空の検索で217件の結果が見つかりました。
- ワーク・ライフ・インテグレーションとは
前回、「ワーク・ライフ・バランス」の意味についてご説明しました。今回は関連するキーワードで、「ワーク・ライフ・バランス」と少し違った切り口で提唱されている、「ワーク・ライフ・インテグレーション」についてご説明させていただきます。 「ワーク・ライフ・バランス」では、「仕事(ワーク)」と「人生(ライフ)」はトレードオフの関係でとらえられてました。つまり、相反するものだからこそ、双方の「バランスをとる」必要があるという考え方です。つまり、単なる労働時間削減ではなく、人それぞれの人生のイベントの際に仕事と生活のバランスを取る、例えば、出産時や子供がいる生活では、子供との時間を大事にし、子供の手がかからなくなれば、仕事における責任の度合いを増やして仕事を重んじるといった感じです。 そのために、休暇や時短などの配慮をするといった取り組みが必要でした。 今回の「ワーク・ライフ・インテグレーション」は、個人の意識において大きな変化を必要とし、仕事と人生(私生活)とを統合させて考えていくという思想です。 目次 ワーク・ライフ・インテグレーション(Work Life Integration)とは 「ワーク・ライフ・インテグレーション」と「ワーク・ライフ・バランス」の違い ワーク・ライフ・インテグレーションのメリット ワーク・ライフ・インテグレーションを推進するには ワーク・ライフ・インテグレーションの企業の事例 最後に ワーク・ライフ・インテグレーション(Work Life Integration)とは 「ワーク・ライフ・インテグレーション」は、Work(仕事)、Life(生活)、Integration(統合)、つまり、「仕事と生活の統合」という言葉です。 「ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)」を一歩進めた発想で考えようというもので、ワークライフバランスの「仕事と生活のバランスをとる」という考えから「仕事も生活も人生の一部」であると発展させた考え方です。 2008年に経済同友会が発表した提言書『21世紀の新しい働き方―「ワーク&ライフ インテグレーション」を目指して』では、ワーク・ライフ・バランスの運用の難しさを指摘しています。 「バランス論の限界は、職場復帰後に現われる。現在の就社的な制度や慣行では、職場に復帰しても居場所が見つからず、心ならずも退社し、結局はパートとして仕事を見つけてゆかざるを得なくなるのが大勢であり、量的なバランスを変えるだけでは完全な解にはならない」とワーク・ライフ・バランスの限界が説明されています。 なぜバランスをとるだけでは不十分だったのでしょうか? 具体的な例の前に、まず「ワーク・ライフ・インテグレーション」と「ワーク・ライフ・バランス」との発想の違いからご説明します。 「ワーク・ライフ・インテグレーション」と「ワーク・ライフ・バランス」の違い 「ワーク・ライフ・バランス」という用語の一般的なイメージは、仕事にかかりっきりの生活改め、家族との生活の時間を作る、つまり残業をなくし、その分プライベートな時間を取り戻そうというイメージです。 いわば、仕事と生活を「対立的」にとらえて、「その量的バランスの調整・回復を目指す」というものでした。仕事と生活を両輪にたとえれば、双方がうまくバランスを取っていればいいのですが、どちらか片方に偏りすぎた場合は、もう片方が犠牲になってしまう不安定な構図です。先の経済同友会の提言書にもある通り、現実的にバランスをとることは非常に難しいという実情がありました。 そこで、そもそも仕事と生活、社会生活と私生活、職場と家庭は本当に「二者択一」なのか、区別したり、優先順位をつけたりすべきものなのかという疑問を投げかけた人がいます。 慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科の高橋俊介教授は、ワークとライフの“統合”(インテグレーション)をいちはやく唱えたキャリア論の権威的人物です。教授は「家庭と仕事を分業してしまうから、相手への感受性が鈍化して、相互不信が募る。家庭と仕事のどちらかに優先順位をつけようとするから、ストレスが生まれる。二つを同時にやるから、得られるものもある」と説いています。 「ワーク・ライフ・インテグレーション」の主たる意味は、自らの人生観を軸に、ワーク(仕事)とライフ(生活)を柔軟、かつ高い次元で統合し、双方の充実を求めることにあります。 ちょっとわかりにくいのですが、この2つを別々に考えるのではなく、仕事と家庭(そのほか個人の生き方そのもの)を一つのものとして捉え、敢えてそれぞれの要素の線引きしないということです。そうすれば、抵抗なく仕事においても生産性や成長拡大を実現できますし、それによって生活の質を高め、充実感と幸福感を得るなどの相乗効果を得られるではないかということです。 仕事にやりがいをもって取り組むことで個人の生活の質を高め、幸福感を得ることができます。企業や社会全体もそれによって生産性向上や成長拡大できるので、個人と企業(社会)がWin-Winの関係を目指せるという考え方です。 大切なポイントとして、単に「仕事」と「私生活」の2点だけでなく、人生を充足させる要素である「生きがい」や「コミュニティ(社会)」との関係などにも注目し、仕事とそれ以外の人間の活動すべてをインテグレート(統合)させることで、それぞれを充実させて、個人の人生を幸福に過ごせるようとしている点があります。 ワーク・ライフ・インテグレーションのメリット ワーク・ライフ・インテグレーションが定着すれば、個人と企業だけでなく社会全体にも様々な効果が期待できるとされています。 いくつかワーク・ライフ・インテグレーションのメリットの例を挙げてみます。 1. 個人がより幸福感を感じる 「幸福感」と書くと、何やら怪しい感じがしますが、シンプルに表現するなら「楽しく暮らす」ということでしょう。 ワーク・ライフ・インテグレーションの考え方は、企業の経営者や個人事業主にはなじみやすい考え方だと思いますが、仕事にやりがいを感じている時は私生活も楽しいじゃないかということです。 自分の中で仕事と生活の壁をなくせば、優先順位をつけるストレスもなくなるので、結果的にどちらも充実感を持ちながら毎日を過ごすことができるでしょう。 2. 柔軟な働き方の実現 「ワーク・ライフ・インテグレーション」を実現するためには、企業側が裁量労働・時短勤務・在宅ワーク・フレックスなど、柔軟な働き方を採用する必要があります。その結果、自分の生活にあった働き方を選択していくことが可能になります。 育児や介護の時間を会社のスケジュールに合わせようとするから、時間に追われ、無駄な通勤などでストレスをため込んで疲弊します。1日の使い方を自分で決め、在宅でもちゃんと結果が出せれば理想的です。 3. 個人能力の向上 かつて第1次産業、第2次産業がメインだった時代はさておき、現代の日本の産業構造では、長時間労働によるメリットは少なくなっています。 第三次産業の従事者が7割近い今の日本に必要な「ソフト力」を引き出すためには、従業員にアイディアやコミュニケーションの能力を備え伸ばす必要があるのです。 ワーク・ライフ・インテグレーションにより、あえて仕事と生活を線引きしないことで、仕事を意識しながら、プライベートの時間で得た新しい知識や体験、出会いを仕事に活かしていくことができるといわれています。仕事が忙しいと、そういったチャンスに気が付かなくなります。 もちろん、私生活で充実感を感じリフレッシュした社員から、新しいアイデアが生まれることもあるでしょう。 柔軟な働き方はアイディアだけでなく、他の能力も上がるといわれています。 時短やフレックスの運用時には、業務の調整能力やコミュニケーション力も必要とされるので、必然的にこれらの能力がスキルアップするといわれてます。 例えば、時短などでいざとなったら人に仕事を頼まなければいけないので、自分だけで抱え込まずに、他の人でもいつでも作業できるように情報を共有化・見える化する仕組みや習慣化ができます。 仕事だけでなく、育児や介護をサポートしてもらうために、多様な人たちとの良好な人間関係構築の能力が鍛えられたりします。 結果、企業としての生産性向上も期待できるのです。 4. ダイバーシティの向上 「ワーク・ライフ・インテグレーション」を実現させるためには、必然的に様々な働き方に対応できる人事制度の見直しなどが必要になります。従業員のより働きやすい環境を企業が積極的に整えることで、有能な人材の確保や多様性のある働き方の推進にもつながります。有能な人材なのに、就業体系が合わず、活かせる仕事ができていなかった人を自社に取り込むチャンスとも言えます。 5. 社会的にも良い効果 「ワーク・ライフ・インテグレーション」が普及することにより、個人の幸福感や企業収益の向上などが実現し、結果として社会に活力が生じます。新しい生き方が生まれれば、それに合わせた消費パターンが生まれます。また、少子化にも効果がありそうです。有給消化率が上がれば、趣味やレジャー、観光産業などに好循環が生まれます。日本では大学を出て働き始めると、企業の研修以外に学びの場を持つ機会がほとんどありませんが、自己啓発のために、資格取得の学校、大学院やセミナーなど共通の目的を持った新たなコミュニティに属して、人間としての成長にもつながります。 ワーク・ライフ・インテグレーションが休暇の使い方の幅が広げ、社会・コミュニティとのつながりのためのライフスタイル変更が休暇取得意欲につながります。 ワーク・ライフ・インテグレーションを推進するには 「ワーク・ライフ・インテグレーション」の一般的なイメージは、仕事も生活も一体に考え、常に仕事を意識することが人生みたいな解釈をされている傾向があり、若干敬遠されてしまうことがあります。仕事と生活の統合といわれると、さらに働かされるようなイメージですね(笑)。 誤解を生みやすい一面があるが故、制度の本質を理解してもらうことが大切です。 企業は、ワーク・ライフ・インテグレーションとは、仕事と生活の双方の充実を目的とし、すべてを仕事につなげる考えではないという意思表示をしっかりする必要があります。例えば、評価方法が「労働時間」を重視していると、従業員は間違った解釈をしてしまうので、人事制度を見直して「成果」による評価に切り替えなくてはいけません。 また、ワーク・ライフ・インテグレーションには、経営者従業員全ての人の思考の転換が必要です。しかし、立場的に従業員から行うのは難しいと思われます。したがって、まずリーダーが率先してワーク・ライフ・インテグレーションを成し遂げるようにしましょう。上の立場の人間が正しく示すことで、後に続く社員の理解につながります。 ワーク・ライフ・インテグレーションの企業の事例 ダイバシティや女性活用で先進的な日本アイ・ビー・エム株式会社は、ワーク・ライフ・インテグレーションにも積極的です。トップの意識も高く、介護や育児など、働く場所や時間に制約がある社員には、かなり柔軟な働き方を認めています。採用労働やモバイルオフィスなども早くから採用しています。 オリンパス株式会社では、ワーク・ライフ・インテグレーション施策として「在宅勤務制度」「労働時間短縮制度」「役割フレックス制度」「リエントリー制度」をさいようしています。「リエントリー制度」とは、配偶者の転勤や育児・介護を理由としてやむを得ず退職した元従業員が、再入社を希望する場合に正社員として再登録できる制度です。オリンパスでは全社的に、ワーク・ライフ・インテグレーション推進体制と啓発活動の促進を進めています。2016年3月には、「くるみん認定企業(後述)」として厚生労働大臣から認定もされました。 ワーク・ライフ・インテグレーションを実現するための施策は、基本的にワーク・ライフ・バランスと同じものが使われます。それに加えて、ワーク・ライフ・インテグレーションを推進するキーワードとして、「場所」「時間の柔軟性」があります。 「場所」は会社以外の場所、例えば自宅での勤務を可能にするシステムを提供したり、安全に社内ネットワークへのアクセスを可能にするVPNを引いてあげたりすることです。 「時間の柔軟性」は、社員の判断により時間が使える制度を導入したり、裁量労働制を取り入れます。 以下は様々な企業で実施されているワーク・ライフ・インテグレーションのための制度例です。 1. 子育て支援 育児休業、育児時間、子供の看護休暇、育児短時間勤務制度、保育料補助、ホームヘルプ補助 2. 介護支援 介護休業、介護休暇、介護短時間勤務制度、介護サービス補助金、介護休業給付金、高額療養費、高額介護合算療養費 3. 地域活動支援 ボランティア休暇 4. 裁量労働 フレックスタイム制度の導入、勤務時間中での私用への柔軟な対応 こうした制度の整備だけでなく、個人がワーク・ライフ・インテグレーションを実践していこうとする心構えが大切です。 例えば、休暇もただ月曜に仕事に戻るための充電時間と考えてしまうと、インテグレーションの意味が薄れてしまいます。土日にあえて仕事に役に立つ講演会やセミナーに出てみたり、ビジネス書を読んだり、資格取得のために使えるとより休暇の意義があります。また企業側は、そのために費用をサポートしてあげるのもよいでしょう。 ワーク・ライフ・インテグレーションの意義をしっかり理解させて、これらの制度を導入する必要があります。 「子育てサポート企業」の認定 -くるみんマーク認定の取得- 次世代育成支援対策推進法(次世代法)に基づき、行動計画を策定した企業のうち、行動計画に定めた目標を達成し、一定の基準を満たした企業は、申請を行うことによって「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣の認定(くるみん認定)を受けることができます。多くの企業がくるみんマーク取得に向けて、社内の制度や行動計画を整備しています。今後は、くるみんマーク取得企業が、人材確保に有利になると言われています。 ※厚生労働省「くるみんマーク・プラチナくるみんマークについて」を開く(外部リンク) ワーク・ライフ・インテグレーションを体現した社宅 同じ会社の社員が居住する一般的な「社宅」とは異なり、業種・職種の異なる多種多様な企業の社員が入居する「シェアする社宅」があります。この社宅は「月島荘」といい、「ワーク・ライフ・インテグレーションを体現した社宅」としてちょっと話題になりました。 「月島荘」は、その名の通り、勝どき・月島にある地上8階建の3棟構成、敷地面積2011坪のマンションです。荘とついてますが、モダンで立派なマンションです。 月島荘は、月島荘の事業主である企業「乾汽船」の倉庫跡地の土地の再開発プロジェクトから生まれました。 「忙しい社会人が、呼吸するように「交流」できる場所を」と、シェアすることで生まれる社宅の新たな価値をコンセプトに建てられています。 具体的には「普段仕事で会えないような人たちと会うきっかけが、日常の中に自然とちりばめられている」点や、住民同士だけではなく、月島荘を使ったイベントなどで「外部の人との交流」を生み出すことなどです。月島荘は、居住者に「交流」という価値を提供します。 様々なイベントが企画され、ライブラリースペースなども用意されていて、さまざまなセグメントの人と交流できます。 入居者は主に2パターンの背景があり、会社が設定した枠に自ら志願して入居される人と、企業研修のような形で自分の意思とは関係なしに入居される人がいます。この「シェア社宅」には、ワーク・ライフ・インテグレーションの実現環境としての目的だけでなく、従業員の柔軟な発想力の育成や、ダイバーシティ(多様性)が必要とされる時代の人材育成、人材投資に近い意味合いが含まれているようです。 ※企業寮をShareするという試み。|【公式サイト】月島荘を開く(外部リンク) 最後に 「仕事か生活か」ではなく「仕事も生活も」優先順位をつけず、前向きに、どちらも充実させることを目指すからこそ得られる相乗効果が、ワーク・ライフ・インテグレーションの真髄といえそうです。 私の周りでも、フリーランスで働いている人はワーク・ライフ・インテグレーションを実現できていると思います。企業で働いている人はなかなか見当たりませんが、いくつかのネット関連企業には似たようなスタイルで働いている人がいました。彼らには、仕事はどこにいても、どこでもやれる、自分のやりたいときにやりたいだけやる、休日で仕事に役立ちそうなセミナーがあれば、積極的に参加する、日常生活の中で、仕事のヒントがあれば、すぐメモって仕事に活かす、そういう意識を感じました。このスタイルと企業とがマッチすると、本当の意味でワークとライフのインテグレートがなしえるんじゃないかと思います。 ワーク・ライフ・インテグレーションとは個人の人生観を軸に仕事とプライベートを統合させ、双方の充実感を高めることとも言えると思います。 人生の大半を費やす仕事が、ストレスと同義になってしまわないためにも、正しい認知やマインド・チェンジをしっかり行ってほしいと思います。
- ピア効果とは、ピアボーナスとは
今回と次回は、仕事場における周り同僚の影響と評価について関係するキーワードについてご説明したと思います。 具体的には今回は「ピア効果」と「ピアボーナス」について、次回はその関連ワードの「ソーシャル・レコグニション」についてご説明する予定です。 目次 ピア効果とは 負のピア効果にご注意 より高いピア効果を得るために 人事施策に「ピア効果」を利用する 高いピア効果を発揮する「ピアボーナス」 ピアボーナスを取り入れたサービス 最後に ピア効果とは 「ピア効果」の「ピア」とは、英語の「peer」からきており、「同僚、同輩、仲間」を意味します。つまり「ピア効果」とは、仲間や同僚などが作用し、お互いの行動、生産性に影響を与え合うことをいいます。 「ピア効果」には「正のピア効果」と「負のピア効果」があります。 「正のピア効果」は、能力や意識のレベルの高いピア(仲間)が、同じ環境に集まってお互いに切磋琢磨し合うことで、その集団がレベルアップするだけでなく、個々も成長するという相乗作用をもたらします。 逆に「負のピア効果」は、集団の中でお互いの悪い部分が影響し合い、集団としても個人としてもレベルダウンしてしまう状態です。 ピア効果のわかりやすい例が、ピア同士の「競争」とそれを支える「切磋琢磨」です。 アメリカの研究では、自転車競技の走行タイムを使って実験が行われました。単独で走行した場合のタイムと、数人で競争して走行した場合のタイムとで比較すると、競争した場合のほうが速かったのです。 当然これは複数人で走ったことにより、各自に競争意識が芽生え、潜在的に「相手に負けたくない」という気持ちが強く働き、単独走行よりも強い力を引き出したという可能性を表しています。 仲間との競争が成長させることは、我々が人生の中の様々な競争を通じて、経験的に理解できると思います。 負のピア効果にご注意 子供の頃、親に「なるべく学力の人と友達になりなさい」と言われたことがある人もいるのではないでしょうか。親としては「学力の高い友人と付き合えば、学力の高い友人から勉強の仕方を教わったり、進学への意欲なども影響を受けてくれるだろう」と潜在的にピア効果に期待していたのかと思います。 確かにこの「レベルの高い友人からの影響」というのは、正のピア効果の1つです。しかしながら、正のピア効果を期待しながら、負に働いてしまう例もあります。 埼玉県が実施している「埼玉県学力・学習状況調査」でピア効果の測定実験を行いました。 平均的な成績が良いクラスに1年間所属した後、その生徒の成績が前年度の始めと比較しました。結果は、学年、性別、科目に関わらず、負のピア効果が一定量存在すると確認されたのです。 研究によると、負のピア効果の理由として、自分より成績の良い同級生がいることによって、自分の相対的な学力が低いという自己認識を持ってしまい、学習意欲が低下する可能性が指摘されています。 (参考)RIETI 負のピア効果 ―クラスメイトの学力が高くなると生徒の学力は下がるのか?を開く(外部リンク) より高いピア効果を得るために ただ単に複数人で競わせるだけでは「正のピア効果」は得られません。構成を間違えると「負のピア効果」ばかりが生じてしまうこともあるでしょう。 より高い「正のピア効果」を得るためには、「誰」と、「どう競い合う」かをしっかり設定する必要があります。 ポイントは構成員の「レベル調整」です。 競争する相手とレベルの格差が大きすぎると、いい影響が出にくいと言われています。低いレベルの人はあきらめて努力を放棄してしまい、高い方も慢心して向上意欲を失ってしまうからです。双方に良くない結果ですね。 具体例として、アメリカの空軍養成学校で行われた実験があります。 全体の成績を底上げするために、成績優秀な生徒のクラスに成績の悪い生徒を混ぜて、成績の悪い生徒がレベルアップするかを実験しました。 結果は、成績が悪い生徒の成績がより悪化してまうというものでした。この実験でもわかる通り、競争相手は、近いレベルの者同士を組み合わせることが良いようです。お互いに「油断したら負ける」というぐらいの力関係で切磋琢磨させることにより、正のピア効果が引き出されます。 人事施策に「ピア効果」を利用する 「ピア効果」は、教育心理学や行動心理学の研究の中で注目されていましたが、教育分野に留まらず、労働経済学でも「ピア効果」が注目されています。経営者の要望する生産性の高い組織やチームを作るために、「ピア効果」を上手に取り入れた人材育成施策が有効だからです。組織、チーム内で適切な競争を促すことで、従業員の生産性と能力を向上させることができるのです。 また、個人作業よりもチーム作業の方が、生産性が上がることが分かっています。そのため、従業員個人に成果報酬を出すのではなく、チームに報酬を出す方が生産性を高められるとし、そうした制度を採用している企業も増えてきました。 このチームにおけるピア効果は、専門性の高い知識や能力を有するブルーカラー労働者の環境で特に効果を発揮するという結果が出ています。チームメンバー同士で教え合い、弱点を補完し合う関係が構築され、成果を出しやすくなるようです。また、チーム作業に重視すると、周りのメンバーの足を引っ張らないようにという意識が芽生え、自己研鑽するので、個々人の能力・生産性向上にもつながっていいきます。 ただし、先にも述べました通り、組み合わせ次第では「負のピア効果」が現れてしまい、生産性が落ちるだけでなく、職場を無駄に疲弊させ、雰囲気を悪くして今うケースもあります。ピア効果を引き出すためには、個性や性格などを加味して、細かな組み合わせのマネジメントが必要とされます。 高いピア効果を発揮する「ピアボーナス」 前述の「チーム報酬制度」は、相互に助け合い、チームとしての成長をモチベーションにすることで生産性を上げ、かつ負のピア効果を生じさせないようにと考えられた制度です。 「チーム報酬制度」とは違った角度で「ピア効果」を出す試みとして、「ピアボーナス」という制度があります。 ピア・ボーナスとは、従業員同士が互いに仕事の成果や行動を評価し、報酬を贈り合うことができる評価制度です。HRテクノロジーの進歩で、従業員間で報酬を贈り合えるツールが登場したことで、ピアボーナス制度は大きな話題となっています。 本来、従業員に金銭的な報酬を与えるのは組織の役割ですが、ピアボーナス制度は、その権限を従業員に一部委譲します。そして、数値に表れにくい、「縁の下の力持ち」的な働きをしている同僚などに、貢献度の評価や感謝の印として同僚から報酬を贈ることができます。 ピアボーナス制度を導入することにより、従業員のモチベーションやエンゲージメントを高まります。旧来の評価制度では、数字的に大きな成果を上げる人が目立ち評価され、日々細やかな仕事にコツコツと取り組んでいるタイプの人には、なかなかスポットが当たりませんでした。 ピアボーナス制度を導入すれば、周囲のメンバーがそういった人たちを評価することができるので、モチベーションも上がり、結果として組織への愛着やコミットメントを高めることができます。何よりも人から努力を認められると、嬉しいものです。しかも、賞賛という非金銭的な報酬だけでなく、同時に金銭的な報酬も得られるのですから、持続的なモチベーション向上に働く効果は相当高いと思われます。 また、ピアボーナス制度を導入した事例でよく目にするのが、「組織の雰囲気が良くなった」「組織内のコミュニケーションが活性化した」と言った組織風土改善に対する効果です。普段なかなか言葉で伝えられない感謝をピアボーナスで表すことによって、ピア(同僚)に対する関係性の意識が変わるのです。 ピアボーナスを取り入れたサービス 「ピアボーナス」を取り入れた人事評価システムとして、Fringe81株式会社の「Unipos(ユニポス)」が話題になりました。PCだけでなく、スマホからピアボーナスを贈ることができるので、感謝の気持ちをこまめに記録して、従業員間での相互評価の仕組みを簡単に作れます。多くの企業で導入が進んでいるのです。 (参考)Unipos(ユニポス)- Fringe81株式会社を開く(外部リンク) 株式会社メルカリでは、2017年9月にUniposを導入しました。Uniposのことを独自に「メルチップ」と名付け、社内にピア・ボーナス制度の浸透を図ったそうです。更なる促進活動として、メルチップを一番多く送った人と一番多く送られた人を表彰する制度を設けたりもしています。メルチップを通して賞賛し合う文化やコミュニケーションの活性化、バリューに沿った行動が可視化されたことで人事評価への活用など社員同士の理解にも役立っているようです。 (参考)株式会社メルカリ 「mercan」(外部リンク)を開く 最後に 「ピア効果」いかがでしたでしょうか? 「ピア効果」は競争面での効果が注目される傾向にありますが、ピアボーナスなどの斬新な発想がHRツールによって可能になり、モチベーションアップやコミュニケーション力向上など人材育成として新たな活用方法を生み出しています。 次回はピアボーナスのつながりで、注目度が増している「ソーシャル・レコグニション」についてご紹介したいと思います。 最後までお読みいただきありがとうございました。
- SCORMとは
企業や学校などでLMSを導入している方は「SCORM」という言葉をよく耳にするかと思います。eラーニングを導入する上で、SCORMはある意味避けて通れないキーワードです。 今回はその「SCORM」について解説をしていきます。 目次 eラーニングを実施する上で避けて通れないキーワード「SCORM」 「SCORM」にはバージョンがある SCORMとLMSの関係 SCORM の仕組み ~APIアダプター~ コンテンツアグリゲーション 次世代SCORM 最後に eラーニングを実施する上で避けて通れないキーワード「SCORM」 SCORMは「スコーム」と読むのですが、正式名は「Sharable Content Object Reference Model」となり、意味的には「共有可能なコンテンツオブジェクト参照モデル」という意味です。 ザックリ一言で言うなら、「せっかく作った教材を、いろんな環境で使いまわしできるようにするための教材構造の世界標準規格」という感じでしょうか。。。 「いろんな環境」といっても主にLMSを指し、「使いまわし」するためには「一定のルールにのっとった形式」で作られる必要があります。 「SCORM」にはバージョンがある そのルールを決めているのは米国のADL(Advanced Distributed Learning)という標準化推進団体です。 日本では、日本イーラーニングコンソシアム(eLC)がSCORMの講習や技術者資格(SCORM技術者資格)の認定を行うなど、普及活動を担ってます。 SCORMにはバージョンがあります。ADLによってバージョンアップされ、種類がいくつかありますが、多少運用の混乱もあり、普及しているバージョンは「SCORM 1.2」「SCORM 2004」の2つです。自分が利用しているLMSが、どのバージョンのSCORMに対応しているかについては、ちゃんと確認する必要があります。 SCORMとLMSの関係 SCORMで作られたコンテンツを表示するには、「LMS(学習管理システム:Learning Management System)」が使われます。LMSは学習教材の配信や成績などを管理するシステムのことです。 LMSについてまだ説明しておりませんので、わかりにくいかもしれませんが、要は教材を搭載して、学習者が閲覧できるようにするシステムです。教材を管理するのと同時に、学習者の進捗なども記録します。 LMSには製品として販売されているものもありますし、大学などで開発され、無償で利用できるものもあります。eラーニングを導入している多くの企業で、何らかのLMSを導入して社員教育を行っています。 以前は、LMSは様々企業や団体で各々勝手に開発されているため、そこに教材コンテンツを搭載するにはそのLMSの「仕様」に合わせてコンテンツを作る必要がありました。しかし、導入したLMSの会社がつぶれたり、LMSを乗り換えたりした場合、コンテンツを新しいLMSに合わせて作り直す必要がありました。そのコストは膨大です。 また、教材を作るのが仕事のコンテンツベンダーとしても、お客さんの使っているシステム毎にコンテンツを移植して用意するのは至難の業です。 どんなに良い教材でも、うちのシステムに載せられない。。。そんな時にSCORMです。 SCORMの規格に沿ってコンテンツを作ることにより、SCORM対応LMSであれば、LMSを変えてもコンテンツが使えるという発想のもとにSCORMは広く普及しました。実際は各LMS開発側のSCORMの解釈の違いや、勝手に機能をつけ足したりしたので、まったくの調整なしに載せられるということはないのですが、それでも教材作成側は、SCORMを合言葉に信じてコンテンツを作っています。 SCORM の仕組み ~APIアダプター~ SCORMを語るうえで、教材コンテンツを配信するLMSとの連携が主目的であることは先に述べました。このLMSと教材コンテンツが「学習履歴」などの情報をやり取りする共通のルールがSCORMであることもわかっていただけたかと思います。 ではどうやってやり取りするのか?その要の仕組みが「SCORM APIアダプタ」です。 SCORM規格では、教材コンテンツにより生成された学習履歴は、SCORM APIアダプタを通じてLMSに送られ、記録されます。 順番を整理するなら、下記のようになります。 SCORM APIアダプタ 教材コンテンツを学習すると、修了や得点などの履歴データが作られる 教材コンテンツはこの履歴データをいったんAPIアダプタに送信する APIアダプタはそれをLMSに送信する つまり、教材コンテンツはLMSの流儀を知らなくても、SCORM APIアダプタと話ができればOKなわけです。 逆に言えば、LMS側が、自分に合ったSCORM APIアダプタを用意しておけば、教材コンテンツはSCORMに沿ってさえすればいいのです。 以上の流儀は履歴のやり取りのルールですが、もう一つ守るルールがあります。 コンテンツアグリゲーション コンテンツアグリゲーションとは、教材コンテンツの構成や内容をSCORMのルールに従って記載することにより、検索性や再利用性を高める役割を持ちます。 具体的には「Manifest(マニフェスト)」と呼ばれるXMLファイルを作成し、そこに教材のタイトルや概要、製作者、関連キーワード、バージョンなど、使いまわしする際に役に立ちそうな情報を記載します。 もう一つ、大切なのが、教材コンテンツの構成も記載する必要があるということです。XMLで教材の構成を階層構造で表現し、これが目次となって、学習者が学習する際の手掛かりとなります。 次世代SCORM SCORMは、コンテンツを作る際には意識すべきデフォルトのフォーマットではありますが、普及のスピード自体はそれほど早くないというのが個人的な印象です。とはいえ、技術は進歩するものなので、ADLでは、SCORM2004の後継となる次世代SCORMについて2013年にVer1.0リリースしました。 次世代SCORMは、「Tin Can(空き缶の意味)」と呼ばれ、既存のSCORMとはちょっとニュアンスが違います。 個人的な印象としては、「個人の学習履歴を貯めて、それをLMSとやり取りするためのインターフェイでは規格」という感じです。SCORMはコンテンツ構造記述をXMLで書きましたが、Tin Canではそこは対象外として、決めていません。同じようにシーケンシングも同様です。 Tin Canについては、また別の機会にまとめてご紹介いたします。 最後に SCORMの概要としては、上記のような内容ですが、詳しく調べるのであれば、日本イーラーニングコンソシアムのサイトをご覧いただくのが良いかと思います。 日本イーラーニングコンソシアムを開く(外部リンク) SCORM関連各種資料を開く(外部リンク) 今回は概論的な内容でしたが、SCORMコンテンツの制作や実装には色々とTipsがあり、機会があればその辺もご紹介したいと思います。 次世代規格も出て、古い規格というイメージを持たれがちなSCORMですが、私どもの仕事としてはまだまだ引き合いの多い状況なので、eラーニングに関わる方にはぜひ知っておいてもらいたいと思います。 お読みいただきありがとうございました。
- eラーニング『売れる仕組みを作る「マーケティング」』をリリースいたしました
~売れる仕組みを作る「マーケティング」~ はじめにマーケティング戦略策定のプロセスを理解し、その後、描いた戦略を実行するうえで行うべき具体的な意思決定について、マーケティングの4Pといわれるフレームワークに沿って学んでいきます。 詳細は下記リンクからご確認ください。
- ワタミ株式会社様の導入事例を公開しました
〜社員一人ひとりの夢や目標を実現するキャリア支援〜 ワタミグループの人材育成を支える仕組みの裏側について、人材開発本部/教育部の高城様、矢作様、鈴木様にお話を伺いました。 詳細は下記リンクからご確認ください。
- 明治安田生命保険相互会社様の導入事例を公開しました
〜「明治安田フィロソフィー」を体現できる人財づくり 企業内大学「MYユニバーシティ」の設立〜 明治安田生命の人財戦略を支える仕組みの裏側について、人事部/人財開発グループの石田様、石川様、梅田様にお話を伺いました。 詳細は下記リンクからご確認ください。
- 住友生命保険相互会社様の導入事例を公開しました
~ウェルビーイングに貢献する「なくてはならない保険会社グループ」の実現に向けた人財共育~ 住友生命保険相互会社の人的資本経営を支える仕組みの裏側について、人事部/人財開発室の佐藤様、井上様にお話を伺いました。 詳細は下記リンクからご確認ください。
- 株式会社ゆうちょ銀行様の導入事例を公開しました
~社員一人ひとりが能力を最大限発揮し、金融革新への挑戦ができるよう成長をサポート~ 株式会社ゆうちょ銀行様の人材育成を支える仕組みの裏側について、人事部/人材開発室の登根様、佐藤様にお話を伺いました。 詳細は下記リンクからご確認ください。
- レビックグローバルが「DX/リスキリング教育環境の拡充」を目的に東京大学エクステンションと販売代理店契約を締結
~東京大学の研究者にフォーカスした動画コンテンツで企業内教育を支援~ LMS(学習管理システム)と教育コンテンツを活用して企業の組織力を向上させるソリューションを提供している株式会社レビックグローバル(本社:東京都港区、代表取締役社長:柏木理、以下「レビックグローバル」)は、DX/リスキリング教育環境の拡充を目的に、東京大学エクステンション株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:山本貴史、以下「東京大学エクステンション」)と2022年12月20日に販売代理店契約を締結したことをお知らせいたします。 これを受け、レビックグローバルが提供するLMS「SmartSkill Campus(スマートスキル キャンパス)」において、東京大学エクステンションが提供する社会人教育のための動画コンテンツの取り扱いを開始いたします。 プレスリリース(PDF)は下記リンクからご確認ください。
- エンプロイアビリティとは
エンプロイアビリティとは 転職業界では、「エンプロイアビリティ」という言葉をよく使います。「employability」と英語にすると意味がすぐに通ると思いますが、「雇用する」という意味の「Employ」と「Ability(能力)」の組み合わせで、「雇用され得る能力(就業能力)」といった感じでしょうか。人事人材関連の用語というよりは経済学用語になります。 近年、人材開発の分野で、このエンプリアビリティを高める教育について注目が集まっています。「せっかく人材教育をしても、転職されてはなぁ」と思われる方もいるかと思いますが、企業が従業員のエンプロイアビリティを伸ばすことで労働力の向上が期待できるというメリットが注目されてのことです。 今回はこの「エンプロイアビリティ」について簡単にご説明します。 目次 エンプロイアビリティとは 仕事の能力高い人材は2つに大別できる 「エンプロイアビリティの高い人材」を育てるために 最後に エンプロイアビリティとは 冒頭で少し説明しましたが、「employability」は「雇用され得る能力」という意味で、平たく言えば「転職できるための能力」を示しています。 したがって「エンプロイアビリティが高い」と、当然ですが、転職や再就職の際に有利になります。近年の流動的な労働市場で、「ビジネスパーソンの価値」を表す場面で使われるようになりました。 言葉の起源的には、米国で1980年代以降に登場しました。産業の構造が変化し、生産と労働力の変化のサイクルが早くなり、多くの企業が労働者の長期的雇用を保障できなくなってきました。このため、企業側は長期雇用に代わる発展的な労使関係を構築するために、積極的に「他社でも通用する能力を開発するための機会を提供する」ということを、メリットとしてアピールし、人を集めたのです。 企業側が積極的に、従業員のエンプロイアビリティを向上させる環境や機会を提供するということは、一見優秀な人材の流出を引き起こすように感じられます。しかしながら、近年の産業構造の変化、技術革新のスピードアップ、労働者の就業意識・就業形態の多様化により、エンプロイアビリティを身につけられ、自己の評価を高めてくれる企業に魅力を感じる人は急激に増えています。 結果として、エンプロイアビリティを向上させる環境構築に注力している企業ほど、優秀な人材の流出を防ぐことに成功しています。 こういった企業を、「エンプロイメンタビリティ(Employmentability)の高い企業」といい、「企業の雇用する能力」が高い企業であると評価されます。 日本においても、終身雇用制度の崩壊や近年の雇用環境の変化に伴い、自社教育にエンプロイアビリティを向上させる環境を整え、それにより高いエンプロイメンタビリティを目指す企業が注目されるようになりました。欧米ではだいぶ前から、このエンプロイアビリティという意識は根付いていますが、日本で本格的に意識されるようになったのは2000年以降です。 また国としても、企業の倒産などで浮いてしまった人材を、スムーズに次の職場に格納できるように、政策としてエンプロイアビリティの高い人材を育てて、生産性をあげる舵取りをしています。 仕事の能力高い人材は2つに大別できる では「エンプロイアビリティが高い人」とはどのような人を指すのでしょうか。 転職に有利な人は、当然「仕事の能力が高い」人と言えます。その「仕事の能力が高い人」と言えば、以下のように大きく2つのタイプに分かれるのではないかと思います。 A:その仕事・職場で高い能力を発揮している人 B:どんな職場でも仕事の能力を発揮できる人 Aのタイプはベテランに多いタイプです。 例えば、勤続年数も長く、その会社のルールや仕事のやり方に熟知していて、信頼され発言力もあり、他の社員より高い仕事力を発揮する人です。ただし、この人が他の職場に行って、同様のパフォーマンスができるかどうかを考えると疑問符が付くかと思います。少なくとも、転職してすぐには無理でしょう。 Bのタイプは「個人的スキルが高くどんな職場でも短期間で同じパフォーマンスを発揮できるような人」を指します。 様々な開発言語を操る超絶プログラマーや、商材にかかわらず、何でも売り切ってくるスーパー営業のような人がこれにあたります。 Bのタイプは、仕事環境に依存しないでも高い個人的スキルを持ち合わせているので、転職して、どんな職場に行っても短期間で同じパフォーマンスを発揮できる可能性が高いはずです。つまり、「エンプロイアビリティの高い人材」とは、AではなくBのタイプの「仕事ができる人」を指しています。 このように、労働者に求められる職業能力として、「企業内で通用する能力」から、「企業を超えて通用する能力」が問われるようになってきたのです。 また、企業内においても、特定の職務への習熟を能力とみるのではなく、激しい仕事環境の変化への適応能力や問題発見・解決能力、さらには創造的能力等が重視する傾向にあります。 こうした企業内外において職業能力のあり方に大きな変化が、労働市場価値を含んだ就業能力「エンプロイアビリティ」の高い人材という新しい概念を生み出したのです。 ちなみに、Aのように現在の組織で周囲から評価されて雇用され続ける能力を「内的エンプロイアビリティ」と言い、Bのように、転職市場で評価の高い、他の企業でも使える能力のことを「外的エンプロイアビリティ」と言います。 日本企業は伝統的に「内的エンプロイアビリティ」に重きを置いてきましたが、全社員を雇用保障できなくなってしまった今の時代は、「外的エンプロイアビリティ」を高めるための支援を積極的に行う姿勢、つまり、企業側が主導してエンプロイアビリティを高めることが求められるようになりました。これを「エンプロイアビリティ保障」と呼びます。 転職先として人気企業は、従来の「長期雇用保障(日本)型人事システム」から「エンプロイアビリティ保障型人事システム」に大きく様変わりしています。 「エンプロイアビリティの高い人材」を育てるために では「エンプロイアビリティの高い人材」を育てるにはどうしたらよいでしょうか? 厚生労働省発表の「エンプロイアビリティの判断基準等に関する調査研究報告書について」では、エンプロイアビリティの能力の評価は次のように定義されています。 “エンプロイアビリティは、労働市場価値を含んだ就業能力、即ち、労働市場における能力評価、能力開発目標の基準となる実践的な就業能力と捉えることができる。 エンプロイアビリティの具体的な内容のうち、労働者個人の基本的能力としては、 A:職務遂行に必要となる特定の知識・技能などの顕在的なもの B:協調性、積極的等、職務遂行に当たり、各個人が保持している思考特性や行動特性に係るもの C:動機、人柄、性格、信念、価値観等の潜在的な個人的属性に関するもの が考えられる。” 上記A~Cのうち、「Cについては、個人的かつ潜在的なものであり、これを具体的・客観的に評価することは困難なので、エンプロイアビリティの評価基準として盛り込むことは適切ではなく、A、Bを対象に評価基準をつくることが適当である」と厚生労働省は報告しています。 では、A「職務遂行に必要となる特定の知識・技能などの顕在的なもの」を能力として高めるにはどうしたらよいでしょうか? Aについてはその職種により詳細は異なりますが、何よりも「仕事の覚え方」を身に着けることが大切です。 どんな知識や技術も、一度身に着けておけば安泰という世の中ではありません。新しい知識・技術を覚えるだけでなく、その拡張や幅広く専門性を広げる努力を日々する必要があります。 能力の高いと言われるプログラマーは、暇な時間があれば最新の情報を収集し、新たな言語などを積極的に試してプログラムを習得しています。そうすることにより、新たなジャンルの仕事を受けたり、難解な案件で最適のソリューションを提案することもできるようになります。人より先に新技術を装備することで、自己の価値をどんどん高めていくことができます。 このように新たな知識・技術を日々吸収するだけでなく、自分の活動エリアを広げていくことが、エンプロイアビリティを高くする秘訣と言えます。 転職先の業種によって必要とされる知識や技能は異なりますし、同じ業種であっても、そこで実際に取り組む仕事ごとに必要となる知識や技能は異なることがあると思います。そのような状況下でも、知識や技術を仕事をしながら素早く身につけられるように、「仕事の覚え方(適用力)」を確立しておくことが大切なのです。 Bの「協調性、積極的等、職務遂行に当たり、各個人が保持している思考特性や行動特性に係るもの」はどうでしょうか? これは、未知の課題やトラブルに合った場合などの対処能力を指しています。 例えば、転職して未知の課題を扱うことがあった場合、自分で解決する力も必要ですし、新しい環境のメンバーに協力を求めるスキルも必要です。大きなプロジェクトでは、メンバーと積極的に協業し、ゴールを目指して様々な課題を乗り越える力が必要です。ポジションによっては、部下を任されるケースもあるでしょうから、コーチングスキルなども身についておく必要があります。 エンプロイアビリティに必要な能力は、どこで何年働いたかではなく、そこでどのような知識を蓄え、どのような成果を上げる事ができるようになっているかであり、専門能力、コミュニケーション能力、対人関係構築能力など、座学だけでは身につけがたいものを、実際の仕事を通して、スキルとして習得していくことが大切です。 日常の中で、鍛えられる専門性を明確にし、それを職務に落とし込み、コミュニケーション能力を磨いたり、プレゼンテーションスキル、傾聴スキルを身につけ、仕事を円滑に進めていくために、対人関係のスキルに関しても高めていくとよいでしょう。 最後に エンプロイアビリティを強化するためには、何よりも、常に自分の舵をしっかりとり、目標を意識しながら職務を遂行していくことが大切です。そのために従業員の個人は常に自身のキャリアデザインを念頭に置いた上でのエンプロイアビリティの向上のための努力が求められます。 また、社員が自らの価値を分析し、将来も含めた労働市場に関する予測を行い、専門スキルの獲得や自己志向性の理解とキャリア戦略を駆使してエンプロイアビリティを高めれば、その支援を行うことが業績や組織成長につながります。 このように、企業側にとっても従業員のエンプロイアビリティを伸ばせるような環境を整えてあげることで、自社の労働力の向上が期待できるようになるのです。 最後までお読みいただきありがとうございました。
- コンピテンシーとは(その1)
コンピテンシーとは、「高業績を上げる人」に共通してみられる行動特性のことを指します。人材教育の現場では、高業績者、つまりハイパフォーマーの行動特性をまねることで、社員のパフォーマンスをアップしようという取り組みが行われています。また、人事評価基準としても「コンピテンシー」の概念が注目されています。 今回のコラムでは、「コンピテンシーモデル」や「コンピテンシーマップ」の作り方などを絡めながら、コンピテンシーについてご説明します。 目次 コンピテンシーとは できる人とはどういう人か? コンピテンシーモデルとは コンピテンシーはハイパフォーマーへの「行動インタビュー」から探す 最後に コンピテンシーとは 「コンピテンシー」という言葉は英語の「competency」を指します。名詞である「competency」の訳は「適格性」を意味し、その形容詞である「competent」とは「有能な、能力のある」という意味します。人材に使う場合には「一人前」とか「仕事を任せられる」というニュアンスで使われます。そこから、コンピテンシーとは、「高い業績に結び付く行動や思考の特性」のことを意味するようになりました。 コンピテンシーの考え方の起源は、1970年代に米国ハーパード大学のデイヴィッド・マクレランド教授( David McCleland, Ph.D.)の研究によるものです。デイヴィッド・マクレランド教授は、「達成動機」や「リーダーシップ」の研究で有名です。 1973年に国務省の依頼で、「学歴や知能レベルが同等の外交官(外務情報職員)が、駐在期間に業績格差が付く理由はなぜか」という調査をおこないました。 その結果、 学業成績や知能指数は外交官の業績の高低との間には顕著な相関関係は認めらない 外交官の職務成功確率の高い人物には3つの特徴的な行動特性(competence)が認められる とマクレランド教授は結論付けたのです。 つまり、「学歴や知能の差と業績の相関関係はなく、高業績者にはいくつか共通の行動特性がある」ということです。 ちなみに、高業績を上げた外交官の3つの行動特性は、下記のように報告されています。 cross-cultural interpersonal sensitivity to people from foreign cultures 異なる生活文化に対する豊かな感受性を発揮し、対人関係を巧みに行う the ability to maintain positive expectations of others despite provocation どれだけ困難な相手に対しても自制心をもって接し、建設的な人間関係を維持できる speed in learning political networks 政治的な人脈を素早く形成できる 「1」は、どんな国の相手にも人間性を尊重して接するという対人関係のスキルの高さを表します。 「2」は、その国の文化に対する理解力や感受性が優れており、環境対応力が高いことを示します。 「3」は、異国でも社交的で人的ネットワークを構築するのがうまいという、まさに外交官に必須のスキルと言えます。 おもしろいことに、入職時に行われた歴史や語学の試験の結果が高い人より、低い業績の人物ほど、のちに優秀になる人が多いという結果でした。これは「学力よりコミュニケーション力や人間性が、外交官の適性においては重要である」ということを暗に示しています。 マクレランド教授はその後の研究で、学力試験における業績が人生における業績/パフォーマンスにあまり関係ないという結論から、学力だけではなく、「仕事などで人生の成功を収める人の行動特性」を理論的かつ実務的に考えるべきとし、「competence(コンピタンス、のちにコンピテンシー)」の考え方を強調しています。 その後、コンピテンシーは米国を中心に、企業の人事における考課要素として発展したのです。 できる人とはどういう人か? コンピテンシーの定義としては、「ある職務や役割において優秀な成果を発揮する行動特性」などと説明されます。どの職場にも、高い成果を挙げる優秀な人材=高業績者(ハイパフォーマー)は一定の割合でいるはずです。同じ環境にいながら、他のメンバーよりも優れた結果を残す彼らは、周囲の社員とは異なる考え方や行動特性を持っている傾向にあります。 このハイパフォーマーのどの行動がその人を「仕事のできる社員」にしているのかを明らかにし、それを真似をして、他の社員全体の行動の質を上げていこうというのがコンピテンシーの活用です。 では、「高業績者(ハイパフォーマー)」、つまり「できる人」とはどういうタイプの人でしょうか?その人たちはほかの人とどこが違うのでしょうか? それは職場や仕事の内容にもよるかと思いますが、様々な業種で共通して必要とされてるものから考えてみます。 できる人:高業績者(ハイパフォーマー) コミュニケーション能力が高く、同僚に仕事を依頼したりするのがうまい 仕事が正確で確実にやり遂げるため、組織内の信頼や尊敬を得ている 専門分野に対してスキルアップを怠らず、新しいアイディアを持っている 情報感度が高く、常に様々な分野にアンテナを張り、業務に活かしている ビジネス上のネットワーク作りがうまい 上記のような「高業績者」の「行動特性」が「コンピテンシー」ということになりますが、これをより具体的にわかりやすくしたものが「コンピテンシーモデル」です。 コンピテンシーモデルとは 上記のような「できる人の行動特性」は、業種や職場環境によって微妙に違いがあって当然です。企業によって重みづけも異なります。 ハイパフォーマーに共通する行動・思考様式を具体的な言葉でまとめたものが「コンピテンシーモデル」であると説明しましたが、そもそも、コンピテンシーの定義には学術的に確定したものはなく、研究者やコンサルティング会社などが、それぞれの考え方を「コンピテンシーモデル」としてまとめ発表しているという状況です。 よく見かけるものは以下のようなものがあります。 1.コミュニケーションスキルが高い 他人と円滑に人間関係を構築する能力に長け、ノンバーバルなコミュニケーションが可能な人です。知人や同僚、顧客などと個人的な関係を作り出し、維持し、発展させる力があります。 具体的には、「共感する力」、「感情を効果的にコントロールする力」などのスキルを持った人です。 2.知識や情報を活用する能力 様々な状況において、知識や情報等を効果的に活用する力があります。情報の本質について、様々な状況・条件を考慮して、批判的に深く考えることができる力を持つ人です。 3.ストレス耐性 一部職種では特にストレス耐性や我慢強さを重視されています。その他の能力を持っていても、ストレス耐性がないと仕事が続かないためです。高いストレス耐性は仕事を進める上で必要なコンピテンシーです。 4.自律的に行動する能力 近年、企業が特に力を入れているのが「自律型社員の育成」です。そのために、自律している人をコンピテンシーモデルとして可視化させる試みが盛んにおこなわれています。自律しているとは、明らかな自己概念を伴い、意思を持った行為を行えるなどです。 このほかにも、細かく細分化して「テクノロジーを活用する能力」「言語,記号,テクストを相互作用的に用いる力」「利害の対立を御し、解決する能力」「権利、利害、責任、限界、ニーズを表明する能力」など、様々なコンピテンシーモデルの定義があります。 コンピテンシーモデルは小さな単位であればあるほど、実際の仕事の行動モデルとして反映されやすくなります。また、職種や職階などにより、重視される項目が異なります。例えば、金融関係では「知識や情報を活用する能力」が重視されますし、消費者と直接やりとりする場合など、「ストレス耐性」が高くないとダメな職種も多くあります。企業風土としてストレス耐性が要求されるところもあるかもしれません。いやな話ですが。 コンピテンシーはハイパフォーマーへの「行動インタビュー」から探す 実際にコンピテンシーモデルを作成する場合は、まず各グループのハイパフォーマーを見つけて、「行動インタビュー」を行う必要があります。モデル像に偏りを作らないためにも、複数のハイパフォーマーに行動インタビューを実施しましょう。 成功事例などを取り上げて、その成功が「どのような状況で、どのように行動したか」によるのかを聴取します。こうしてインタビューから集められた行動例を整理し、コンピテンシーモデルを作成するための「高い業績に結び付く行動・思考」をまとめます。 一時的な成功だけでなく、「普段からどのような思考で生活しているか?」「ピンチやトラブルに直面したときに、どう行動するか?」など、より細かくすることで、成功時の行動特性の裏付けがわかってきます。ポリシーではなく具体的な行動事実を拾うのがポイントです。そのため、ストーリーで追っていきます。したがってそれなりに時間がかかる作業です。 こうしてインタビューからハイパフォーマー特有の「職務行動・意識」がわかってきます。 例えば、業績の良い営業マンの「職務行動・意識」としては下記のような特性が得られます。 業績の良い営業マンの「職務行動・意識」 「達成思考」が強く、数字を常に意識している 「対人影響」が強く、話すのではなく、影響を与える力がある 「顧客思考」が強く、顧客からの質問事項を一生懸命に調べ対処する、その場しのぎをせず、ごまかさない これに対して、業績の悪い営業マンの「職務行動・意識」は、相対する結果が出てきます。 業績の悪い営業マンの「職務行動・意識」 成果よりも顧客と話すことを楽しみ、やたらと知識をひけらかす 顧客の質問にきちんと対応しない(口先でごまかす) 数字に関心が低く、安易に値引きなどを行う 自分で手を動かさず、部下などに作業をさせる 他の例として、成果の出る良い開発職の「職務行動・意識」では下記のような特性が報告されています。 成果の出る良い開発職の「職務行動・意識」 「達成思考」が強く、障害や問題を乗り越えることを苦にしない プロセスより成果を執拗に追求する 「分析的思考」が強い 「対人影響」が強く、関係部署や上司、顧客の了解を得る事の重要性を意識している これに対して、成果の出にくい開発職の「職務行動・意識」は下記の通りです。 成果の出にくい開発職の「職務行動・意識」 実作業にのめり込みすぎて、パソコンの前から動かない 成果よりもプロセスに関心があり、結局は自分が楽しんでいる 最後に、管理職についても見てみましょう。 業績の良い管理職の「職務行動・意識」 「達成思考」が強く、目標達成に立ちはだかる諸問題を解決していく 「分析的思考」が強く、明確な方針、戦略を打ち出す 「対人影響」が強く、上司、関連部門への一定の影響を与える 方針を守らせることに真剣になる 業績の悪い管理職の「職務行動・意識」 部下を成長させることがへた 汗を流して率先垂範、走り回って何もかも一人でやってしまう 即断即決だが、その場対応の泥縄なことが多い 前例や手続を重視しがちで、予測可能な安定的な行動を好む 「率先垂範」タイプが、「結局何でも一人でやって部下を育てない」というのはよく耳にしますね。 最後に ハイパフォーマーの強いコンピテンシーは「本人にとっては当然」のことなので、自覚していないケースもあります。そのため、行動インタビューは、多少「引き出す」技術がいる作業です。引き出しにくい場合は、アンケート集計方式の360度評価などと組み合わせるのも良いかと思います。また、コンピテンシー評価や検査を専門的な外部コンサルタントに委託し、コンピテンシーモデルの素案を作ってもらっても良いです。 少し長くなりましたので、続きは次回「コンピテンシーとは(その2)」でご説明したいと思います。 最後までお読みいただきありがとうございました。
- eラーニングの歴史のザックリとした理解
今回は肩慣らしにeラーニングの歴史をザックリと振り返ってみたいと思います。 目次 学習形態の変遷 eラーニングの「3つのメリット」 「人材教育のIT革命」からのリーマンショック 「eラーニング」業界は第二の発展へ 最後に 学習形態の変遷 「eラーニング」のベースとなった「CBT(コンピューター・ベースド・トレーニング)」は1980年代にはアメリカの大学を中心に行われていました。この時の教材はCD-ROMで配布する形態が主流でした。そうなると、配布コスト、配布後の内容修正のむずかしさ、学習進捗の一括管理の難しさなど、パッケージメディアならではの課題は多く、一般的な普及というレベルには至りませんでした。 この時代のCBTを「eラーンング」に含めるかどうかは意見が分かれますが、このような「オフライン」から、ネットなどを介した「オンライン」に変遷していくことが大切な認識です。 「eラーニング」として2000年あたりに中心となっていたのは「インターネット」、「パソコン」、そしてこれらの少し前から利用されていた「衛星通信」「ISDNテレビ会議」といったITを活用した教育研修でした。 呼び方も様々で「WBT(ウェブ・ベースド・トレーニング)」や、変わったのだと「サイバー・ラーニング」「バーチャル・ラーニング」なんて少し大げさな呼称を使う人もいました。それまで「遠隔学習」の中心だった「通信教育」と区別して「eラーニング」とまとめてた感があります。 この頃のeラーニング技術はアメリカの大学で研究され、IBM、シスコシステム、オラクルなどのIT企業で導入され、高いコスト削減と研修効果の向上を実現しました。 eラーニングの「3つのメリット」 この当時の「eラーニング」の「ウリ(メリット)」は、下記の通りでした。 1.いつでもどこでも学べる ネット経由で教材を利用することにより、学習者が学ぶ時間(タイミング)や場所を好きな時間に行えるということです。また、教材の提供スピードも上がり、迅速な研修ができるというのも当時は画期的でした。また、集合研修のように規模の理由で「学習者のレベルをおおざっぱに集める」とこなく、自分に合ったレベルを選べるのも細かな点ですが大切です。 2.研修費用のコストダウン 「リアル」の研修と比較し、ロケーションを選ばないので「交通費」や「宿泊費」など、教育研修にかかる費用をカットできる点です。地域別に複数回講師を呼ばなくて良いというのも研修担当者にとっては助かったのではないでしょうか。 3.音声やアニメーションなどマルチメディアを使った教材による学習効果のアップ 「動画」や「Flashアニメーション」などでのわかり易さが、当時主流だった「書籍教材」と比較して理解度が高いと認識されてました。SCORMという「eラーニング」のための、教材規格も制定され、「学習履歴の管理」という面にも意識が向いてきました。 「人材教育のIT革命」からのリーマンショック やがてブロードバンドが進み、動画の配信も可能になり、さらにLMSなど、学習進捗管理の機能開発が進んで「効果が見えやすく」なると、企業などで「eラーニング」の地位はグッと上がっていきます。この時の「eラーニング」は「人材教育のIT革命」としてもてはやされ、市場規模は年率70%以上の伸びで推移しました。 しかしながら、企業の「eラーニング」を使った人材育成の投資も増え、ベンチャーが新しい技術開発にしのぎを削っているなか、リーマンショックが起こります。 リーマンショックの影響で企業の教育費は抑えられ、「eラーニング」業界にも冬がやってきました。 投資の減少による売り上げ減少だけでなく、SCORMを使ったLMSシステムが乱立し、SCORM規格外の独自拡張などで足並みも揃っていなかったため、業界自体が軸を失い、数々のベンチャーが撤退していきました。 「eラーニング」業界は第二の発展へ リーマンショックによる冬の時代にも、インターネットを中心とした技術分野は進歩し続け、その進歩に追従するように「eラーニング」業界でもコツコツと新しいツールは開発され続けます。 この冬の時代に固定回線のブロードバンド化は確立し、次なる課題のモバイル環境でのブロードバンド化も進みました。 やがて冬が明け、企業の教育への投資が徐々に上がり出すと、「eラーニング」業界は第二の発展に向かって動き出します。 第二期では、eラーニングの「教育効果」が焦点になります。「教育効果」を上げるための「仕掛け」の研究が進みます。 キーワードとしては「インストラクショナルデザイン」「SNS」「モバイル・ラーニング」「ブレンデット・ラーニング」「ゲーミフィケーション」「TinCan」などです。 詳細は、各キーワードごとに別の回でご紹介しますが、ザックリと解説するとこのような感じです。 「インストラクショナルデザイン」は 「ID(Instructional Designの略)」と呼ばれ、eラーニングの学習効果を上げるためにシステム工学的手法が導入されます。 「SNS」はツイッターやFacebookなどSNSを使って同じ学習目標を持つ仲間と学習を進め、相互に教え合い、離脱を防ぐという利用方法です。 「モバイル・ラーニング」はスマホやタブレットを使ったモバイルでの学習環境の技術。 「ブレンデット・ラーニング」は対面学習、オンライン学習、両者の良い所を組み合わせることにより、インタラクティブ性の高い複合型授業で学習効率を上げる手法。 「ゲーミフィケーション」は「ゲーム理論」を使った教育手法。 「TinCan」はSCORMに変わる新たなLMSなどの規格です。 第二期は現在もまだ続いており、これからも新しい技術や教育手法は登場してくると思います。 最後に 以上、非常にザックリではありますが、eラーニングの歴史をまとめさせていただきました。 ここで述べなかったことも今後の連載で触れていきたいと思います。 最後までお読みいただきありがとうございました。





