまずは「eラーニングによる研修の代替」をお勧めいたします。 オンラインミーティングシステムを活用した研修代替 eラーニングに対して、もう一つの「オンラインでリアルタイムに行う」方法は、オンラインミーティングシステムを活用した研修です。 ポイントは「リアルタイムで行う」ことによる効果です。 eラーニングは、あらかじめ決められた内容を個人で学ぶのにたいして、オンラインミーティングシステムは顔を合わせた対話式の研修ができるというメリットがあります。新人研修という性質上、不安なスタートを切った新社会人にとって、対話を持ってモチベーションをアップさせることができます。画面上とは言え、同期の存在が見えるのも大事な要素かもしれません。 また、内容もリアルタイムに作られるので、オリジナリティのある旬の内容で実施できます。業界の専門的なスキルに関する研修は、ASPサービスなどではカバーしきれません。学習内容の自由度が上がります。 デメリットとしては、サービスによっては「同時参加人数に限界がある」という点でしょう。多くのシステムは20~30人までです。企業や個人のPC・回線状況に左右されます。また、すべての参加者の画面をモニターに表示することは物理的に不可能な場合もあります。 ただそこは発想を変えて、講師の顔が映っていれば研修はできるので、参加者側画面はなくてもOKとするのもアリだと思います。30人以上の新人を抱えるような企業であれば、何らかのミーティングツールはお持ちかと思います。導入は思ったよりハードルは低いと思います。 参考までに、今回の新型コロナ対策に向けて無償提供・割安提供をしているサービスのリンクをご紹介します。 “参考リンク:新型コロナ対策に向けて無償提供・割安提供をしているサービス・企業” bellFace(ベルフェイス株式会社)を開く(外部リンク) もともとはオンライン商談システムですが、新型コロナウイルス 対策として「bellFace」を機能や利用人数の制限なく無償提供しています。 資料を共有し対面で会話できる、録音・録画機能もついているためフィードバックができるなど、商談システムの細やかな機能を使えます。 V-CUBE(株式会社ブイキューブ)を開く(外部リンク) Web会議システムとしておなじみの「V-CUBE」も5月末まで無償で提供されています。オンラインセミナーやイベントなどの開催も可能なので、研修だけでなく、セミナーなどにもご利用いただけます。 ちょっと変わった研修代替サービス せっかくなので、ちょっと変わった研修代替サービスもご紹介したいと思います。 全ての研修テーマを吸収することはできませんが、営業トークや接客トークの標準化を目的とした対人形式の集合研修の代替として、AIを使ったレポート形式での研修を始めた企業があります。「AI」を使ったトレーニングサービスを行っている「AI」を使ったトレーニングを行っているコグニティ株式会社様です。 プレゼンテーションや営業トークなど、ビジネスコミュニケーションのAI解析技術を持つコグニティ株式会社では、新入社員集合研修の代替策として活用できるサービス「リモトレAI(リモトレ・エーアイ)」を提供しております。 「リモトレAI」は、集合研修ではなく、社員一人ひとりが自宅やオフィスなど、それぞれの場所で商品説明などのトーク練習を実施し、フィードバックが受けられるサービスです。まず対象者は、ロールプレイなどの音声データをアプリまたはサイトからアップロードします。AIはその音声を解析し、トークの傾向を数値やグラフで示したフィードバックレポートを出します。企業側は、AI研修の成果として全員の平均値を示したサマリーレポートを受け取ることも可能です。 先にも述べた通り、すべての研修テーマをAIでというわけにはいきませんが、ロールプレイ研修がリモートで実現という点では、面白いサービスだと思います。 コグニティ株式会社 リモトレAI(リモトレ・エーアイ)を開く(外部リンク) 最後に コストや手間の面からも「研修を集めずにやりたい」というニーズは以前からあったものの、集合研修からeラーニングに切り替えることをためらっていた企業は多いのではないかと思います。 コロナウイルスによる影響がいつまで続くかはわかりませんが、個人的には当座の研修代替案としてまずeラーニングを、そしてコロナが落ち着いてきたら集合研修をといった対策が現実的ではないかと思います。 遅かれ早かれ、研修のオンライン化は今後加速すると思います。 2020-21年は入社式も実施しない会社がけっこうありました。新入社員の配属も、リアルなオフィスには行ってない会社もあります。いろいろなレガシィなものが変化していく流れを見ると、会社として社員を戦力化していく過程もリモートとなっていくことに対して疑問は感じないのです。 今回の新型コロナの流行で、人事部関連の関係者はかなりの決断を迫られたのではないでしょうか?これからの人事関連の業務には、確実に大きな変化が起こると思います。 今現在、採用面でもリモートの影響が出てきています。 今後は中途入社はもちろん、新入社員に対しても募集要項の中で、「リモートの可」をうたわなければ、採用がおぼつかなくなるでしょう。そうでなければ、人材を採用できなくなるからです。「フルリモートOK」までいかずとも、「週3リモート可」など、フレキシブルな採用条件がなければ、良い人材は獲得できなくなる状況になるかもしれません。少なくとも中高年の中途採用では、真剣に考えたほうが良さそうです。 新型コロナの被害は、ジョンズ・ホプキンス大学の調査によると、4月18日の時点で全世界で220万人、米だけで70万人の感染者がいます。米は600兆円にも及ぶ対策を講じるとも言われ、明らかにリーマンショックや国際金融危機よりも被害は大きく、1929年の世界恐慌に迫るか、それ以上のインパクトを与えています。 この大災害の敵は企業にとって競合企業でもなく、政府でもなく、戦争でもありません、見えざるウィルスです。我々は既存の考え方を見直し、この未曽有の事態に柔軟に対処していかなければいけないと思います。 個人的には「オンラインでの良質な教育コンテンツとは何か」を再度考え直す機会にしたいと思っています。 最後まで読んでいただきありがとうございます。皆様もお気をつけてお過ごしください。人類団結して頑張っていきましょう! 関連コンテンツ 新入社員向けコンテンツ
- コーチングとは
「コーチング」は、目標達成やパフォーマンスの更なる向上を目指して、対象者を勇気付け、やる気を引き出し、自発的な行動を促すコミュニケーション技術の一種です。企業の人材育成の現場では、10年前くらいから「コーチング」がブームになっており、必須のスキルとされています。 「コーチング」という用語はスポーツの世界のイメージが強いので、なんとなくポジティブに励まして指導するようなイメージがありますが、実際はもっと論理的でテクニカルな領域です。今では様々な業界でコーチングの専門資格なども作られるほど、奥の深い世界になりました。 今回は「コーチング」と企業におけるコーチング「ビジネスコーチング」について、非常に簡単ではありますが、ご説明していきたいと思います。 目次 「コーチング」という言葉の意味するところ 「コーチング」のタイプ ビジネスコーチングとは ビジネスコーチングのスキルとは 最後に 関連コンテンツ 「コーチング」という言葉の意味するところ 「コーチ(Coach)」という言葉は「馬車」という意味で、「大切な人をその人が望むところまで送り届ける」ということを意味します。派生としては、英国オックスフォード大学で、学生の受験指導をする個人教師のことを「コーチ」と呼ぶようになったのが起源だそうです。その後ボート競技の指導者が「コーチ」と呼ばれたりして、スポーツの世界で「コーチ」は競技の技術・メンタルの専門指導者を指すようになりました。やがて、ビジネスの現場や個人のカウンセリングなどでも使われるようになり、現在意味するところの「コーチング」が生まれました。 参考にWikipediaで「コーチング」を調べると下記のように解説されています。 「コーチング(coaching)とは、人材開発の技法の1つ。対話によって相手の自己実現や目標達成を図る技術であるとされる。 相手の話をよく聴き(傾聴)、感じたことを伝えて承認し、質問することで、自発的な行動を促すとするコミュニケーション技法である。」 人間は自己実現に向かって、主体的に、能動的に行動するものであるという人間観がコーチングの理論の根底にはあります。その面でコーチングは、「相手の自己実現や目標達成を図る技術」なのです。 つまりコーチングとは、相手の特性と強みを活かし、その人が本来もっている能力と可能性を最大限に発揮させるために、自ら考えさせ、行動を促すために、相手の取るべき手段を引き出すコミュニケーションサポート技術なのです。 あくまでも答えを出すのは相談者自身なので、コーチングする側(コーチ)は質問を投げかけ、考えてもらうことによって答え(取るべき行動)を明らかにしていきます。コーチは必ずしも事前に答えを持っているわけではなく、コーチングの中でたどり着いたものが答えです。そのため、質問の技術だけでなく、相手の考えを理解して共感したり、積極的に相手の話を聴く力などたくさんのスキルが必要です。 「コーチング」のタイプ 企業の人材育成の現場では、上司から部下への一方向的な指示命令型コミュニケーションではなく、双方向的な質問型のコミュニケーションが重要視されます。その過程で発揮されるコミュニケーションスキルが、コーチングなのです。 欧米では、個人が専門家と契約してコーチしてもらう「パーソナルコーチング」というものがあります。海外ドラマなどで、エグゼクティブなビジネスマンや医者なんかが、カウンセリング的に受けているイメージです。内容も仕事だけでなく、家庭内のことや恋愛に関することなどさまざまなジャンルがあります。コーチングとはちょっと違いますが、最近では「メンタリング」なんかもブームです。 それに対して、企業の管理監督的立場にある人がコーチとなり、部下をコーチングするものを「ビジネスコーチング」と言って分けています。今回はこの「ビジネスコーチング」に絞ってご説明しております。 ビジネスコーチングとは ビジネスコーチングは、コーチング技術によって、企業や組織において、個人が本来持っている能力や可能性を最大限に発揮できるように、上司がコーチとなりサポートするシステムです。 実際はコーチは上司だけでなく、プロのコーチングの専門家だったり、嘱託のOBだったりします。コーチが上司の場合は、対象者は主に部下になりますが、リーダーや管理職のコーチングのためにプロのコーチを雇ったりもします。 ビジネス・コーチングのひとつの大きな目的は「相手の能力を引き出し、高めること」です。OJTやエルダー制度のように、具体的な仕事を直接教えるわけではありません。なので、コーチは必ずしも、その業種のプロでなくてもいいのです。むしろ、最近では様々な業界からプロ・コーチを招くのがブームとなっており、目的もその企業だけで活きていく人を育てるのではなく、仕事を通して「自己実現できる人材」にするのがコーチに求められてきています。「ビジネス・アスリートを育てるコーチング」を売り文句にしている会社もあります。 ビジネスコーチングのスキルとは 上司が部下からやる気を引き出すにはどういう話し方をしたらいいか?手っ取り早く言えば、「納得させる」ことができなければいけません。部下は「納得」すれば自発的に動くようになります。 では「納得させる」ためにはどうすればいいか?やはり、話し合って、「説得」しなくてはいけません。説得は説教とは違い、対等の意識で行います。「説教」は「批判」なので、上司の権限を行使して命令したり、上から目線で感情的に行われるので、少なからず自然と部下の「反発」を生みます。逆に言えば、「説得」には上司の権限や立場を一切使ってはいけません。なので、コーチングとして「説得」を始めるには、対等の立場で話し合うことがスタート地点です。 少々話が回りくどくなりましたが、要は上司と部下の意識の格差を辛抱強く質問などで対話を重ねていきながら埋めていき、気づかせていくスキルがビジネスコーチングのスキルの概要になります。 ビジネスコーチングの具体的なコミュニケーションスキルには「共感の技術」「聴く技術」「ほめる技術」「質問の技術」「アドバイスの技術」「しかる技術」「フィードバックの技術」「やる気を高める技術」などいろいろな会話や思考のテクニックがあります。 例えば「共感の技術」では、相手の関心に関心を向け、相手の状況を想像しながら聴いいていくというスキルを求められます。質問しながら具体的に相手の状況を知り、相手の感情をくみ取ります。何よりも、対等の立場になり、相手と同じ位置、上でも下でもない、ヨコの関係が共感には必要とされます。 「共感の技術」を具体的に実行する段階では、「ミラーリング(鏡のように相手の表情や動作に合わせることにより、心理学でいう同調効果が働き、相手から信頼を得ることが可能)」や「ペーシング(相手のペースや声のトーン、息遣いや呼吸に合わせて話すことで同町効果を生む)」「バックトラッキング(相手の話をおうむ返しして相手に反していく)」そして「相槌」といった会話のテクニックも必要です。 コーチングにおける「聴く技術」では、相手に寄り添うことを指します。具体的には相手の発言したすべてのことについて肯定していくということです。相手の話を否定しない、Yesでまずは受け止めるのです。相手の話す内容すべてにおいて肯定をすることで、相手との間には自分をわかってくれているという信頼感が醸成されます。 最後に 「共感の技術」と「聴く技術」の話をしましたが、この2つの技術は綿密に連動していることが分かります。このようにコーチングのスキルは、様々なコミュニケーションスキルを駆使して「信頼を築きながら」進めていきます。 宜しければ弊社コーチング教材をご覧になってみてください。ビジネスコーチの第一人者である、ウイルビジョン株式会社代の泉一也先生の教材をお勧めいたします。 最後までお読みいただきありがとうございました。 関連コンテンツ 今日から使える 実践コーチング 関連記事 メンター制度とは ワークプレイスラーニングとは OJTとOff JT コンピテンシーとは(その2) タレント・マネジメントとは
- 内定者フォローとは(その2)
前回のコラムでは、「内定者フォロー」の実施の意味や、今問題となっている「内定辞退者」、「内定者フォロー施策」の種類についてご紹介しました。今回は、いくつかある「内定者施策」の中から、効果が高いと注目されているフォロー施策を取り上げてご説明します。 目次 内定者フォロー施策「内定者懇談会」 内定者フォロー施策「メンターの登用」 内定者フォロー施策「SNSなどを使った内定者フォロー」 内定者フォロー施策「内定者フォローe-ラーニング」 内定者フォローは「さじ加減」が大切 最後に 関連コンテンツ 内定者フォロー施策「内定者懇談会」 「内定者懇談会」で仕事への動機づけを強化する 「内定者懇談会」は以前から内定者フォロー施策として行う企業が多い施策です。しかしながら、その目的を明確にして、効果が上がる形で実施しないといけません。ただ何となく集めるだけではダメなのです。 内定者懇談会の目的としては、主に以下の2点になります。 内定者同士のつながりをつくること 内定者と社員のつながりをつくること ゆとり教育云々とは関係なく、近年の内定者の傾向として、職業観の希薄さ、社会性の欠如などが指摘されることがあります。そのため、入社しても短期間で退職してしまう場合が増えており、内定者フォローの段階でこの問題を解決しておくことが大切です。 そこで、内定者懇談会などで仕事の意義に対する動機づけをしっかりと行うと同時に、早くから同期や社員との接点をつくることにより、同期同士の結束が強まり、不安感による内定者辞退を防ぐ効果があります。 内定者フォロー施策「メンターの登用」 内定者フォローのキーパーソンを、採用担当者からメンターへ 日本の就職活動において、内定者と年齢の近い「メンター」が相談相手として対応するようになった企業が増えています。 売り手市場となったこの2~3年、内定辞退者が急増しました。これは、従来、人事部の数人の採用担当者が内定者全員に対するフォローを行っていたため、きめ細かなフォローができなかったと認識されています。 これを改め、内定者と年齢の近い社員を「メンター」に任命し、入社前に悩みや不安を抱える内定者の相談相手にしてきめ細かなフォローを行うというものです。 メンターの選出に当たっては、「入社3~5年目の社員であること」「内定者と大学が同じ」「内定者の希望職種についている」など、内定者と何かしら共通項のある社員が良いでしょう。 メンターが年齢の近い若手社員であることにより、内定者と世代が近くて話がしやすく、共感をもって実体験に基づいたフォローができます。こうした関係が一定期間続くことで、信頼関係が構築され、内定者にとって、メンターの存在が4月から会社生活を送る際の“心のよりどころ”になっていくのが理想です。 また、人事側にとっても、メンターという相談役からの報告を通して、内定者からの悩みや近況を一元管理できるので、内定者を管理する上でメリットは大きいです。 メンターとなる社員には、事前に説明会などを実施し、今年度の採用状況や、メンターを設けた意味と期待する役割、内定者とコミュニケーションを取る際の留意点などをきめ細かく説明し、自覚を促す必要があります。 内定者フォロー施策「SNSなどを使った内定者フォロー」 SNSなどソーシャルツールでコミュニケーションの充実を図る 内定者との連絡やコミュニケーションをデジタルで行う場合、いままではメールなどが中心でした。 デジタルネイティブ世代である今の内定者には、より簡単にやりとりができるソーシャルメディア上でコミュニティを作成し、採用担当者と内定者がコミュニケーションをとるのがおすすめです。 具体的には、「Facebookグループ」「LINEグループチャット」「Google+」などがよく利用されています。 内定者同士で自主的にコミュニティをつくる場合もありますが、会社からの情報提供をして、会社の情報を定期的に発信することも重要です。ソーシャルメディアであれば、双方が簡単に写真や文章をアップでき、内定者はさまざまなデバイスでそれらを受けることができます。 FacebookやTwitterなど、SNSに慣れ親しんだ最近の学生にとっては、最適のツールと言えます。 さらに、内定者同士のコミュニケーションにより、不安の払拭や連帯感の醸成がされるのもSNSの効果です。 内定者の心理的には、メールや口頭ではなかなか相談しにくいことでも、SNSであれば気軽に投稿できます。 また、このように誰でも気軽にコメントできるSNSでは、感謝の気持ちや助け合いの精神が働きやすく、問題の解決も迅速に行われるようになります。 内定者同士の「絆」が入社辞退を防止する 内定者同士が顔を合わせる内定者懇親会は7~8月あたりになることが多いようです。その前の段階で、既にSNSなどで交流していたことで、内定者懇親会の時には、既にみんなが顔見知りのように感じられ、懇談会が盛り上がります。 SNS上で話すことにより、同期がどんなことを考えているかがわかる安心感は計り知れません。 ある内定者が書き込んだ不安や疑問に対して別の内定者が答える、といった内定者相互のフォローアップも行われるようになれば理想的です。人事担当がフォローするよりも、立場が同じ内定者がフォローしたほうが、心理的に効果的な場合も多々あります。 会社人生で、最も長い付き合いになる他の内定者との人間関係への不安は、内定者ならだれにでもあるでしょう。 他の内定者の人柄を知り、交流を深めるだけでなく、不安を共有したり、事前学習の話や、将来の配属先の希望や情報の交換を通して、不安解消や仕事へのモチベーションアップにつながります。 内定辞退が起こる前に「兆候」を発見し、適切な対応ができるようになる 人事担当者やメンターなどがSNSで内定者フォローを行うことで、内定者とメンターのコミュニケーションの「見える化」が図られ、その結果、内定辞退が起こる前に「兆候」を発見し、適切な対応ができるようになります。 仕事だけでなく、プライベートな話を交えながらいつでもコミュニケーションを取ることができ、採用担当者には直接言いにくい話、聞きにくい話などの相談もしやすいようです。 SNSはコスパのよい内定者フォロー施策 スタッフ数の限られている人事では、face-to-faceの内定者フォローを行うことに限界があるため、SNSを使うことはコストパフォーマンスのメリットも大きいと言えます。 SNSは内定者とメンターはもちろん、人事にも負担が少ないシステムなので、人事は、一定の事務連絡や会社からの情報発信だけを行えばよくなり、内定者フォローでの効率化・一元化が図れる効果は、思いのほか大きいようです。 内定者フォロー施策「内定者フォローe-ラーニング」 ビジネスマナー学習や資格取得支援はeラーニングが中心に eラーニングや通信教育、集合研修、課題を出すことで、社会人の基礎知識や心構え、必要なスキルを身に付けさせます。落ちこぼれを作らないためにも、内定者段階でのスキルの平準化は必要です。また内定者からの「期待する内定者フォロー施策」として、eラーニングを使って、社会人としてのマナーやソフトスキルが勉強できることは大きく期待され手もいます。 学習科目としては、「ビジネスマナー学習」、「PC(Office系ソフト)の基礎」、「TOEIC TEST対策など英語」が御三家です。 それに加えて、ビジネスマインドなど、「働くとは何か」といった根源的なテーマを通じて学生から社会人への意識の切り替えをはかり、同時に内定者の不安を取り除くといった効果を狙った科目も増えています。弊社サービスでは、クリティカルシンキングなど、中堅向けの内容についても、早くから意識組成させる意味で人気があります。また、資格取得や専門性の高い講座もニーズが上がってきており、幅広いラインナップを用意しております。 基礎スキル習得のためのeラーニングで、入社に向けた安心感を与える 内定者フォロー教育にeラーニングを導入している企業では、10月の内定式から翌年3月にかけて、eラーニングを通じて企業の仕組みやビジネス知識・マナー、パソコンスキルなどを学ばせます。会社として入社前に身に着けて欲しいものを必須科目とし、そのほかにも外国語など選択科目も用意して、内定者の興味や関心に合わせて科目を用意するところもあります。 内定者の学習の進捗状況は、担当やメンターが定期的に確認し、遅い学生に対しては個別にフォローをするとよいです。 また、実施率を上げるためには、各科目が入社後にどのように役立つのかを示すため、先輩社員の体験や感想を内定者用Webサイトに掲載し、動機づけを図るのも良いかと思います。 最近では、ゲーミフィケーションのメカニズムを取り入れた、内定者向けeラーニングも登場し、同期内定者間で、課題を競いながら楽しめる仕組みもあります。 ゲーミフィケーションとは 学生に一番身近な情報インフラといえばスマホ eラーニングはパソコンがあれば場所や時間を問わず学習できるので、内定者からの評価も高く、昔から人気の内定者フォロー施策です。 近年では、内定者サイトなどへのアクセスは、半分以上がスマホやタブレットなどのモバイル端末からのアクセスになっており、学生が最も利用しやすいツールとして、教材のスマホ対応が必須となっております。また、スマホになったことにより、ネットを通して動画閲覧が以前より楽になり、マナーや語学など、「見ることが理解を助ける」効果が高いものほど、動画を使った教材が主流になっています。会社の歴史ビデオや製品ライブラリ映像などを閲覧できる企業もあります。 スマホやタブレットであれば、少しの待ち時間や移動中でも学習やコミュニケーションが可能なので、eラーニングだけでなく、掲示板や受講管理、内定者との連絡機能など必要な要素をすべてスマホに対応させたものが人気です。 内定者フォローは「さじ加減」が大切 人事部のマンパワーを考慮して行う どんな内定者フォローの施策を導入するかを検討する場合は、自社の人的リソースとよく相談する必要があります。 フォロー施策が自社のスタッフですべて管理できるのか、あるいはアウトソーシングできるものは、それを活用した方がよいのかを検討してください。導入したことがないものというのは、予想外に手間がかかったりします。手間の見積もりを間違えて、マンパワーがないのに自社ですべてをまかなおうとすると無理が生じ、始めると言ったのはいいものの、内容が伴わず、内定者にかえって悪い印象を与える場合もあることを十分考えておかなくてはなりません。 弊社顧客でも、内定者フォローサービスをご利用になる前のミーテイングでは「やりたいこと」が山ほど出てきます。しかし、それは学生にとって、本当に「やってほしいフォロー」なのか?また、採用担当者様も「できるのか?」といったことを確認させていただきながら進めています。 学生の負担に気を配る 内定者フォロー施策は、企業側だけでなく、学生側の負担にもなることを忘れてはいけません。学生の負担に気を配ることも大切です。 内定者にしてみれば、内定期間は縛られたくはないが、何も連絡がなく放置されると不安になるというのが本音でしょう。講義が終わっているとはいえ、ゼミや卒論で忙しかったり、卒業旅行などのイベントを計画している場合もあり、貴重な時間であることは変わりありません。 マイナビの調査によると、内定者側が希望する接触頻度は「2か月に1回程度」が44.8%、「1ヵ月に1回程度」が39.4%と、1~2か月に1度の接触が丁度良いようです。 その年に実行したフォロー施策は、入社後に新入社員に必ずアンケートを取るなどして、好評だった点・不評だった点をそれぞれ振り返り、翌年の施策に反映していただければと思います。 昨年は企業側が、学生に就職活動を終わらせるよう強要する「オワハラ」も問題になりました。オワハラの一環として、高頻度で接触し物理的に就活できないようにしたり、懇親会の席で暗に他社への活動の中止を促す圧力をかけたりするのは絶対にやめるべきです。 内定者の書き込みなどで、その事実が発覚すれば、「オワハラしてくる=ブラック企業」のレッテルが貼られ、翌年の採用活動に多大なマイナス影響をもたらします。特に人事部以外の社員も言動には十分気を付けたいものです。 採用活動全般で気を配ることが大切 内定者辞退を防ぐために、内定者フォローが大切なのはもとより、内定を出す前の対応も重要であるというということを忘れてはなりません。採用活動の初期の段階、つまり、会社説明会や採用選考において、学生にしっかりと入社への動機づけを行いましょう。 学生は複数の会社を受験しているので、あらゆる機会を通じて動機づけを行っていかなければ、他社に気持ちが移ってしまうものです。 このように考えると、採用活動のプロセスとは、応募者に対する動機づけを形成していく行為に他ならないのです。 最後に 内定者フォローの第2回目は、内定者施策の中から効果が高いと注目されている「内定者懇談会」「メンターの登用」「SNSなどを使った内定者フォロー」「内定者フォローe-ラーニング」についてご紹介いたしました。 丁寧に内定者に対してフォローを行い、入社前の「不安」を解消することで、学生の気持ちを自社に向けさせ、「この会社で頑張りたい」という断固たる入社への決意を持ってもらいましょう。 今回も最後までお読みいただきありがとうございました。 関連コンテンツ 内定者向けコンテンツ
- 内定者フォローとは(その1)
今回のコラムでは、「内定者フォロー」について、2回に分けて簡単にご説明しようかと思います。 第1回目では、「内定者フォロー」の実施の意味や、今問題となっている「内定辞退者」の件などをからめてご説明いたします。また、「内定者フォロー施策」にはどんなものがあるのかみていきます。 第2回目は、「内定者フォロー施策」を実施する際のポイントや注意事項などをご説明いたします。 目次 内定辞退の現状 内定者フォローがなぜ必要なのか 内定者フォロー施策 最後に 関連コンテンツ 内定辞退の現状 2020年3月卒業の大学生・大学院生対象の大卒求人倍率は1.83倍と、前年の1.88倍より0.05ポイント下落。8年ぶりの低下となりましたが、高水準を維持し、リーマン・ショックで求人倍率が大幅に低下した2010年卒以降で2番目の高さとなりました。 ワークス大卒求人倍率調査を開く(外部リンク) こうした採用枠の拡大により、優秀な学生ほど複数の企業から内定を得やすくなっています。就職氷河期世代から見ればなんとも羨ましい状況です。 多くの求人があり、内定が取りやすくなっている一方、企業理解や自己分析が十分でないまま早期に就職活動を終えてしまったことへの戸惑いや不安が増大している場合があります。 こうした学生は、入社後の企業理解のアンマッチにより、早々に会社を去ってしまうケースにつながってます。 企業側はその事実を認識し、内定辞退を防ぐべく、アンマッチのない採用ができるように、早期から内定フォロー施策を実施する必要があります。 内定者フォローがなぜ必要なのか 内定ブルー」になる内定者の心理 無事内定は取れたものの、内定から入社するまでの期間、学生の気持ちは非常に不安定な状況に置かれています。 複数の企業から内定を得ることができた場合は、その中から1社に絞り込んでいく過程で大いに悩むことになります。 まさに「マリッジブルー」ならぬ、「内定ブルー」になる学生もいるとか。 内定から入社までの間に学生が抱く不安はいくつかあります。 のんびりした学生生活から一転、きっちりとした社会人生活をちゃんと送れるかどうかについての大きな不安や、配属先の上司や先輩社員・同僚とうまく人間関係を構築できるか、また自身の能力や仕事やキャリアについての不安もあるでしょう。 これらに対する不安を払拭するのが、内定者フォローの主な目的です。 内定者フォローの本質は「不安を取り除き、ミスマッチを軽減すること」 近年は、新卒者の3割が入社から3年以内に辞めています。若手社員の早期離職理由を調査すると、会社や仕事、人間関係への不満が一番多いのですが、さらに掘り下げて調査すると、実は入社前から「不安」を持っていた人が少なくないようです。つまり、内定者の時点で感じていた「早期離職の火種」がくすぶっていたことになります。 このような将来的なミスマッチの不幸を起こさないためにも、入社前のしっかりとした内定者フォローを行い、しっかりと納得して上で入社してもらう必要があります。 内定者が持つ「期待」の裏側にある「不安」をいかに解消するか 実際に会社組織で働いた経験がない学生は、自分が希望する会社から得た内定であっても、「本当にこの会社でいいのか、自分はやっていけるのか、他にもいい会社があるのではないか」といった漠然とした不安を、就職活動中から内定、そして入社後まで持ち続けています。 そういった何とも言い難い不安を解消し、入社に対して前向きな気持ちと自信を持ってもらうことが、採用のミスマッチを防ぐためには非常に大切です。そこに内定者フォローを実施する大きな意味があります。 どんなに力を注いでもミスマッチ感をゼロにするのは厳しいかもしれません。しかしながら「この会社で頑張ってみよう」と期待感とモチベーションを持たせてあげることはできます。 「内定者フォロー」は「内定辞退の防止」が目標と思われがちですが、突き詰めれば新人の「早期戦力化」の準備であり、「この会社でがんばってみよう」という前向きな意識にさせることを念頭に行わなくてはいけません。 丁寧に内定者に対してフォローを行い、入社前の「不安」を解消することで、学生の気持ちを自社に向けさせ、入社への意思を固めさせた上で、スタートラインに立ってもらいましょう。 内定者フォロー施策 「内定者フォロー」には様々なアプローチがありますが、実施する際は、学生が感じるギャップなどを参考にしながら、どのタイミング、プロセスで実行するのがより効果的かを考えなければいけません。 大切なのはミスマッチを減らし、この会社で頑張りたいという断固たる入社への決意を持ってもらうことです。 また、人事担当としては予算や手間など、バランス(費用対効果)も考えて対応する必要があるでしょう。 近年の採用スケジュールの短縮で採用担当者の負荷は大きくなり、内定者フォローの重要性は分かっていても、十分に手が回らないのが実情のようです。 そのためにも、何とかして内定者フォローを効率化し、業務の負荷を下げることも、大きな課題として上がっています。 実際の「内定者フォロー施策」として一般的に行われている施策には、下記のようなものがあります。 それぞれ目的があり、「会社の人間関係に対する支援」、「社会人としての新生活を支援」や「入社後の仕事やキャリアの支援」といった感じです。業種によっても期待する効果の重みづけが違いますし、コスト面でも様々なので、自社のフォロー目的に合ったものを実施しましょう。 内定者と定期的に連絡をとる メールや郵便、内定者専用サイトのメッセージ機能などを通じて、内定者と定期連絡をとり、近況報告などをもらうやり取りを指します。最も基本的なフォローで、事務上の必要性もありますので、やっていない企業はないかと思います。 会社からの音沙汰がないと、内定者は非常に不安を抱くので、適度な頻度で連絡を取り合うことが大切です。 社内報・社史などの送付 社内報、会社案内、社史、PR誌などを内定者に送付し、会社に対する理解と愛着を深めてもらうのが目的です。読むのにも時間はかかるものですから、何でもかんでも送り付けるのではなく、内定者が自社の理念や事業を理解する上で役立つものを送りましょう。 個別面談 面談を通じて、内定者の心理状況や、抱えている不安や疑問をケアしていきます。本音を引き出すためにも、学生との距離感を縮める必要があり、継続的に何度も会うことが大切です。 これにより、言いづらかった悩みや、本人も気付いていなかった 潜在的な問題を発見、解決します。 メンター、チューターによるフォロー 今内定者フォローで重視されているのがメンター制度です。詳しくは後述の『内定者フォロー施策「メンターの登用」』でご説明します。 社内等でのアルバイト 実際の現場で働くことを通じて帰属意識を高めるだけでなく、入社前研修としての効果も期待できます。また、採用側も働きぶりを見て、選考時には知りえなかった内定者の個性や適性を知ることもできますので、意図をもって実施したいところです。 その際、「学生でもできるもの」として単純作業のようなものを用意するのではなく、携わることで、会社の業務の流れが分かる部署で実施すると、高い効果が期待できます。 ただし、内定者にとってアルバイトの誘いは断りづらいので、強制力は排除し、スケジュールなどが参加しやすく、負担感の少ないものを考えるなど、実施にあたって十分な注意が必要になります。 社内・職場、工場・店舗などの現場見学 オフィスや工場などの見学会を実施します。見学には、先輩社員も同席し、説明や質疑応答を行うことで、仕事への理解を深める効果と、先輩との交流を通して、人間関係への不安を軽減する効果が見込まれます。 見学後にグループディスカッションやレポートなどを同時に実施しても良いかと思います。 合宿研修(集合研修) 入社前に必要な知識を、内定者を集めた研修で実施します。内容はビジネスマナーや仕事の基本を習得することを目的としたものが中心です。 宿泊を伴う合宿形式の研修は、内定者同士の相互理解を深め、自社への帰属意識を高めます。また、日常とは異なる場所や時間を共有することで、内定者の意識が大きく変革する機会につながります。 ただし、コスト、マンパワーともに負担は大きい施策です。 内定者同士の懇親会・交流会 内定者を集めて、事業内容や職場の状況を説明する催しです。昼食会、夕食会を兼ねるケースもあり、学生にも人気がある施策です。 内定者同士が交流することで「絆」が生まれ、モチベーションが上がり、内定辞退が減るという効果があります。こちらも後述の内定者フォロー施策「内定者懇談会」で詳しくご説明します。 役員との懇親会・交流会 人事担当や内定者同士の懇親会だけでなく、企業の役員との懇親かも実施されていますが、これは少し意図や内容が異なります。 内定者は、経営者の話を聞いてその企業を選んだ理由を再確認したり、その企業にしかないメリットを探し出そうとするため、経営者が実際に出席することが大切です。経営者は挨拶だけでなく、経営目標や人事管理の方針を明確かつ具体的に内定者に伝える必要があります。 社内行事・イベントへの参加 社内運動会、クリスマスパーティー、忘年会、新年会など、社内行事に内定者を招きます。自社の雰囲気に接する中で内定者は不安を解消し、会社の一員という自覚も芽生えます。内定者側の抵抗も少なく、簡単にできて、しかも効果の高い方法です。 内定者にイベントの告知をする際、「招待」という形にすると、「会社が内定者を大事にしている」「参加を待っている」というイメージでメッセージを伝えることができ、気分的に楽に参加できるようになります。あくまで強制参加ではなく、内定者が「自主参加」できるようにします。 入社前のビジネスマナー・ビジネススキルの習得支援 郵送やWeb上での通信教育を、会社負担で受講させるものです。カリキュラムとしては、ビジネスマナーを中心としたスタンダードな内容から、企業理解を促進させるものまで様々です。 企業側にとっても入社後の導入研修の軽減が期待でき、利便性やコスト的にもeラーニングを使ったものが主流になっています。詳しくは後述の内定者フォロー施策「内定者フォローe-ラーニング」で詳しくご説明します。 資格取得、語学学習支援 金融関連などでは「外務員試験」、不動産では「宅建」など、専門的な資格を入社前に取得させたほうが、入社後のスケジュールに余裕が出るというメリットから、業務上必要な資格の事前取得を勧める企業が増えています。また、TOEICや中国語など語学学習支援に力を入れる企業も増えています。 最後に このように一言に「内定者フォロー施策」といっても、そのやり方はたくさんあり、やり方により、フォローの重点ポイントも変わっています。第二回では、いくつかある「内定者施策」の中から、効果が高いと注目されているフォロー施策を取り上げてご説明します。 関連コンテンツ 内定者向けコンテンツ
- 階層別教育とは(その2)
前回に引き続き、階層別教育の続きの説明になります。 今回は「若手・中堅教育」「リーダー教育」「管理者・マネジメント教育」について、簡単にお話してみたいと思います。 目次 若手・中堅教育とは リーダーとは 管理者・マネジメント教育 最後に 関連コンテンツ 若手・中堅教育とは 会社によって定義は若干異なりますが、ここで「若手」とは入社1~3年目、「中堅社員」は入社3年目以降で、主任や課長などの役職についていない社員を指してお話いたします。 若手と異なり中堅になると、自分1人である程度の業務を遂行できる能力を持っていると認識されます。それゆえ、入社して間もなくても、前職の経験がある場合は中堅社員と呼ばれることもあります。 組織の10~20年後を見据えて、中核となる人材を育てるために、若手や中堅社員に行うのが「若手・中堅社員研修」です。 日本企業では、新入社員教育と管理職を対象にした教育はそれなりにカバーしているのですが、若手・中堅層への教育はやってなかったり、とても手薄だったりします。 また、そのような日本独特の背景もあり、若手・中堅層への教育はOJTなどが中心で、管理職が部下に直接関与する機会が少なく、さらに管理職の指導スキルがバラバラだったりすることから、若手・中堅の成長度に波がありがちです。若手・中堅層教育はこうした「ばらつき」を修正し、若手・中堅層のボトムアップを図る大切な機会になります。 また社員の気持ちの面でも、業務内容や役割に大きな変化のない2年目~8年目は、将来への先行きが見えず、モチベーションが下がりやすくなると言われています。若手・中堅層が仕事へのやる気や積極性が見られない場合、この若手・中堅教育を通して、主体性や当事者意識を強く持たせ、モチベーションを上げさせる必要があります。 会社組織を成長させるのに必要と言われる「自律型人材」を育成するためにも、この早期のタイミングで「当事者意識」と「業務推進力」を強化する教育を実施すると効果が高いと言われています。 そのほかに、早期から取り組むと効果が高いポータブルスキル(コミュニケーション、思考力)の向上も、中堅研修によく行われます。 コミュニケーションのスキルは、以前はリーダー研修などで行われるのが多かったのですが、「リーダーになってからでは遅く、意味がない」ということで、早くからコミュニケーションスキル向上のプログラムを中堅教育に組み込む企業が増えています。 メンバーとのコミュニケーションだけでなく、商談などで意思伝達を円滑化する技術を使って、顧客や上司との関係づくりが上手い社員を育てることは、戦略上高い効果が期待できます。 参考までに、弊社で取り扱っている若手・中堅教育教材のメニューをご紹介します。 若手・中堅教育教材の教育プログラム例 コミュニケーション ミーティングや議論の場での、相手に合わせた会話のコツ、アイディアを広げ、適切な主張をするための技術、交渉や様々な話法など、周囲とより良い関係を築き、信頼を勝ち取るための、コミュニケーションのスキル。傾聴の技術、質問の技術、人を動かす技術、アサーティブ・コミュニケーション、ネゴシエーションなどを学びます。 ビジネスマインド 「会社とは何か」「仕事とは何か」「組織との関わり方」といった、組織のメンバーとして成果を上げていくうえで理解しておきたい、会社組織の基礎知識や、仕事に対する考え方、姿勢の原則などを学習します。モチベーション、仕事と責任について、会社の仕組み、会社の数字などを学びます。 ビジネススキル教育 仕事で成果を上げ、チームの一員として期待される基本的な役割を果たせるようになるための様々なビジネススキルを学び直します。具体的には、仕事の進め方、ビジネスコミュニケーション、問題解決、タイムマネジメント、ビジネス文書やメール、FAXなどのマナーやスキル、アイデア発想法、QC基礎、与信管理と契約などです。 キャリアデザイン 自分らしい良いキャリアを築くために必要なポイント、様々なキャリアの考え方を解説します。また、仕事や社会、組織との関わり方、働く意味を整理するためのワークを行います。 ロジカルシンキング 論理的、ロジカルであることは、人に何かを説明したり、文章を書いたり、仕事をするうえで重要な要素です。また、論理的な意見や主張をするためにも、問題点を明確にしたり、解決策を整理するうえでも欠かせません。ここでは、その定義から必要な基礎スキル、ビジネスでの応用の仕方まで、ロジカルシンキングの基本を学びます。 参考コンテンツ:コンテンツライブラリ マイクロe-ラーニング リーダーとは 中堅社員には漏れなくリーダーとしてのスキルが求められます。そして、そのリーダー候補の中堅社員に効果的な教育を行うために必要なのが「リーダー教育」です。 「リーダー教育」を考える上で「リーダーとは?必要なスキルとは?」を考える必要があると思います。 リーダーの大切な役目は、自分たちの進むべき方向性示す、つまり組織目的やビジョンを掲げるのがリーダーの最初の役割です。そのためには組織目標を理解し、正しい方向性を考える力が必要です。 また、リーダーはメンバーがその組織の目標に向かって進めるように、組織の環境を考える必要があります。そのためには、現状の仕事におけるチームの課題を見つけられる力がなくてはいけません。課題を見つけ、問題点をクリアにするためのスキルも必要です。 目標を示し、環境を整えプロジェクトを進めていく中で、リーダーは仕事のアサインや進捗のマネジメントなど、人を動かして円滑に仕事を進めなくてはいけません。そのためには、手本となりメンバーと関係を築くコミュケーションスキルや、メンバーの業務意欲をわかせるモチベーションスキルが必要となるはずです。 こうしてリーダーに必要な能力を考えると、自社にいる中堅社員が物足りなく見えてくるかもしれません。 事実、多くの企業では中堅社員のリーダー育成に関する大きな問題を抱えているようです。 近年の組織形態の流行りである「組織のフラット化」でも、リーダーポジションが形骸化しているケースが見られます。 また、中堅社員の中には、1プレーヤーとして役に立つスキル形成だけに興味を示し、組織リーダーとして機能するための能力形成には興味を持っていない人も結構いるようです。 リーダーとしてのスキルを身につける意欲が低いことに加え、組織のフラット化により中堅リーダーの役割が変わり、中堅リーダーが育ちにくい環境に陥っている今こそ、企業は「リーダー教育」を早急に考える必要があると思います。 参考までに、弊社で取り扱っているリーダー教育教材のメニューをご紹介します。 リーダー教育教材の教育プログラム例 職場のチームリーダーとして、また次期管理者として身に着けておきたい、人と組織を動かしチームで成果を上げていくために必要なスキルを学ぶ講座です。 チームマネジメント チームの生産性を高めるために、職場のチームリーダーに求められる役割や身に着けておきたい人と組織を動かすための知識とスキルを学びます。内容は、仕事の管理、チ-ムビルディング、改善と問題解決、部下の育成、マネジメントの基本、職場のダイバシティなどです。 コミュニケーション ミーティングや議論の場での、相手に合わせた会話のコツ、アイディアを広げ、適切な主張をするための技術、交渉や様々な話法など、周囲とより良い関係を築き、信頼を勝ち取るための、コミュニケーションのスキルを学習します。具体的には、傾聴の技術、人を動かす技術、相手を知る/自分を知る、アサーティブ・コミュニケーション、ネゴシエーション、説得の技術、質問の技術などです。 キャリアデザイン 自分らしい良いキャリアを築くために必要なポイント、様々なキャリアの考え方を解説します。また、仕事や社会、組織との関わり方、働く意味を整理するためのワークを学習します。キャリア自律、キャリアの考え方、ワークなどです。 ロジカルシンキング 論理的、ロジカルであることは、人に何かを説明したり、文章を書いたり、仕事をするうえで重要な要素です。また、論理的な意見や主張をするためにも、問題点を明確にしたり、解決策を整理するうえでも欠かせません。ここでは、その定義から必要な基礎スキル、ビジネスでの応用の仕方まで、ロジカルシンキングの基本を学びます。 内容には、演繹法と帰納法、因果関係、MECE、ロジックツリー(LT)、ピラミッドストラクチャー(PS)などを含みます。 育成と指導 人材育成や能力開発は人事・教育部門の役割ですが、その一方で業績を高め仕事の成果を上げるには、職場のチーム全体の力を高めていくことが欠かせません。つまり、部下や後輩を指導育成することはチームのリーダーや管理者の責任でもあるということが言えます。 ここでは、職場での仕事を通じた人材育成のポイントと研修設計のポイントといった、OJTとOff-JTの両面から組織の人材育成について学習します。OJTの進め方、コーチングの進め方、勉強会のテクニック、インストラクショナルデザイン、研修の設計などを学びます。 戦略/フレームワーク フレームワークとは、全体の要素をダブりやモレのない状態で整理した考え方の枠組みのことです。状況の分析や問題の整理、企画やアイデアをまとめるときなどに活用すれば、仕事を効率的に進めることができるため、仕事の生産性やアウトプットの質を高めるためには、欠かせないものです。 ここでは、汎用性の高いものを中心に代表的なフレームワークを学習します。具体的には、戦略思考、環境分析フレームワーク、規模の経済と経験曲線、戦略構築、計画・企画、実行などを学習します。 参考コンテンツ:コンテンツライブラリ マイクロe-ラーニング 管理者・マネジメント教育 トレンドというほどではありませんが、ここ10年以上前から管理職研修・マネジメント研修についてのニーズは高まっていると感じています。 ビジネス環境の変化のスピードアップ、グローバル化やダイバシティ促進によるメンバーの多様化、働き方改革、プレイングマネジャー化など、管理職・マネジメント職を取り巻く状況は大きく変化しているからでしょう。要求されるスキルの変化が激しいのが管理者・マネジメント教育の特徴です。 弊社の営業活動の中から見て取れる、「日本のマネージャー教育の悩みトップ3」は下記の3つです。 プレイヤーからマネジャーへの転換がうまく行かない新任管理者が多い 部下とのコミュニケーションがうまく行かない 経営視点を持たない管理職が増えている プレイヤーからマネジャーへ変わる「新任管理者」に最初に必要とされるのが「管理職としての必須の知識」です。人事労務管理など、それまでの中堅時代はタッチしなかった新たな業務に直面し、正しく処理できない新任管理者は多いようです。この問題は比較的昔からありました。管理職研修の最初にケアしていた部分です。 次の「部下育成」や「コミュニケーションの問題」も、上司という立場になるとよりシビアに直面します。プレイングマネージャーとして働く管理者の中には、部下育成の時間もスキルもないため、ひたすら自分が数字を出し続け、組織としての動きまで気が回らなくなっている状態の人もいます。 プレーヤーとして優秀でも、コミュニケーションスキルがない管理者は、「名選手は名監督にならず」の状態に陥りやすいものです。部下の悩みを聞いて解決したり、成長につながる目標設定の指導ができないと、そのマネージャーが担当する組織は成長しません。 管理者のコミュニケーションスキルの教育は、昔からの管理者教育のトップテーマです。 コミュニケーションスキルに続き、近年重要視されているのが、管理者の「経営視点を磨く」教育です。 労務管理や部下育成はうまいのに、現場のマネジャーとしての視野しか持たず、経営企画・事業企画について積極的に意見参加してこないという管理職がいます。これは経営者的視点に欠けているからです。将来の経営幹部や、事業リーダーとしての期待や役割を理解し、自社の強み・弱みを経営視点からとらえ、自分なりのイメージを持って語れるように、マネジメント教育の中で意識させる必要があります。 また、近年の新たな傾向として、「ハラスメント」や「セキュリティ」「コンプライアンス」などの教育を、マネジメント教育の課程で行うのも多くなってます。 「ハラスメント」については、上司としてのふるまい、特に「昔の日本式会社流」がハラスメントにつながることを抑止するために、今の時代に合った接し方を学ぶ内容です。管理者自身だけでなく、チーム内でのハラスメントにも目を光らせなくてはいけません。 「セキュリティ」については、年配管理者が不得意とする分野です。「むずかしいコンピューターのことは苦手だ」という年配管理者だけでなく、比較的若い管理者も、情報収集力やセキュリティ意識が低いことが多く、結果自分の部署がセキュリティトラブルの温床となっているケースもあります。 「ハラスメント」同様、「コンプライアンス」もあまりうるさく言われなかった昔の意識と今の時代のギャップを埋めるために必要です。 このように管理者・マネジメント教育は守備範囲も広く、ここに至るまでに身に付けるスキルも下地となっているため、教育研修のコースも多岐に及びます。 参考までに、弊社で取り扱っている管理者・マネジメント教育教材のメニューをご紹介します。 管理者・マネジメント教育教材の教育プログラム例 管理者に求められる人と組織を動かすスキルに加えて、戦略構築や組織とビジネスの現状把握、分析、見直しをしていくためのスキルを学ぶ講座です。 チームマネジメント チームの生産性を高めるために、職場のチームリーダーに求められる役割や身に着けておきたい人と組織を動かすための知識とスキルを紹介します。仕事の管理、チ-ムビルディング、改善と問題解決、部下の育成、マネジメントの基本、職場のダイバシティなどを学びます。 コミュニケーション ミーティングや議論の場での、相手に合わせた会話のコツ、アイディアを広げ、適切な主張をするための技術、交渉や様々な話法など、周囲とより良い関係を築き、信頼を勝ち取るための、コミュニケーションのスキルを幅広く紹介します。傾聴の技術、人を動かす技術、ソーシャルスタイル、相手を知る/自分を知る、アサーティブ・コミュニケーション、ネゴシエーション、説得の技術、質問の技術などを学びます。 ロジカルシンキング 論理的、ロジカルであることは、人に何かを説明したり、文章を書いたり、仕事をするうえで重要な要素です。また、論理的な意見や主張をするためにも、問題点を明確にしたり、解決策を整理するうえでも欠かせません。ここでは、その定義から必要な基礎スキル、ビジネスでの応用の仕方まで、ロジカルシンキングの基本を解説します。内容には、演繹法と帰納法、因果関係、MECE、ロジックツリー(LT)、ピラミッドストラクチャー(PS)などを含みます。 マーケティング 戦略策定や企画立案、企業活動の戦略理解のために有用な、マーケティング戦略に関するコンセプトとフレームワークを解説します。 ビジネスにおける戦略構築に必須の基本的なキーワードを広くカバーしているので、個々人の企画立案やアイデア発想、状況分析の質の向上はもちろん、チームでのディスカッションの共通言語として、コミュニケーションの活性化、業務品質向上にも有効です。学習内容は、ニーズとSTP、4P戦略、規模の経済と経験曲線、ブランド戦略と購買モデルなどを学びます。 経営戦略 企画立案や企業活動の戦略理解のために有用な、経営戦略と戦略発想のためのフレームワークを解説します。 ビジネスにおける戦略構築に必須の基本的なキーワードを広くカバーしているので、個々人の企画立案やアイデア発想、状況分析の質の向上はもちろん、チームでのディスカッションの共通言語として、コミュニケーションの活性化、業務品質向上にも有効です。学習内容は、全社戦略、事業戦略、環境分析フレームワーク、成長戦略とイノベーションなどです。 経営分析 経営分析とは、財務諸表から得られる数値を分析・比較・検討して、企業の財政や経営状態を把握することです。財務諸表にある実数の大きさだけで無く、数値の比率を取ることによって規模や業種の異なる企業を比較でき、企業がどういう状況にあるのかを分析する事ができます。 ここでは、収益性、効率性、安全性、成長性という分析項目について代表的な指標を解説します。学習内容は、収益性分析、効率性分析、安全性分析、成長性分析などを学びます。 戦略/フレームワーク フレームワークとは、全体の要素をダブりやモレのない状態で整理した考え方の枠組みのことです。状況の分析や問題の整理、企画やアイデアをまとめるときなどに活用すれば、仕事を効率的に進めることができるため、仕事の生産性やアウトプットの質を高めるためには、欠かせないものです。ここでは、汎用性の高いものを中心に代表的なフレームワークを学習します。具体的には、戦略思考、環境分析フレームワーク、規模の経済と経験曲線、戦略構築、計画・企画、実行などを学習します。 参考コンテンツ:コンテンツライブラリ マイクロe-ラーニング 最後に 前回と2回に分けて、階層教育について簡単にご話させていただきました。どの階層もまったく教育をしていないという企業は少ないと思います。まんべんなく全ての階層に教育するのが理想ですが、事業形態など集まって研修するために、多大な調整作業やコストがかかるケースも多いと思います。手前みそではありますが、まずはeラーニングから階層別教育を試してみてはいかがでしょうか? 最後まで読んでいただきありがとうございます。 関連コンテンツ レビックグローバルのラーニングマネジメントシステム SmartSkill Campus(スマートスキルキャンパス) SmartSkill Campus(スマートスキルキャンパス)は組織内に散在するナレッジや情報の共有、業務レベルの向上や均質化、教育・研修やタレントマネジメントに最適なeプラットホームです。 コンテンツライブラリ マイクロe-ラーニング 若手・中堅社員向けコンテンツ マネジメント向けコンテンツ
- モバイルラーニングとは
近年、『時代は「eラーニング」から「モバイルラーニング」へ』と打ち出している広告を見るようになりました。 「モバイルラーニング」という言葉が出てからかなり経つなぁと思いましたが、今さらながら取り上げてみようかと思います。 目次 モバイルラーニングとは モバイルラーニングのメリットとデメリット モバイルラーニングに向いている使い方や事例 モバイルラーニングの主流は「マイクロラーニング」 最後に 関連コンテンツ モバイルラーニングとは 「モバイルラーニング(mLearning)」はeラーニングの一種で、スマートフォンやタブレットなどのモバイル機器を活用し、いつでもどこでも学習できるシステムのことを指します。従来の「eラーニング」と区別して、「mラーニング」と表記することもあります。 1990年代の終わり頃から、ITを活用した教育研修全般を意味する「eラーニング」が欧米で取り入れ始めました。その後2000年代に携帯電話ベースのeラーニングが始まりました。これが初期のモバイルラーニングだと思います。日本でもガラパゴス携帯やフォーチャーフォンを使ってeラーニングコンテンツが提供されましたが、端末が貧弱だったせいかあまり普及しなかったように思われます。 その後、iPhoneをはじめとするモバイル端末(iPhone、iPad、Android、その他PSPなども含む携帯端末)の高性能・多機能化と、一般への飛躍的な普及により、モバイルラーニングが急速に普及しました。2016年のGoogleの調査によれば、80%の人がスマートフォンを使用しています。端末の普及率でもPCを抜いてしまいました。一家に一台PCではなく、一人に一台モバイル端末の時代になりました。やはりこの普及率のスピードが追い風になったと思います。 また、モバイル端末の場合、通常のSCORM系コンテンツだけでなく、学習アプリとしての教材化や、内蔵カメラやマイクを使ってスカイプタイプの対面学習手法も普及しました。 モバイルラーニングのメリットとデメリット eラーニングの最大のメリットは、時間と場所にしばられず、自分のペースで学習できる事だと思います。そんなeラーニングも、導入してみると色々と不便な点がありました。 例えば、「どこでも勉強できる」と言っても、PCベースのeラーニング教材は、場所的にブロードバンド回線がある会社か自宅に縛られてしまうケースが多かったでしょう。 モバイルラーニングは、モバイル端末を利用することで、本当の意味で、時間と場所にしばられず、ちょっとしたすきま時間でも知識習得に有効活用できるようになりました。 ただ、ガラパゴス携帯を使ったモバイルラーニング初期は、下記のようなデメリットが解消できてませんでした。 ガラパゴス携帯を使ったモバイルラーニング初期の問題点 画面の表示サイズが小さくて見づらい、液晶が貧弱で色数制限がある 携帯電話のチップの処理速度が遅く、表示に限界がある 携帯回線がブロードバンド化されておらず、映像や音声へのクオリティがどうしても低くなってしまう 携帯に搭載されているメモリが小さく、コンテンツの容量制限がある メーカーによりOSが独自開発されているので、動作保障環境が安定しない 弊社でもいくつかコンテンツは作りましたが、環境的に映像を使えない場合が多く、単純な選択型のテストやアンケートがほとんどでした。 4G環境がスタンダードになった現在は、高度な機能を備えたスマートフォンやタブレットによるオンライン学習がモバイルラーニングの主流となりました。大きく見やすい画面、高い処理速度で、動画や音声をふんだんに使って学習内容を展開することができるようになり、学習環境としてPCを使った場合と、遜色なくなりました。 モバイルラーニングのメリット 個人の生活スタイルに合わせ、最適な時間に学習ができる 導入が楽。メールなどで連絡してすぐ学習開始できる 持ち運べるので、どこでも学習したいタイミングで学習ができるので、学習モチベーションの効率が良い 営業や運送など、外出が多い職種の方への学習機会の提供や、マニュアルの配信に向いていてる PCと異なり、起動が早いのですぐ学習に入れる パソコン支給よりもコストがかからない PCを持っていない若い社員や個人PCが支給されないパート・アルバイトスタッフなどの教育も教育が可能 いいことずくめのようですが、モバイル端末独特の問題もあり、デメリットがなくなったわけではありません。 モバイルラーニングのデメリット スマートフォンだとまだ画面サイズが小さい場合がある 通信料の支払いなどをどうするか どこでもできる反面、仕事と生活の線引きがしにくくなってしまう 業務時間外の学習をどのように評価するか、学習時間を労働時間とみなすかどうかなど制度的問題が解決されていない 落とした場合など、情報セキュリティ、コンプライアンス面の統制が必要 制作側としては、「個人の端末に頼る」ため、学習環境の仕様決定で困ってしまうケースが多々あります。具体的にはAndroid端末などで、OSのアップデートが難しいために、一部の学習者の環境が相当古くなってしまっていると、コンテンツが再生できない人が出てきて、「全社一斉」などのテストができないなどのトラブルがありました。 モバイルラーニングに向いている使い方や事例 モバイルラーニングは、移動の多い営業担当者の支援やトレーニングに適していると言われ、米国では大手飲料メーカーなどがいちはやく導入しました。営業に強いのは、「必要な時にさっと知識が取り出せる」という利便性もあるかと思います。例えば、商談の直前に好事例の情報共有などの商品情報の閲覧がすぐにでき、それを頭に叩き込んで乗り込むといった使い方もできます(良いか悪いかは別として)。 また、eラーニングや既存の企業内研修を補完する形で、モバイルラーニングの教材を提供する例もあります。社内試験、スキル診断、理解度テスト、派遣スタッフ向け講座、企業理念の理解(CSRなど)、ロールプレイ診断など使い方はたくさんあります。 最近ではスマートフォンやタブレットを持っているがパソコンは持っていないという若者も珍しくありません。ゲームコンテンツ事業大手のバンダイナムコゲームスでは、採用内定者に簿記会計の知識を身につけるよう推奨しています。その内定者教育の手段としてモバイルラーニングを活用し、簿記検定の合格率で全国平均を上回る効果を上げたそうです。 “若者こそモバイルラーニング” スマートフォンは若者にとって、なければ友人も作りにくいほどの必須コミュアイテムです。モバイル端末はいま、若者たちにとって最も身近な、なくてはならないツールだといえるでしょう。それを活用したモバイルラーニングは、手軽で親しみやすいため、自然と利用者の学習機会を増やし、学習意欲の向上にも効果があると期待されています。 また、派遣やパート、アルバイトなど、どうしても教育投資がかけにくい従業員にも、スマホを使って低コストで教育できるようになったのは大きいと言えます。あるスーパーでは、新人アルバイトの教育は、共有PCやDVDを使って行っていましたが、現在はメールアドレスに教材のURLとipassを送るだけでよくなり、且つちゃんと試聴しているかをログで取って、催促することもできるようになりました。 モバイルラーニングの主流は「マイクロラーニング」 モバイルラーニングの映像コンテンツには、移動中の短時間で見る事や、バッテリーの再生時間の兼ね合いで、映像の尺が短いものが求められます。 「マイクロラーニング」は小さく区切られたコンテンツを短時間で学習させる教育手法です。学習する内容を絞りこみ、学習時間を5分程度に押さえることで、反復学習をしやすくし、学習内容の定着を図る効果が期待されます。 特に短い映像を使ったマイクロラーニングは、現在のモバイルラーニングの主流となっています。 マイクロラーニングについては、こちらの「マイクロラーニングとは」で説明しています。 スマートフォンを使ったマイクロラーニングは、ネット経由でLMSにつなぐだけではなりません。「アプリ」として提供することも可能です。また、アプリの学習を「ゲーム化」することによって、より気軽に楽しんで学習ができる「ゲーミフィケーション(gamification)」の教育手法も搭載しやすくなりました。学習者はスマホのゲームをやる感覚で、電車の中やリビングで学習をすることができます。ゲーミフィケーションを使って工夫することにより、学習者のモチベーションアップや継続的な学習、すなわち学習の習慣化を実現することができます。 モバイル学習アプリの開発はコストがかかりますが、自社オリジナルを求めなければ、汎用品もだいぶラインナップが揃ってきたので、選びやすくはなったようです。 参考までに、モバイルラーニングの利用分野(学習のカテゴリー)についてご紹介します。 日本eラーニングコンソーシアム(eLC)が調査した「モバイルラーニングで学習する内容」についてのアンケートでは、語学が一番利用者が多く、続いてIT・コンピューター関連、趣味や教養、ビジネススキルという順番になっています。 モバイルラーニングで学習する内容についてのアンケート 最後に また、前出の日本eラーニングコンソーシアムの「モバイルラーニングで学習する内容」についてのアンケートでは、学習者の声として、「学びたい教材がない」「教材がモバイルになっていない」という意見が多いです。教材の制作・供給のスピードがニーズに遅れているのかもしれません。 また、「使ってみたいモバイルラーニングの形態は?」というアンケートでは、「教材を動画で見る」「理解度や記憶をチェックするためにテストを行う」「音楽・音声再生機能を利用して、広義や外国語会話例を聞く」と言った、マルチメディア学習やテストアプリ的な利用法を期待しているのがわかります。安易にPC版のSCORMコンテンツを移植しただけでは、満足してもらえないのかもしれません。 今後高機能化により、スマートフォンはVRやAIなどの新技術の実装デバイスとしてますます利用されると思います。そろそろ「モバイルラーニング」が日常的な学習手法となったことを意識して、教育プログラムを新しいものに変えていくとよろしいかと思います。 最後までお読みいただきありがとうございました。 関連コンテンツ コンテンツライブラリ マイクロe-ラーニング
- 階層別教育とは(その1)
このコラムをお読みいただいている方で、「階層別研修」について全く知らないという方はいらっしゃらないかと思います。また「階層別研修」は、ある程度の規模の会社であれば既に実施しているというところも多いのではないでしょうか。 今回はこの「階層別研修」を含めた、「階層別教育」について、2回に分けて簡単にご説明してみたいと思います。 目次 階層別教育とは 階層別教育の意義 新人教育 最後に 関連コンテンツ 階層別教育とは 言葉の意味としては、「新入社員、中堅社員、管理職、経営幹部など階層別に合わせて、役割遂行に必要な能力を育て上げることを目的として、必要な知識やスキルを修得させるために行う教育」という感じでしょうか。 人材マネジメントを考える上で、「階層別教育」の概念は避けて通れないテーマかと思います。最近話題になる「階層がないフラットな組織」でも、非公式な階層はできています。会社が1つの組織として運営するためには、最低限の役割を決める必要があるからです。役職と階層はどう結び付けるかについては、企業規模により違いがあります。 企業の階層を大きくザックリ分けると、経営階層と実務階層の2つに分かれます。アメリカと日本ではこの階層分けの区切りがちょっと違います。日本は部長がトップである事業部あたりまでを実務階層としているところが多いようです。日本では、実務階層での成功者が経営階層に昇格するのが定番の「出世」のスタイルです。対して、アメリカのある程度の規模の企業では、経営階層に昇格するには、MBAを取得する必要があるケースがほとんどのようです。 ここで注目すべきなのは、アメリカでは「経営層になりたければ、実務階層とは異なる経営層のスキルを身に付けて着任することは必須である」という考えです。それだけ「階層」に「スキルセットの違い」を意識している社会なのです。 階層別教育の意義 階層別教育も時代や企業規模の拡大、グローバル化などにより、徐々に変化しています。 もともと階層別教育のスタート・中心は「新人向け研修」でした。学生から社会人になるにあたり、挨拶も満足にできない多種多様な人材を、早急に会社環境に適応させる教育が必須だったのです。 しかし、今では新人向け同様に、中堅にもポジションに合わせた教育が必要になり、さらにリーダーとなる人材を育成する必要が生じ、さらに実務層をまとめるマネジメントと経営層専門のマネジメント…という具合に、階層教育は細かく分かれてきたのです。 入社時期や立場によって責任や果たすべき役割が違うため、当然ながら教育内容は各階層によってかなり異なります。 新入社員教育であれば、ビジネスマナー、ビジネスマインド(組織人としての心構えなど)、MS OfficeなどのICT教育など、まずは仕事をする上で必要となるベーシックな知識・スキルを修得するのが目的でした。 これがマネージャーなどの管理者教育であれば、マネジメント能力、人事評価や部下育成などの管理者として必要な知識やスキルになります。 いずれの階層でも、「階層ごとに期待される役割を自覚する」ことが大切です。いくら知識やスキルを持っていても、勝手な解釈で仕事をされては困ります。会社の階層ごとに求める役割を理解した上で、成長を育成し組織の成果を上げるのが「階層別教育」の目的なのです。 また「階層別研修」はあくまで「階層別教育」の一部になります。各階層ごとのすべてのスキルを、研修だけで身に付けることはできません。日々OJTなどをベースに、仕事をしながら身に付けていくスキルも重要で、研修はそのまとめや欠けているものを覚える場でもあるのです。 そして、研修ではその階層で必要な基本的なスキルを学ぶだけではなく、同階層の他のメンバーと意見を交換する機会として大切であり、そこで共通価値観をすり合わせる場なのです。 階層別研修を実施する目的 階層別の能力や技術を身に付けるための場の提供 その時々にアップデートされたスキルや情報の獲得の機会として 階層のメンバーの底上げ 研修を通して視野を広げ、仕事に対する「目的意識」を再認識する 組織の理念やミッションについて、共通価値観を確認する 同階層のメンバーとのやり取りを通してモチベーションをアップさせる 階層教育の内容はどの企業も一緒というわけではなく、企業によって特徴があります。新人教育など初期の階層に対するプログラムは、企業による相違が少なく、階層が上になるにつれて、各社の特色や経営の意向が強く反映されるようになります。 以降では、各階層別に学ぶべきことを簡単にまとめてみましたが、上記の通り、階層が上がるにつれて必要な教育も企業ごとの特色が出てきますので、その点は必ずしもこの通りでないことも多々ありますのでご注意ください。 新人教育 目的 新人研修は新卒だけでなく、新規入社した中途採用者も対象になります。その企業の業務に関する基礎的な知識を学ぶだけでなく、自分の役割を認識させる意味もあるからです。 対象が学卒の新卒社員であれば、まず社会人としてマインドの切り替えさせるといった目的があります。そして、基本的な業務を遂行するための、ベースになる知識やスキルを集中的に詰め込んでいきます。 また企業側が新卒者のキャラクターを把握し、今後の人材育成のベースとなる情報を仕入れる機会でもあります。 そういった目的から、新人研修は人材を育てるための最初の一歩といった意味合いがあると言えます。 教育内容 一番大切なのは、その企業のマインドを教えられる最初の機会であるということです。最初の数時間は、歴史や理念を学ぶ講義や、経営層からのメッセージを受け取る機会としてセッティングされることが多々あります。 また日本では、社会人として必要なビジネスマナーやビジネスマインドについても、かなりの時間を割かれてきました。この分野は覚えることも多く、どうしても時間がかかるので、最近はこの部分を、「内定者向けeラーニング」などを使って、内定期間中に内定者教育として行う企業も多くなりました。 会社で使っているICTツールやMSオフィスを使った各種文書作成のハンズオンも新人研修で行われます。この部分も、現在は内定期間中行う企業が多いです。何よりも学生を送り出す学校側で、入社前にかなり鍛えているケースもありますので、最近はこの部分に割く時間が減り、その分をコンプライアンスやセキュリティルールなどに充てる企業も増えています。 対して中途採用者は、社会人を経験しているので、基礎的な能力が身についているのが前提であるため、実践的なスキルを身につけさせるためのカリキュラムを組まれるかと思います。したがって、新卒社員と中途採用者の研修は分けて行われます。 新人研修が新社会人にとって非常に大切なのは、社内でのコミュニケーションのスタート地点であるという点です。新人からすれば、新しい環境に慣れるまでにはかなりストレスを感じてしまうケースもあります。緊張のあまり、本来のパフォーマンスを発揮できないということもあるでしょう。新人の定着や今後の成長のためにも、社内でのコミュニケーションを深めていくことが大切です。同期の横のつながりだけではなく、上司とのコミュニケーションも重要です。新人研修の間に、そうした多方向のコミュニケーションの機会を会社側が用意することは、とても意味のあることなのです。 最後に 中途半端になってしまいましたが、その1はここまでです。次回その2では、「若手・中堅教育」「リーダー教育」「マネジメント」などについてご説明いたします。 最後まで読んでいただきありがとうございます。 関連コンテンツ レビックグローバルのラーニングマネジメントシステム SmartSkill Campus(スマートスキルキャンパス) SmartSkill Campus(スマートスキルキャンパス)は組織内に散在するナレッジや情報の共有、業務レベルの向上や均質化、教育・研修やタレントマネジメントに最適なeプラットホームです。 新入社員向けコンテンツ コンテンツライブラリ マイクロe-ラーニング
- ナレッジマネージメントとは
団塊の世代が大量退職した事により、組織内のノウハウが大幅に減少していしまい、せっかく採用した後任人材を活用し切れていないという企業も多いのではないかと思います。 そんな中、生産管理、販売管理、財務管理、人的資源管理、情報管理に続く第6の管理領域と言われる「ナレッジマネジメント」が再び注目されました。 今まで属人的だった個人の持つ「暗黙知」をシステムなどに取り込んで「形式知」にすることにより、企業活動で得てきた知的資源「集合知」がストックされていき、知識の共有化、再利用の促進につながります。 ナレッジマネジメントは経営手法であり、その守備範囲は営業・マーケティングから人事評価に至るまで多岐に及びます。今回は人材教育、育成などの面にも触れながらご説明したいと思います。 目次 ナレッジマネジメントとは ナレッジマネジメントのメリット ナレッジマネジメントシステムの活用例 社員教育にナレッジマネジメントを活用する ナレッジマネジメントシステム導入時の注意点 ナレッジマネジメントシステム構築に使えるツール ナレッジマネジメントはPDCAで 最後に ナレッジマネジメントとは ナレッジマネジメント(knowledge management)は、日本語で「知識管理」「知識経営」となりますが、訳語はあまり使われず、そのまま「ナレッジマネジメント」で使われています。 実はナレッジマネジメントが世の中で注目されるようになってから、そろそろ20年くらになります。企業の競争優位の源泉としてナレッジマネジメントに注目が集まったのが1995年頃でした。提唱者は、一橋大学大学の野中郁次郎教授と竹内弘高教授です。1990年代に発表された日本初の経営理論とされており、インターネットの普及とともに、どんどん情報のスピードが速くなると、企業活動にもスピードが要求され、このアプローチによる研究や取り組みが急速に広がりました。 ナレッジマネジメントを端的に表現するのであれば、「知識の管理」と「知識に基づく経営(知識創造の経営)」です。 会社組織のように多くの人達によって創造される知識は「集合知」と呼ばれます。残念ながら、個々の社員が持つ知識のすべてが、組織の持つ知識であるとは言い切れません。 個々の社員の、それぞれの経験やそれぞれの技術で培われていく、勘や知恵のようなものを「暗黙知」と言います。その暗黙知を文書などの形にすることで「形式知」となり、それがが集まって初めて「集合知」ができあがります。 ナレッジマネジメントとは、企業が蓄積した集合知である独自の営業ノウハウや技術情報、顧客情報などを全社的に共有し、企業が持つ競争力を活性・向上させる経営手法です。つまり、ナレッジマネジメントは、集合知の活用だけでなく、組織にとって有効な知識や情報を共有することで、新たな知識が生み出され活用されるというシステムを目指しています。 ナレッジマネジメントのメリット インターネットによる情報化がビジネスの中心的役割を担いだして、仕事での時間の使い方に変化が生じました。 ある調査では、労働時間の3割を「検索」や「調査」に費やしているそうです。労働人口の減少、労働時間の長時間化、労働生産性の低下が進む中、 企業競争力を 維持・強化するためには、多くの時間を費やしているこの「情報検索時間」や「資料作成時間」を見直し、 従業員1人1人が組織のナレッジを活用して、自律的に働ける環境を整える必要があります。ナレッジマネジメントシステムが最初に注目されたのは、この「無駄な検索時間」を削減する効果でした。 社内イントラなどにナレッジマネジメントシステムを導入することで、全社員がナレッジ情報にアクセスできるようになります。オンライン化が、従来の会議や口頭での共有よりも正確性、スピードともに優れているのは言うまでもないでしょう。以前は、営業職や職人といわれるような技術職は、見よう見まねで仕事を覚えていくスタイルがありました。しかし、情報だけでなく、営業ノウハウや技術をデータベース化することで、専門的で価値ある情報を即座に共有・伝達するスピードもあがります。結果として、従業員の生産性の向上し、企業間の競争力を強化することができます。 近年は、SNSなどコミュニケーションツールを搭載したグループウェアなどがナレッジマネジメントで積極的に使われてます。会社には経験の浅い若手からベテランまで、経験の絶対量、経験の質が異なる様々な暗黙知が存在します。この人たちをコミュニケーションツールで結びつけることによって、新しい効率が可能となります。 ベテラン技術者であれば、ほんのひと手間の感覚的なプロセスが成果の質を上げていることがあります。事務職でも煩雑なタスクを短時間に確実に進める方法を見出して習慣にしている人がいるかもしれません。一見暗黙知を持っていなそうな新人が、ネットで見つけたツールを使って大幅な効率化を実現していることもあるのです。 コミュニケーションツールは、こうした「ちょっとした暗黙知」を集合知に変えるのに向いています。 また共有の障害がなくなることで、縦割りの組織構成では難しかった他部門との情報交換やノウハウを手に入れやすくなれば、独自のイノベーションや新たなサービスの創造がしやすい環境が生まれます。他部署のナレッジを見て、刺激を受けることも大切な効果です。 リスクを減らす意味でもナレッジマネジメントは大切です。組織の中で、誰にも共有されない業務を進めるための知識(暗黙知)があることは組織にとってはリスクと言えます。その社員が辞めてしまった場合、その知識を持つ人がいなくなることは、組織にとっては「人的損失」と「知的損失」が同時に起こったことになります。属人的な仕事をする社員は、仕事に追われて共有する余裕をなくしがちなので、共有化を促進して負担を分散化することでナレッジの資産化と離職防止の両面で効果があります。 ナレッジマネジメントシステムの活用例 冒頭でも述べましたが、ナレッジマネジメントは経営手法であり、その守備範囲は営業・マーケティングから人事評価に至るまで多岐に及んでいます。そのため、ナレッジマネジメントをシステム化した場合の使い方も多岐に及びます。 例えば、ナレッジマネジメントを「分析・戦略」に活かすのであれば、経営支援的な位置付けで、蓄えた成功例や失敗例、また業務プロセスなどの集合知をもとに、経営者は会社を左右する重要なディシジョンをします。 昔からのナレッジマネジメント的な手法として、「カスタマーサポート向けのナレッジマネジメント」があります。営業担当者やカスタマーサポートに届いた顧客からの意見やクレームを、ナレッジマネジメントシステムに搭載し、その分析と適した対処もセットでデータベース化すること迅速かつ最適な対応が可能となり、顧客満足度の向上が期待できます。これは今や当たり前と言えるくらいポピュラーな使い方でしょう。 他にも、法務部や財務部、情報システムやセキュリティなど、高度な専門知識が必要な部署向けに、ナレッジをDB化するのも良く使われる使い方です。「ヘルプデスク型」または「専門知型」のナレッジマネジメントシステムです。 そして、今回本コラムで注目している「人財教育」のシーンでも、ナレッジマネージメントは活用されています。 優秀な成績や実績を残した社員の知識や経験をナレッジとして、社員の教育に役立てるなどが「教育型ナレッジマネジメント」です。 コンピテンシー的な思考・行動パターンや問題解決方法など分析して、すぐに参照できる形でデータベース化することで、社員のスキル・質の向上効果が期待できます。 また、研修のデータやその後の変化などをまとめ、こういった人材を育てるにはどういったプログラムが良いのかなど、教育担当者が参考にすることも可能です。 また、ナレッジマネジメントシステムの役割として注目されている「ノウフー(know who)」機能も人材育成に一役買ってくれます。 ノウフーとは、「誰が何を知っているのか」「どこにどんな業務の経験者やエキスパートがいるのか」といった組織内の人的資源情報を蓄積し、検索できるしくみです。 詳しくはまた別の機会にご説明しますが、必要なナレッジがテキストや動画などで伝えにくい、もしくは、属人度が高く、人の手で相伝していくようなものの場合、無理にナレッジをコンテンツ化するよりも、「社内でそのナレッジを持っている人を結び付けてくれる」ほうが、効率が良かったりします。 このようにナレッジマネジメントシステムが担うナレッジの取り回し方は、目的や業種により異なってきます。 “知識共有化(knowledge sharing)” 知識共有化とは、今まで社内の一部の人達の知識を、社内掲示板やSNSなどツールを使って、集団全体への共有を図るものです。 具体的には、企業内のグループウェアなどを使ってコミュニケーションを取り、その中で記録されていく知識を共有します。 知識共有化の動きはネット黎明期から盛んで、QAサイト(Yahoo知恵袋、OKWave、はてな)のように広範な分野を扱うサイトや、Apple Support Discussionのような特定者向けサイトによる知識共有化の試みが行われてきた歴史があります。 企業内で行われる検索システムを「エンタープライズサーチ(企業内検索エンジン)」と言います。 また、ヘルプデスク型(FAQ)のシステムでは、システムに業務内の不明な点を入力すると、方法を知っている社員が答えを入力してくれます。これを繰り返してナレッジが蓄積されるわけです。 社員教育にナレッジマネジメントを活用する ナレッジマネジメントシステムは人材育成、社員教育のプログラム上でも利用できます。研修やOJTには、時間もコストもかかります。かといってスキルを身に着けないまま働かせても効率は悪くなります。 そこで、今まで業務をする上で必要だったナレッジをコンテンツ化して登録しておきます。問題に対面し必要になった時に、自分で探せるようにします。 ナレッジコンテンツ(教材)を作るうえで大切なのは、手順やノウハウなどをドキュメントした「形式知」だけを掲載するのではなく、「なぜ、そのようにすることにしたか?」という経緯や背後に隠れている問題点なども一緒に掲載することです。問題に対面した人が、ナレッジマネジメントシステムを使って解決を探る際にも、この経緯やのちに問題となるポイントなどが書かれていることにより、様々なケースに合わせてスムーズに対応・解決することができます。ナレッジマネジメントシステムは単なる業務データベースではなく、社員全員で作るクリエイティブな集合知であることが大切です。 それらのナレッジは常に評価され、時代に合わせてバージョンアップしていかなければなりません。作りっぱなしで更新されないナレッジは意味がないからです。 したがって、ナレッジマネジメントシステムにナレッジを蓄積する手順を効率化し、社員に積極的に関わってもらう仕組みづくりしましょう。 “可視化(visualization)” 可視化とは、多次元・多要素で理解しにくい情報を、人間が得意な視覚認識、つまり見える形で表現し、理解しやすくさせることです。安価に動画が配信できるようになり、かつて作ったテキストベースだった自社のライブラリのコンテンツを映像などに作り直して、ナレッジマネジメントシステムに再登録するといったナレッジのリニューアルも盛んにおこなわれてきました。 可視化の新たな試みとして、「ノウフー(know who)」と呼ばれる組織内の人的資源情報を蓄積し、検索できるしくみがあります。 もともとマニュアルのように誰が見ても理解できるようにできる「形式知」とことなり、「暗黙知」は、文章や図式ではっきりと明示化しにくい、属人的な技能や暗黙のうちにつくられた手法や事例です。したがって、「探しているナレッジを知っている人を探して聞く」という方法を取ることで、コンテンツによる可視化をしないというやり方です。 ナレッジマネジメントシステム導入時の注意点 ナレッジマネジメントを導入する際は、現場の利用者が使用しやすいインターフェースや欲しい情報、抱えている課題を中心に考える必要があります。具体的にはどういうことを注意すればよいでしょうか? まずは、システムから参照できるようにしたいナレッジコンテンツがちゃんと情報として掲載できるものかを考える必要があります。また、掲載するにあたり、「コンテンツの形式」はどの形が適切かということも大切です。テキストやイラストだけではわかりにくいものは動画や3Dなどのコンテンツにしなくてはいけません。 利用シチュエーションに対応したシステムであることも大切です。 カスタマーサービスセンターや開発などの現場ではPCを使っての利用がメインかもしれません。しかし、営業マンや顧客に出向いて行うサポート部隊にとって、PCのみの環境は最適ではありません。 また、工場など作業の現場での指導に使う場合も同様です。iOSなどのスマホ・タブレット端末などで、「欲しい時にその場ですぐ確認できる」というのは、ナレッジマネジメントシステム活用のカギとなる点です。当然閲覧は社内イントラのみというのもかなりの足かせです。社外でもセキュアな形で参照できるのが望ましいでしょう。 社員のITリテラシーに沿わないシステムを導入したため、利用率が極めて低かったり、初期の実装だけで、その後の運用が疎かになるといった失敗例もあります。 ITリテラシー以外の要因もあります。ナレッジを持っている人が多忙により時間が割けない、自分のノウハウの共有したくないなどの理由で、協力者である優秀な人材のノウハウを可視化できないという問題もあります。 また逆に、はりっきって隅から隅まで用意できても、ナレッジマネジメントシステムが過度なマニュアルとなってしまい、かえって現場社員の思考する機会を奪ってしまうこともあります。 こういったケースを踏まえ、最近のナレッジマネジメントシステムでは、SNSなどを使ってコミュニケーションを強化することによって、ナレッジを共有する形のシステムが増えています。 ナレッジマネジメントシステム構築に使えるツール ナレッジマネジメントに使えるツールとしては、社内情報の共有を目的としたイントラネット、社外の企業と情報を共有するエクストラネット、膨大な蓄積データを検索できるエンタープライズサーチなどに分類されます。 社内情報の共有を目的としたツールとしては、エンタープライズサーチツールがあります。 有名なところではマイクロソフトの「Yammer」です。 コンセプトは組織内の情報活性です。オープンなコミュニケーションによる透明性の確保、成功事例の共有によるさらに強力なコミュニティの作成、アイデアのクラウドソーシングによるイニシアティブの推進などを推進するツールとして人気があります。 Yammerを開く(外部リンク) エンタープライズサーチの核である、「検索力」で勝負する「Neuron」も昨年話題になりました。Neuronは「検索力」と、その検索を効率化するのに欠かせない「情報の整理」に優れた機能を持っているツールです。 Neuroを開く(外部リンク) このほかにも、グループチャットやビデオ会議と言ったものもナレッジ共有に使えますし、ヘルプデスク型(FAQ)サービスもナレッジ共有に効果があります。 “ナレッジマネジメントとデータマイニング(data mining)” データマイニングとは、人工知能や統計学を利用して、これまで蓄積してきたデータから知識を自動的に取り出そうとする仕組みです。文章(テキストデータ)を単語やフレーズに分解して、社内に蓄積されているデータから瞬時に検索したりします。 データマイニングはマーケティングの分野で行われている購買傾向やレコメンドなどで使われている技術です。 例えば、Amazonなどである本Aを買う人は、後に別の本Bを買うことが多いという傾向データから、本Aの 購入者に本Bを薦めるダイレクトメールを送るなど使われています。 こうした傾向を自社で使っているPOSやオンラインショッピングのDBから法則性を見つけ出して、分析結果をシステムで共有できるようにします。 データマイニングの良いところは、自動で行われるので、情報の有益性の判断をしたり、まとめたり登録する人の手間が軽くて済むことです。また、今まで社員は誰も気づかなかった思わぬ結果を見つけることもあります。そのためには、仕事の内容をしっかり蓄積するためのシステムが整っていなくてはいけません。 ナレッジマネジメントはPDCAで 集めた集合知は変わらないものありますが、いずれ古くなってしまうものがほとんどです。また、社会状況やイノベーションによってナレッジが刷新されることもあります。 間違ったナレッジがあった場合、それは報告され、訂正されなくてはいけません。そうしないと、ずっと失敗を繰り返すことになります。 たくさんの中からしっかりと「使える知識」を蓄えていくためには、ここでもPDCAサイクルの考え方が役に立ちます。 知識の収集 構成員が個々に持っている知識情報を効率的に収集し、共有スペースに蓄積していく。 知識の整理 収集・蓄積された膨大な情報の中から、「使える知識」を抽出する。 知識の利用 ビジネスの現場で、知識を活用していく。 事例の評価 ビジネス現場におけるナレッジマネジメントの効果を測定する。 この「1→2→3→4」のサイクルを繰り替えし業績を上げていきます。 最後に 企業内で知識の集積を図り、データとして集積した知的情報を活用して組織力を向上させることは、会社の成長上大切なステップだと思います。 今まで口伝中心にしてきたため、いきわたらなかったり、いつの間にか失ってしまった大切なナレッジはどの会社でもあるでしょう。今後失わないためにもどこかのタイミングでナレッジマネジメントの体制を整えることをお勧めします。 最後までお読みいただきありがとうございました。
- ピープルアナリティクスとは
IT業界は、時代の先端分野で華やかに見られますが、ストレスや自律管理の風潮が強いため、人材マネジメントの課題はたくさんあるようです。その中で、成功している組織では、従来の指示・命令を中心とした「管理型のマネジメント」ではなく、人の意欲と能力を引き出す「ピープルマネジメント」が積極的に取り入れられています。 ピープルマネジメントは、タレントマネジメントの延長線上にある存在で、社員が意欲を高め、主体的に判断し、各自の強みを発揮することを促すために、パフォーマンスだけではなくエンゲージメントの向上を重要視したマネジメント手法です。そこでそのマネジメント支えるのが「データ」です。ビックデータやAIを活用した事例が話題ですが、HR領域でも「ピープルアナリティクス」を利用して、データを活用する手法が注目を集めています。 今回はこの「ピープルアナリティクス」の意味や事例などを、簡単ではありますがご説明させていただきます。 目次 ピープルアナリティクスとは ピープルアナリティクスの仕組み 利用ケースとメリット 事例 ピープルアナリティクスの運用について 最後に ピープルアナリティクスとは 「ピープルアナリティクス(People-Analytics)」とは、「HR Tech(人事領域でのテクノロジー)」技術の1つです。 企業に蓄積された「人(人事・HR)」の領域に関連する情報や数字などのデータを、「収集・分析(アナリティクス)」して、採用、教育、評価といった人事業務の意思決定や効率化に役立てることを意味します。他にも、「タレント(人材)・アナリティクスとか「HRアナリティクス」などと呼んでるものもあります。 今までの人事領域にける意思決定には、人事部門の社員の経験と勘に頼ってきたと言えると思います。 面接にしても、面接官が「ピンときた」という判断のもと、1次、2次と段階的な勘に絞り込まれて、最終的に決まってました。これが悪いというわけではありませんが、客観性が担保できなくても、採用者が決まるということは全く問題がないというわけでもないと思います。 採用だけでなく人材の流出というケースでも、勤怠情報などから「Aさんの様子がおかしいな」と担当者が気にして、面談したら転職を考えていたなんてケースがあります。ここにも担当者がAさんの様子に気が付かなければ、むざむざ人材を流出させていたかもしれません。 面接にしても退職傾向の発見にしても、人事担当者の主観に頼ることは、その判断に結構なリスクがあります。まして、これが昇進・昇格といった働きぶりの評価になると、意思決定に対して従業員の納得が得られません。 ピープルアナリティクスは、参考になる社員の行動データの収集と分析によって、こうした主観的ではないデータに基づいた判断材料を使うことで、意思決定の透明性や公正さを保ち、精度の高い人事戦略を実現し、最終的に企業のパフォーマンスを大きく上げるツールなのです。 ピープルアナリティクスの仕組み ピープルアナリティクスの目的が分かったところで、その仕組みについて、簡単に触れておきたいと思います。 多くのピープルアナリティクス手法は、大体大きく分けての3ステップに沿って実行されます。 Step1: データ収集の仕組みを作り、蓄積する Step2: 収集・蓄積したデータをモニタリングし、分析する Step3: 分析を元に仮説を立て、施策を実行する(分析モデルを構築する) 解析に使われるデータには、性別・年齢といった基本的な情報から、「IQ、EQ」「資格」「技術」などの「能力データ(能力特性)」、「適性試験結果」「面接結果」「評価結果」などの「性格データ(性格特性)」、「勤怠情報」や最近ではスマホやウェアラブルデバイスのセンサーなどから取得した「行動情報」などの「行動データ(行動特性)」があります。 これらのデータを様々な分析手法、例えば機械学習やAI(人工知能)を使って解析することにより、「人の採用・配置・登用」や「従業員業績・満足度の向上」、また「人材育成」や「離職の予防」などに対し、改善施策を生み出していきます。 (参考)分析方法 集計 …有意差や相関などの傾向を見る 分類 …カテゴリ(クラスター)によって傾向をみる 比較 …類似性によって傾向をみる 予測 …モデルを構築し、未来を予測する また「発見し、改善する」という意味だけでなく、AIを活用することで、これまで人間が行っていた業務を自動化することで、「生産性を向上させる」という意味においても、ピープルアナリティクスはメリットがあります。 利用ケースとメリット ピープルアナリティクスを用いることで、様々なメリットがあることは説明しましたが、ここでは具体的に上げてみたいと思います。 採用・退職面でのメリット 採用でのテーマは「自社に合った人材を効率的に獲得する」ことだと思います。 ピープルアナリティクスを使って、採用に関するデータを分析すれば、人による無意識のバイアスを排除して、効率的な採用を行うことができます。 この時に分析対象となるデータとして、「求人公開から採用までにかかっている時間」「採用した人の属性」「リファラル採用の割合」「1名あたりの採用コスト」「ステップごとの選考通過率」「内定承諾率」などがあります。 例えば、採用決定率が下がっていた場合、原因と考えられるものに「自社のブランド力や魅力度の低下」があります。改善には、様々なデータを分析してその原因を突き止めないと、下がり始めた採用決定率を留めることはできないのです。 ピープルアナリティクスは、退職防止にも貢献します。例えば、過去の退職者情報を分析することで、退職リスクを事前に減らすことができます。 具体的には、ある部署に配属されると離職率が相対的に高まることがデータからわかったとします。業務上の理由から、どうしてもその部署に配属しなければならなくなった場合、配属先との相性が高い従業員を選んで配置したり、配属前に十分な説明をして納得してもらい、配属後にも気をつけてフォローすることで、退職を防ぐことができるかもしれません。 また、勤務状態や面談記録データをAIで分析すると、ある特性の従業員が退職を検討している状態であることを予測したりできます。 人材リソースに関わるメリット 組織特性に合った人材を採用することができる(会社と人材の適合度予測) 人材の評価(書類面接の評価・面接時の評価・入社後の評価予測)がスピーディにできる 社内に埋もれた人材を発掘することができる アラートを上げ、素早く対処することにより離職率を下げられる 組織づくりやパフォーマンス面でのメリット 従業員のパフォーマンスアップやエンゲージメントに貢献する概念として、従業員体験を意味する「Employee Experience(EX)のアップ」があります。これにおいてもピープルアナリティクスによるデータ分析は不可欠です。 この場合、最初にデータやアンケートを使って組織の状態を可視化し、そこにある課題を特定します。それを組織編成や施策を講じて解決し、より良いEXを実現することで、ES(従業員満足度)を高め、離職率を下げることができます。 この時に使うデータは、アンケートや面接から取得した「ES(従業員の満足度)」「従業員の幸福度」「eNPS(従業員ロイヤリティ)」、勤怠等から取得した「新入社員の早期退職率」「優秀層の離職率」「マネージャー、メンバーの欠勤率」などがあります。 組織づくりやパフォーマンス面でのメリット 従業員のポテンシャルを発揮させる効率的な配置ができる データに基づいた公正な報酬体系を作ることができる 従主観のみで時間ばかり使うムダな議論を避け、人事業務の生産性を高めることができる 様々な意思決定に対する説明責任を果たすことができる 従業員満足度が上がり、定着率が上がる 担当者が代わっても判断基準がブレにくい人事業務が行える 教育・育成面でのメリット 育成に関するデータは、他の分野より比較的取得しやすいので、ぜひ活用してもらいたいと思います。 例えば、「研修参加率」「資格・試験の受講率」「育成やトレーニングに対する社員満足度」「従業員の昇格・昇給率」などです。 ピープルアナリティクスは、従業員の育成や、キャリア形成のサポートのためにもデータを活用できます。従業員がこの会社で成長していくイメージを持ってもらえるかがパフォーマンスやエンゲージメントに大きく影響してきます。 教育・育成面でのメリット データーからハイパフォーマーを生み出す要素を解明できる(ハイパフォーマーの特徴抽出) ハイパフォーマーの分析を通じて、次世代リーダーを発掘できる 若手のポテンシャルを引き出し、育成する 研修内容・方法の最適化ができる 後継者育成計画(サクセッション・プランニング)の立案ができる 現状はデータの収集面での障害が多く、まとまってデータが取りやすい採用面での活用が目立ちます。 採用面での活用例では、まず既存社員の分析を行い、これからどのような人を採用するべきなのか、具体的な検討がしやすくなります。社内の弱点を補う人材を採るのか、強みをさらに伸ばせるような人材を採るのか、組織を活性化するために若手を採るのかといった判断をします。 そして、採用面接時には、応募者が入社後に活躍するのかどうか、あるいは、短期間に離職するのかどうか、データ活用によって予測が可能になります。 これだけでも、ピープルアナリティクスを採用領域に活用することで、組織全体の生産性を高め、離職率を下げる効果が得られることになります。 特に、「従業員のポテンシャルを発揮させる効率的な配置ができる」という点では、海外赴任における「人」と「場所」のマッチングで、ピープルアナリティクスに注目が集まってます。 科学的・客観的なデータを収集し、社員のパフォーマンス・行動・コンピテンシーの特性を分析します。そして「場所」と「人」をベストマッチングできるスキームを構築するのです。こうして各メンバーが最適な環境で、本来の実力を発揮することにより、「パフォーマンスの向上」と「リテンションの向上」が期待されます。 こうして考えて見ると、ピープルアナリティクスは、「ピープルマネジメント」をする上で欠かせないツールということがわかります。 事例 ピープルアナリティクスは、Googleなど海外のIT関連企業での先進的な取り組みが公開されることによって、まず海外で注目を集め始めました。「ピープルアナリティクス」という言葉自体が、Googleにある「People Analytics」という名称の組織名が基になっているとも言われています。 では、日本はどうかというと、日本の人事部はまだまだ主観的・属人的な判断が多く、導入スピードは海外ほど早くないようです。 それでも、注目を集めるIT企業では、積極的に導入が始まりつつあります。特に、機械学習(AI)を用いて、「予測モデル構築」し「未来を予測できる」というメリットが注目されています。「人材の発掘」という面では、FaceBook社が実施しているインターネット上の広範なデータから探し出すなんてプランもあるようです。 具体的に見て見ましょう。 Google ピープルアナリティクスについては、Googleは先頭を走る企業です。社員の採用から育成、さらに退職の防止まで、ピープルアナリティクスをその基礎として捉えています。 面接官によるブレをなくし、採用面接手法の効率化・高度化を行う 解析により、有名な「マネージャーに求められる8つの要素」の発見ができた チームの生産性を高めるための「心理的安全性」の発見した など、数多くの取り組みと功績があります。 かつてはGoogleも、感情や直感がベースの「終わりのない議論」を行っていたようですが、現在では、事実と科学に基づく分析を行い、より効率的に、公正な意思決定を行えるようになったとコメントしています。 Googleのピープルアナリティクス担当副社長は 「Googleではデータと分析にもとづいて、すべての人事に関する意思決定を行われるべきだ」 と説明しています。 例えば、Googleの「re:Work」サイトでは、データと分析にもとづいてアプローチすることにより、人事面の新しい洞察を得たり、人事問題の解決に役立て、Googleらしい社員(グーグラー)を発掘、育成、定着させる用としています。 こうしたGoogleの取り組みの成果が「re:Work」サイトで公開されています。 re:Workを開く(外部リンク) Microsoft Microsoftも、従業員のキャリア・プログラムの中で幅広くピープルアナリティクスを用いてきた実績があります。新興ITベンチャーが続々と立ち上がり、業界の雄Microsoftも人材の確保が困難になってきました。 そこでMicrosoftは、様々手を出した事業の整理を進めると同時に、人材の配置・教育・採用の効率化について取り組みを強化しました。 Microsoftのピープルアナリティクスへの意気込みが感じられる出来事が、VoloMetrix社の買収です。VoloMetrixは企業内でデータを収集し、従業員がどのように働いており、どうすればよりよく働けるかを明らかにする、「ピープルアナリティクス」のリーディングカンパニーです。VoloMetrixが開発したテクノロジは、エンタープライズ向けのOffice 365に組み込まれる、組織アナリティクスツールに統合されと予想されています。 Microsoftは、自社内での人事戦略だけでなく、ピープルアナリティクスを使ったビジネスにも取り組んでいるのです。 ソフトバンク 国内事例として、ソフトバンクのピープルアナリティクス事例をご紹介します。同社では、新卒採用選考において、IBM社のWatsonを使ってAIによる、エントリーシート選考の合否を判断する取り組みが行われています。 これまで人事担当者が行っていた選考作業を、WatosonのAIが行うことで、属人的な「主観」の判断から、「公平」な選考を行えるようになりました。ついでに、その選考作業に関わっていた人の、75%の工数削減にも成功しました。 日本の新卒採用では、伝統的に大量応募・大量選考が行われているため、ピープルアナリティクス(AI)を、業務効率化に用いる事例は今後も増えてくるのではないかと期待されています。 ピープルアナリティクスの運用について ピープルアナリティクスで、データをどのように使うかは人事次第です。つまり、どんなデータを取るか?どのように解釈して、どのように改善や改革につなげるかは人間が考えることです。つまり、ピープルアナリティクスの担当者のアイディアにかかっています。 また、データが必ずしも正確ではない場合もありますし、データや評価に現れない(測れない)部分もあるので、「人」の判断を全く排除するのも良くないかと思います。したがって、初めての導入に際しては、ピープルアナリティクスは「人の意思決定の支援」をする感じでスタートしてみるのが良いかと思います。 データの取得・活用・取り扱いに注意 ピープルアナリティクスでデータを取り扱う上で、「改正個人情報保護法」はしっかりと意識すべきルールです。 2017年の改正個人情報保護法では、個人を特定できる情報を取り扱う事業者すべてに対して、その管理の徹底と、ルールの適用が義務づけられました。 例えば、外部のコンサルに支援してもらう場合など、ピープルアナリティクスで使う人事情報を「第三者に委託する」のであれば、その「個人情報の取り扱い」ルールに注意しなければなりません。この場合のデータは、「氏名」「生年月日」「住所」「社員IDと所属部署」など、他の情報と併せることで個人を識別できるすべての情報になります。 また、自社でピープルアナリティクスを導入する場合も、個人情報について意識する必要があります。つまり、採用活動や異動・配属、評価にデータを活用する場合、それが個人情報の利用目的の範囲内に収まっているのかです。また取得時にしっかり分析に使うことを明示していないと、最初の利用目的の範囲を超えているため、新たに本人の同意が必要となります。 自社内の情報とは言え、無条件に人事データを利用することは倫理的にも問題があり、個人情報の取得や活用、取り扱いに関する法令やガイドラインに従うことは企業の義務なので、しっかり説明し、厳重に管理していただければと思います。 最後に ピープルアナリティクスを導入しても、データの収集・集計に奔走し、「傾向をなんとなく掴む」だけで終わってしまうことがよくあります。 人事分野は、マーケティングなどの分野と比べると、利用できるデータの数が少ないので、目的をはっきりし、適切にデータを収集・分析しないと、ちゃんとした成果につながりません。 また分析が適切でないと、誤った意思決定を下して、効果がないばかりか、逆の結果を生み出してしまうことがあるのが人事戦略の怖いところです。つまりデータ分析やAIを勉強して、ピープルアナリティクスを正しく使える人材が自社にいないと、運用は難しいかもしれません。 しかし、ピープルアナリティクスを使った人事戦略の流れは、今後どんどん主流となり、避けることはできない戦略投資になるかと思われます。 なるべく早く取り掛かり、メリット・デメリットを実感しながら、その分析精度を上げていけば、必ず大きな成果を出してくれると思います。 最後までお読みいただきありがとうございました。