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内定者フォローとは(その1)

今回のコラムでは、「内定者フォロー」について、2回に分けて簡単にご説明しようかと思います。

第1回目では、「内定者フォロー」の実施の意味や、今問題となっている「内定辞退者」の件などをからめてご説明いたします。また、「内定者フォロー施策」にはどんなものがあるのかみていきます。

第2回目は、「内定者フォロー施策」を実施する際のポイントや注意事項などをご説明いたします。



目次



内定辞退の現状

2020年3月卒業の大学生・大学院生対象の大卒求人倍率は1.83倍と、前年の1.88倍より0.05ポイント下落。8年ぶりの低下となりましたが、高水準を維持し、リーマン・ショックで求人倍率が大幅に低下した2010年卒以降で2番目の高さとなりました。



こうした採用枠の拡大により、優秀な学生ほど複数の企業から内定を得やすくなっています。就職氷河期世代から見ればなんとも羨ましい状況です。 多くの求人があり、内定が取りやすくなっている一方、企業理解や自己分析が十分でないまま早期に就職活動を終えてしまったことへの戸惑いや不安が増大している場合があります。 こうした学生は、入社後の企業理解のアンマッチにより、早々に会社を去ってしまうケースにつながってます。


企業側はその事実を認識し、内定辞退を防ぐべく、アンマッチのない採用ができるように、早期から内定フォロー施策を実施する必要があります。



内定者フォローがなぜ必要なのか


内定ブルー」になる内定者の心理

無事内定は取れたものの、内定から入社するまでの期間、学生の気持ちは非常に不安定な状況に置かれています。 複数の企業から内定を得ることができた場合は、その中から1社に絞り込んでいく過程で大いに悩むことになります。 まさに「マリッジブルー」ならぬ、「内定ブルー」になる学生もいるとか。


内定から入社までの間に学生が抱く不安はいくつかあります。 のんびりした学生生活から一転、きっちりとした社会人生活をちゃんと送れるかどうかについての大きな不安や、配属先の上司や先輩社員・同僚とうまく人間関係を構築できるか、また自身の能力や仕事やキャリアについての不安もあるでしょう。 これらに対する不安を払拭するのが、内定者フォローの主な目的です。




内定者フォローの本質は「不安を取り除き、ミスマッチを軽減すること」

近年は、新卒者の3割が入社から3年以内に辞めています。若手社員の早期離職理由を調査すると、会社や仕事、人間関係への不満が一番多いのですが、さらに掘り下げて調査すると、実は入社前から「不安」を持っていた人が少なくないようです。つまり、内定者の時点で感じていた「早期離職の火種」がくすぶっていたことになります。 このような将来的なミスマッチの不幸を起こさないためにも、入社前のしっかりとした内定者フォローを行い、しっかりと納得して上で入社してもらう必要があります。



内定者が持つ「期待」の裏側にある「不安」をいかに解消するか

実際に会社組織で働いた経験がない学生は、自分が希望する会社から得た内定であっても、「本当にこの会社でいいのか、自分はやっていけるのか、他にもいい会社があるのではないか」といった漠然とした不安を、就職活動中から内定、そして入社後まで持ち続けています。

そういった何とも言い難い不安を解消し、入社に対して前向きな気持ちと自信を持ってもらうことが、採用のミスマッチを防ぐためには非常に大切です。そこに内定者フォローを実施する大きな意味があります。 どんなに力を注いでもミスマッチ感をゼロにするのは厳しいかもしれません。しかしながら「この会社で頑張ってみよう」と期待感とモチベーションを持たせてあげることはできます。

「内定者フォロー」は「内定辞退の防止」が目標と思われがちですが、突き詰めれば新人の「早期戦力化」の準備であり、「この会社でがんばってみよう」という前向きな意識にさせることを念頭に行わなくてはいけません。 丁寧に内定者に対してフォローを行い、入社前の「不安」を解消することで、学生の気持ちを自社に向けさせ、入社への意思を固めさせた上で、スタートラインに立ってもらいましょう。



内定者フォロー施策

「内定者フォロー」には様々なアプローチがありますが、実施する際は、学生が感じるギャップなどを参考にしながら、どのタイミング、プロセスで実行するのがより効果的かを考えなければいけません。 大切なのはミスマッチを減らし、この会社で頑張りたいという断固たる入社への決意を持ってもらうことです。


また、人事担当としては予算や手間など、バランス(費用対効果)も考えて対応する必要があるでしょう。 近年の採用スケジュールの短縮で採用担当者の負荷は大きくなり、内定者フォローの重要性は分かっていても、十分に手が回らないのが実情のようです。 そのためにも、何とかして内定者フォローを効率化し、業務の負荷を下げることも、大きな課題として上がっています。


実際の「内定者フォロー施策」として一般的に行われている施策には、下記のようなものがあります。 それぞれ目的があり、「会社の人間関係に対する支援」、「社会人としての新生活を支援」や「入社後の仕事やキャリアの支援」といった感じです。業種によっても期待する効果の重みづけが違いますし、コスト面でも様々なので、自社のフォロー目的に合ったものを実施しましょう。



内定者と定期的に連絡をとる

メールや郵便、内定者専用サイトのメッセージ機能などを通じて、内定者と定期連絡をとり、近況報告などをもらうやり取りを指します。最も基本的なフォローで、事務上の必要性もありますので、やっていない企業はないかと思います。 会社からの音沙汰がないと、内定者は非常に不安を抱くので、適度な頻度で連絡を取り合うことが大切です。



社内報・社史などの送付

社内報、会社案内、社史、PR誌などを内定者に送付し、会社に対する理解と愛着を深めてもらうのが目的です。読むのにも時間はかかるものですから、何でもかんでも送り付けるのではなく、内定者が自社の理念や事業を理解する上で役立つものを送りましょう。



個別面談

面談を通じて、内定者の心理状況や、抱えている不安や疑問をケアしていきます。本音を引き出すためにも、学生との距離感を縮める必要があり、継続的に何度も会うことが大切です。 これにより、言いづらかった悩みや、本人も気付いていなかった 潜在的な問題を発見、解決します。



メンター、チューターによるフォロー

今内定者フォローで重視されているのがメンター制度です。詳しくは後述の『内定者フォロー施策「メンターの登用」』でご説明します。



社内等でのアルバイト

実際の現場で働くことを通じて帰属意識を高めるだけでなく、入社前研修としての効果も期待できます。また、採用側も働きぶりを見て、選考時には知りえなかった内定者の個性や適性を知ることもできますので、意図をもって実施したいところです。 その際、「学生でもできるもの」として単純作業のようなものを用意するのではなく、携わることで、会社の業務の流れが分かる部署で実施すると、高い効果が期待できます。 ただし、内定者にとってアルバイトの誘いは断りづらいので、強制力は排除し、スケジュールなどが参加しやすく、負担感の少ないものを考えるなど、実施にあたって十分な注意が必要になります。



社内・職場、工場・店舗などの現場見学

オフィスや工場などの見学会を実施します。見学には、先輩社員も同席し、説明や質疑応答を行うことで、仕事への理解を深める効果と、先輩との交流を通して、人間関係への不安を軽減する効果が見込まれます。 見学後にグループディスカッションやレポートなどを同時に実施しても良いかと思います。



合宿研修(集合研修)

入社前に必要な知識を、内定者を集めた研修で実施します。内容はビジネスマナーや仕事の基本を習得することを目的としたものが中心です。 宿泊を伴う合宿形式の研修は、内定者同士の相互理解を深め、自社への帰属意識を高めます。また、日常とは異なる場所や時間を共有することで、内定者の意識が大きく変革する機会につながります。 ただし、コスト、マンパワーともに負担は大きい施策です



内定者同士の懇親会・交流会

内定者を集めて、事業内容や職場の状況を説明する催しです。昼食会、夕食会を兼ねるケースもあり、学生にも人気がある施策です。 内定者同士が交流することで「絆」が生まれ、モチベーションが上がり、内定辞退が減るという効果があります。こちらも後述の内定者フォロー施策「内定者懇談会」で詳しくご説明します。



役員との懇親会・交流会

人事担当や内定者同士の懇親会だけでなく、企業の役員との懇親かも実施されていますが、これは少し意図や内容が異なります。 内定者は、経営者の話を聞いてその企業を選んだ理由を再確認したり、その企業にしかないメリットを探し出そうとするため、経営者が実際に出席することが大切です。経営者は挨拶だけでなく、経営目標や人事管理の方針を明確かつ具体的に内定者に伝える必要があります。



社内行事・イベントへの参加

社内運動会、クリスマスパーティー、忘年会、新年会など、社内行事に内定者を招きます。自社の雰囲気に接する中で内定者は不安を解消し、会社の一員という自覚も芽生えます。内定者側の抵抗も少なく、簡単にできて、しかも効果の高い方法です。 内定者にイベントの告知をする際、「招待」という形にすると、「会社が内定者を大事にしている」「参加を待っている」というイメージでメッセージを伝えることができ、気分的に楽に参加できるようになります。あくまで強制参加ではなく、内定者が「自主参加」できるようにします。



入社前のビジネスマナー・ビジネススキルの習得支援

郵送やWeb上での通信教育を、会社負担で受講させるものです。カリキュラムとしては、ビジネスマナーを中心としたスタンダードな内容から、企業理解を促進させるものまで様々です。 企業側にとっても入社後の導入研修の軽減が期待でき、利便性やコスト的にもeラーニングを使ったものが主流になっています。詳しくは後述の内定者フォロー施策「内定者フォローe-ラーニング」で詳しくご説明します。



資格取得、語学学習支援

金融関連などでは「外務員試験」、不動産では「宅建」など、専門的な資格を入社前に取得させたほうが、入社後のスケジュールに余裕が出るというメリットから、業務上必要な資格の事前取得を勧める企業が増えています。また、TOEICや中国語など語学学習支援に力を入れる企業も増えています。



最後に

このように一言に「内定者フォロー施策」といっても、そのやり方はたくさんあり、やり方により、フォローの重点ポイントも変わっています。第二回では、いくつかある「内定者施策」の中から、効果が高いと注目されているフォロー施策を取り上げてご説明します。



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