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パワハラ対策とは?企業に義務付けられた防止措置と具体例を解説

8月31日
読了時間: 28分

2022年4月からパワハラ防止法が全ての企業に義務化され、自社の対策が十分か不安に感じている担当者の方も多いのではないでしょうか。

パワハラ対策は、単に法律を守るだけでなく、従業員が安心して働ける環境を整え、生産性を向上させる上でも不可欠です。


この記事では、厚生労働省の指針に基づいたパワハラ防止の4つの義務を網羅し、法的リスクを回避しつつ健全な職場環境を構築するための具体的なステップを、事例を交えて解説します。


株式会社レビックグローバルは、一般社団法人日本アンガーマネジメント協会の運営会社です。

アンガーマネジメントの研修プログラムでは、「感情のマネジメント」を軸に、良好な人間関係と組織の活性化を促します。これにより、心理的安全性の向上と健康経営の実現をトータルにサポートいたします。

サービスの詳細については、公式ページをご覧ください。





目次





そもそもパワハラとは?厚生労働省が定義する3つの要素を理解する


職場におけるパワーハラスメントとは、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為を指します。

この定義は、以下の3つの要素を全て満たすものとされています。

これらの要素を正確に理解することが、適切なパワハラ対策の第一歩となります。



優越的な関係を背景とした言動であること


「優越的な関係」とは、単に役職の上下関係だけを指すものではありません。

例えば、特定の業務に関する知識や経験が豊富な同僚や部下が、その優位性を背景に協力しない、あるいは不適切な言動を行うケースも含まれます。

また、集団による行為で、抵抗や拒絶が困難な状況もこの関係性に該当します。


このように、抵抗や拒絶が難しい関係性が言動の背景にあることが一つ目の要素です。



業務上必要かつ相当な範囲を超えていること


業務上の指導や注意が、その目的を逸脱し、社会一般の常識に照らして到底許容できないレベルに達している状態を指します。

例えば、業務上のミスに対して人格を否定するような暴言を吐いたり、長時間にわたり執拗に叱責したりする行為がこれにあたります。

業務上の指導との線引きが難しい点ですが、その言動に業務上の必要性があるか、その手段や態様が妥当かどうかが判断基準となります。



労働者の就業環境が害されること


パワハラ行為によって、被害を受ける労働者が身体的または精神的に苦痛を感じ、職場で能力を十分に発揮できなくなるなど、就業する上で見過ごせないほどの支障が生じる状態を指します。

特定の個人のみが不快に感じるだけでなく、その行為によって職場の秩序が乱れたり、他の従業員の業務遂行に悪影響が及んだりする場合も「就業環境が害される」と判断されます。

これら3つの要素を満たす具体的な言動は、次に示す6つの類型に分類されます。



パワハラに該当する6つの言動類型と具体的な行動例  


厚生労働省は、職場におけるパワハラとして代表的な言動の類型を6つに分類しています。

ただし、これらの類型に当てはまらないからといってパワハラではないとは限りません。

あくまで代表的な事例として理解し、個別の事案がパワハラの3要素を満たすかどうかを慎重に判断する必要があります。


ここでは、6つの類型ごとに具体的な行動例を解説します。



類型1:身体的な攻撃


暴力によって相手の身体に危害を加える行為です。

これは最も分かりやすく、悪質なパワハラ類型と言えます。

具体的には、殴る、蹴る、身体を突き飛ばす、物を投げつけるといった行為が該当します。

たとえ相手が怪我をしなかったとしても、これらの行為は許されるものではなく、場合によっては暴行罪や傷害罪といった刑事罰の対象にもなり得ます。



類型2:精神的な攻撃


脅迫や名誉毀損、侮辱、ひどい暴言など、相手の人格や尊厳を傷つける言動を指します。

他の従業員の前で無能呼ばわりする、長時間にわたり執拗に叱責する、威圧的な言動で恐怖を与えるといった行為がこれにあたります。

これらの行為は、被害者に深刻な精神的苦痛を与え、うつ病などの精神疾患を引き起こす原因ともなり得ます。



類型3:人間関係からの切り離し


特定の従業員を意図的に孤立させ、職場で不利益を被らせる行為です。

具体的には、一人だけ別の部屋に席を移す、忘年会などの社内イベントに意図的に声をかけない、業務上必要な連絡をしない、挨拶をしても無視するといった行為が該当します。

このような行為は、被害者の疎外感を深め、業務の遂行を困難にさせます。



類型4:過大な要求


業務上明らかに不要なことや、到底遂行不可能な業務を強制する行為を指します。

例えば、新入社員に十分な教育を行わないまま到底達成不可能な営業ノルマを課す、他の従業員の業務まで押し付ける、業務とは無関係の私的な雑用を強制するといった過大な要求がこれにあたります。

これは、意図的に相手を追い詰めるための手段として用いられることがあります。



類型5:過小な要求


過大な要求とは逆に、本人の能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事しか与えない、あるいは全く仕事を与えない行為です。

例えば、営業職として採用された従業員に一日中シュレッダーがけだけをさせる、専門職の従業員に誰でもできるような雑務しか命じないといった行為が該当します。

これは、従業員の働く意欲を削ぎ、自主的な退職に追い込む目的で行われることもあります。



類型6:個の侵害


私的な事柄に過度に立ち入ったり、プライバシーを侵害したりする行為を指します。

交際相手や休日の過ごし方について執拗に尋ねる、思想・信条を理由に不利益な取り扱いを示唆する、個人の性的指向や病歴などの機微な情報を本人の許可なく他の従業員に暴露するといった行為がこれに該当します。

業務上の関係性を超えた干渉は許されません。


企業でパワハラ問題が起きる背景には、単なるルールの未整備だけでなく、より根深い原因が存在します。



【関連記事のご紹介】

ハラスメントハラスメント(ハラハラ)については「ハラスメントハラスメント(ハラハラ)とは?正当な指導とパワハラの違い、具体例と対策で詳しく紹介しています。

また、カスタマーハラスメント(カスハラ)については「カスタマーハラスメント対策の義務化|企業が今すぐ準備すべき4つのこと」で詳しく紹介しています。



2人に1人がパワハラを経験|パワハラ対策を形骸化させないためには


一般社団法人日本アンガーマネジメント協会の最新調査(2025年12月発表)では、ハラスメント経験者は7割以上に達し、2人に1人(53.6%)がパワハラ被害を経験しているという衝撃的な実態が明らかになりました。






多くの企業がパワハラ対策の重要性を認識しているにもかかわらず、問題が後を絶たないのはなぜでしょうか。

その根本には、単にルールを設けるだけでは解決できない、人の感情や組織内のコミュニケーションといった根深い問題が存在します。



ルールだけでは防げない「怒りの感情」のコントロール問題


パワハラ行為の多くは、加害者のコントロールできない「怒り」の感情から生まれます。

たとえ企業がパワハラを禁止するルールを就業規則に明記し、罰則を設けても、衝動的な怒りを抑えられない個人がいる限り、問題の根絶は困難です。

この「怒りの感情」と上手に付き合うための心理トレーニングがアンガーマネジメントであり、パワハラ防止研修においても重要な要素となります。

根本的な解決には、個々人が自身の感情を理解し、適切に管理するスキルを身につける必要があります。










※アンガーマネジメントアンガーマネジメントパワーハラスメント防止講座は、アンガーマネジメントファシリテーター(AMFT)資格取得後にお申し込み可能




コミュニケーション不全がパワハラの温床になるメカニズム


職場のコミュニケーションが不足している組織では、パワハラの温床が生まれやすくなります。

上司と部下の間での認識のズレ、同僚間の些細な誤解や不満が、対話によって解消されないまま蓄積していくからです。

このような風通しの悪い環境では、一方が「指導」のつもりで行った言動が、相手には「攻撃」と受け取られ、問題が深刻化しがちです。


健全なコミュニケーションを通じて、互いの価値観や考えを理解し合う土壌を作ることが、パワハラを未然に防ぐ上で不可欠です。

こうした問題を背景に、法律は全ての企業に対して具体的な防止措置を講じることを義務付けています。



パワハラ防止法で全企業に義務付けられた4つの必須対策


2022年4月1日から、改正労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)により、中小企業を含むすべての企業に対して、職場におけるパワーハラスメントを防止するための措置を講じることが法律で義務化されました。

企業が必ず実施しなければならない対策は、大きく分けて以下の4つです。

これらの措置を講じていない場合、行政による助言・指導、さらには勧告の対象となる可能性があります。



対策1:事業主の方針を明確化し全従業員に周知・啓発する


企業としてパワハラを断固として許さないという方針を明確にし、それを管理監督者を含む全従業員に周知・啓発することが求められます。

具体的な取り組みとしては、就業規則や服務規律にパワハラの禁止と処分に関する規定を設けること、社内報やポスター、イントラネットなどで方針を繰り返し周知すること、そしてパワハラ防止に関する研修を実施することなどが挙げられます。

これにより、パワハラは許されない行為であるという組織全体の共通認識を醸成します。



【関連記事のご紹介】

ハラスメント研修の目的と内容については「ハラスメント研修の目的と内容とは?企業が実施すべき本質的な理由と効果的な設計方法」で詳しく紹介しています。



対策2:相談に適切に対応できる相談窓口を設置する


従業員が安心してパワハラに関する相談ができる体制を整備する必要があります。

相談窓口を形式的に設置するだけでなく、その存在を全従業員に周知し、実際に機能させることが重要です。


窓口は人事部などが担当する社内窓口のほか、弁護士や専門のカウンセラーといった外部機関に委託する方法もあります。

相談担当者には、内容を中立的な立場で聴き、相談者のプライバシーを守りながら適切に対応するスキルが求められます。



対策3:パワハラ発生後は迅速かつ適切に対応する


実際にパワハラの相談があった場合、またはその疑いが生じた場合に、迅速かつ適切に対応する体制を整えておく必要があります。

具体的には、まず相談者や行為者などから事実関係を迅速かつ正確に確認します。


パワハラの事実が確認できた場合は、速やかに被害者に対する配慮の措置と、行為者に対する懲戒処分などの措置を適正に行わなければなりません。

また、再発防止策を講じることも重要です。



対策4:相談者のプライバシー保護と不利益な取り扱いを禁止する


相談者が安心して窓口を利用できるよう、相談者のプライバシーを保護するための措置を講じ、その旨を従業員に周知することが義務付けられています。

相談内容や関係者の個人情報が漏洩しないよう、情報管理を徹底する必要があります。


また、パワハラの相談をしたこと、あるいは事実関係の調査に協力したことなどを理由として、相談者や協力者に対して解雇や降格、減給といった不利益な取り扱いをすることも法律で固く禁止されています。


これらの対策を実効性のあるものにするためには、特に現場の管理職が悩む「業務指導」との境界線を明確にすることが不可欠です。



パワハラと業務指導の境界線はどこか|許される指導とNG言動の事例


パワハラ対策を進める上で、多くの管理職が直面するのが「どこまでが正当な業務指導で、どこからがパワハラになるのか」という境界線の問題です。

この線引きが曖昧なままだと、管理職は指導を躊躇してしまい、部下の育成や組織の生産性向上に支障をきたす恐れがあります。

重要な判断基準は、その言動が「業務上必要かつ相当な範囲」で行われているかどうかです。


ここでは、具体的な仕事の事例をもとに、パワハラと判断されやすいNGな指導と、適切とされる指導の例を解説します。



パワハラと判断されやすいNGな指導例


以下のような指導は、業務上の必要性や相当性を欠き、パワハラと判断される可能性が高い事例です。

人格否定:「君は本当に使えないな」「小学生でもできるぞ」など、能力や人格を否定する暴言を吐く例。

公開叱責:他の従業員が見ている前で、大声で威圧的に叱りつけ、晒しものにする例。

過剰な責任追及:一度のミスに対して、数時間にわたって執拗に問い詰める、あるいは始末書を何十回も書き直させる事例。


目的が不合理な命令:明確な業務目的がなく、罰として資料の丸写しや長時間の単純作業を命じる事例。



業務上適切と判断される指導の具体例


一方で、以下のような指導は、業務上の必要性があり、その方法も相当であるため、正当な業務指導と判断されやすい事例です。


  • 具体的で建設的な指摘:提出された資料の不備について、「ここのデータが古いから、最新のものに修正して」と具体的に指示する例。

  • 段階的な指導:繰り返し同じミスをする部下に対し、最初は口頭で注意し、改善が見られない場合は面談を設定するなど、段階的に指導を強める例。

  • プライバシーへの配慮:周囲に他の従業員がいる場所ではなく、会議室など個室で一対一で注意・指導を行う事例。

  • 明確な目的を持った指示:スキルアップを目的として、少し難易度の高い業務を任せ、必要なサポートを行う事例。



【関連記事のご紹介】

部下の上手な叱り方については「部下の上手な叱り方とは?ハラスメントを防ぎ、やる気と成長を引き出す指導のコツ」で詳しく紹介しています。


このように、指導とパワハラの境界を理解した上で、実際に相談が発生した場合の対応手順を知っておくことが重要です。





パワハラ相談が発生した際の対応手順|解決までの全体像


実際に従業員からパワハラの相談が寄せられた場合、企業は迅速かつ慎重に対応する必要があります。

対応を誤ると、問題がさらに複雑化し、従業員の離職や訴訟リスクにつながる可能性もあります。

ここでは、相談受付から問題解決、再発防止までの一連の流れを5つのステップに分けて、それぞれの段階で企業が取るべき行動を具体的に解説します。



ステップ1:相談窓口での初期対応とプライバシー保護の徹底


パワハラ対応の第一歩は、相談者が安心して話せる環境を整えることです。

相談窓口の担当者は、まず相談に来た従業員の勇気を認め、話をじっくりと聴く姿勢を示さなければなりません。

この段階で最も重要なのは、相談内容に関する守秘義務を徹底し、相談者のプライバシー、個人の情報を固く守ることを明確に伝えることです。


これにより、相談者は二次被害の不安なく、事実を話すことができます。



■確認事項:相談者の意向と事実関係の整理


初期の面談では、まず相談者が「今後どうしたいか」という意向を確認します。

会社に事実調査を正式に依頼したいのか、それとも単に話を聞いてほしいだけなのかによって、その後の対応は大きく異なります。

その上で、「いつ、どこで、誰から、何をされたか」といった事実関係を、感情的な部分と切り分けながら客観的に整理していきます。


この際、記録を残すことの許可を相談者から得ておくことも重要です。



■よくある失敗:安易な憶測や個人的な見解を伝える


相談担当者が避けなければならないのは、不確かな情報に基づいて「それはパワハラだ」と断定したり、「よくあることだ」と問題を軽視したりすることです。

また、自身の経験に基づく個人的な見解やアドバイスも、相談者を混乱させる原因となり得ます。


この段階では、あくまで中立的な立場で事実を聴取し、共感を示しつつも、憶測で話を進めないことが鉄則です。



ステップ2:中立的な立場での事実関係の調査


相談者から正式な調査の依頼があった場合、企業は中立的な立場で事実関係の調査を開始します。

この調査の目的は、どちらか一方の主張が正しいかを決めることではなく、客観的な事実を可能な限り正確に把握することです。

人事部門やコンプライアンス部門などが中心となり、予断や偏見を持たずに調査を進める必要があります。



■確認事項:相談者と行為者の双方からヒアリングを行う


調査の基本は、相談者(被害を訴える者)と行為者(加害者とされる者)の双方から個別にヒアリングを行うことです。

それぞれの主張に食い違いがある点などを洗い出し、事実を多角的に検証します。


面談の際は、高圧的にならないよう配慮し、あくまで事実を確認するための場であることを明確に伝えることが、協力的な姿勢を引き出す上で重要です。



■補足情報:第三者からの情報収集も必要に応じて検討する


相談者と行為者の主張が大きく食い違う場合など、必要に応じて、パワハラ行為を目撃した可能性のある同僚など、第三者からも情報収集を行います。

ただし、第三者へのヒアリングは、調査範囲が不必要に広がることで噂や憶測を生み、関係者のプライバシーを侵害するリスクも伴います。

そのため、対象者を慎重に選び、守秘義務を徹底した上で実施することが不可欠です。



ステップ3:調査結果に基づくパワハラの有無の判断


収集した情報や証拠を基に、相談のあった事案が職場のパワーハラスメントに該当するかどうかを判断します。

この判断は、その後の企業の対応を左右する非常に重要なプロセスであり、客観性と公平性が強く求められます。

判断に迷う場合は、弁護士や社会保険労務士などの外部専門家の意見を求めることも有効な手段です。



■確認事項:客観的な証拠と照らし合わせて慎重に判断する


判断の際は、当事者や第三者のヒアリング内容だけでなく、メールの文面、録音データ、診断書といった客観的な証拠と照らし合わせることが重要です。

その上で、厚生労働省が示す「3つの要素(優越的な関係、業務の適正な範囲を超える、就業環境を害する)」をすべて満たすかどうかを、個別の事情を考慮しながら慎重に検討します。



■よくある失敗:事実確認が不十分なまま結論を急ぐ


調査プロセスで最も避けるべき失敗は、事実確認が不十分なまま結論を急いでしまうことです。

例えば、相談者の主張のみを鵜呑みにして行為者を処分したり、逆に行為者の「指導のつもりだった」という弁解を安易に受け入れたりすると、後に訴訟などのトラブルに発展しかねません。

客観的な証拠に基づかない判断は、企業の対応の正当性を揺るがす原因となります。



ステップ4:行為者への措置と被害者への配慮の実施


調査の結果、パワハラの事実が確認された場合、企業は行為者に対して適切な措置を講じるとともに、被害を受けた従業員への配慮を速やかに行わなければなりません。

これらの対応は、問題の解決と被害者の救済を図るだけでなく、企業としてパワハラを許さないという姿勢を内外に示す上でも極めて重要です。



■確認事項:就業規則に則って懲戒処分などを検討する


行為者への措置は、パワハラの態様や頻度、被害の程度などを総合的に考慮し、就業規則の懲戒規定に則って決定します。

懲戒処分の種類には、けん責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇などがあります。

処分が重すぎても軽すぎてもトラブルの原因となるため、過去の判例なども参考に、会社として公平かつ妥当な判断を下す必要があります。



■補足情報:被害者のメンタルヘルスケアも忘れずに行う


被害者への配慮として、まずは行為者との物理的な距離を確保するための配置転換などを検討します。

加えて、パワハラによって受けた精神的ダメージに対するケアも不可欠です。

産業医との面談を設定したり、カウンセリングを受けられるように費用を補助したりするなど、被害者の心の回復を支援する措置を講じます。


放置すれば、うつ病などの深刻な精神疾患につながる恐れもあります。



ステップ5:再発防止策の策定と職場環境の改善


個別のパワハラ事案に対応して終わりにするのではなく、同様の問題が二度と起こらないように、組織全体で再発防止策を講じることが企業の責務です。

一つの事案は、組織が抱える潜在的な問題の氷山の一角である可能性があります。


この機会に、職場のコミュニケーションやマネジメントのあり方を見直し、より健全な職場環境への改善を目指す取り組みが求められます。



■確認事項:管理職研修や配置転換などを具体的に計画する


具体的な再発防止策としては、まず行為者に対して、自身の言動の問題点を理解させ、改善を促すための研修や指導を行います。

組織全体に対しては、管理職を対象としたハラスメント防止研修を改めて実施したり、パワハラに関する社内ルールを再周知したりすることが有効です。


また、必要に応じて、行為者の配置転換や、部門全体の人間関係を改善するための施策も検討します。



■補足情報:対策の実施状況を定期的にモニタリングする


策定した再発防止策が形骸化しないよう、その実施状況を定期的にモニタリングする仕組みも重要です。

例えば、全従業員を対象としたハラスメントに関する意識調査を定期的に実施したり、相談窓口の利用状況を分析したりすることで、対策の効果を検証し、必要に応じて新たな取り組みを追加していきます。

こうした継続的な企業の取り組みが、パワハラのない職場文化を醸成します。


これまでの対処法だけでなく、そもそもパワハラを「予防」するという観点も非常に重要です。





パワハラ予防にアンガーマネジメントが有効な理由   


パワハラ問題が発生した後の対応はもちろん重要ですが、より本質的なのは、そもそもパワハラが起きない職場環境をいかにして作るかという「予防」の視点です。

そのための有効な手段の一つとして、近年注目されているのが「アンガーマネジメント」です。


アンガーマネジメントとは、1970年代にアメリカで開発された、怒りの感情で後悔しないことを目指す心理トレーニングです。

アンガーマネジメントを学ぶことにより、怒りの感情そのものを否定するのではなく、その感情と上手に付き合い、建設的な行動につなげるためのスキルを身につけることができます。



怒りの感情をコントロールし衝動的な言動を未然に防ぐ


パワハラ行為の多くは、上司が部下のミスなどに対して抱いた「怒り」の感情を、衝動的に不適切な形で表出させてしまうことから始まります。

怒りが生まれるメカニズムを理解し、カッとなったときに冷静になるためのテクニックを学ぶことで、感情的な叱責や暴言といった衝動的な言動を未然に防ぐ効果が期待できます。


これにより、指導とパワハラの境界線を越えてしまうリスクを低減させ、予防につなげます。



多様な価値観を認め合い心理的安全性の高い職場を築く


アンガーマネジメントを学ぶメリットは、個人の感情コントロールに留まりません。

研修では、自分と他人の「べき」という価値観の違いが怒りの原因になることを学びます。

この理解は、他者の多様な価値観を認め合う姿勢を育み、職場の人間関係を円滑にします。


互いの違いを尊重する文化が醸成されることで、不要な感情的対立が減少し、誰もが安心して意見を言える「心理的安全性の高い職場」の構築に繋がります。

こうした環境は、パワハラの予防だけでなく、組織全体の生産性向上にも寄与します。



【関連記事のご紹介】

心理的安全性の高い組織を育むための方法については「心理的安全性の高め方|ぬるま湯にしない4つの方法と実践メリット」で詳しく紹介しています。



感情のコントロールから始める新しいパワハラ対策「アンガーマネジメントのプログラム」のご紹介


従来のパワハラ対策は、ルール設定や罰則強化が中心でした。

しかし、行為の根底にある「怒りの感情」そのものにアプローチしなければ、根本的な問題解決には至りません。

弊社および日本アンガーマネジメント協会が提供する「アンガーマネジメントのプログラム」は、この感情の問題に焦点を当てた新しいパワハラ予防プログラムです。


アンガーマネジメントの理論に基づき、個人の感情コントロールスキルと組織のコミュニケーション文化を同時に改善することを目指します。


弊社および日本アンガーマネジメント協会では、組織・個人の状況に応じて、2つのアプローチをご提案しています。



①組織の力を底上げする「アンガーマネジメント研修・eラーニング」


1つ目は、協会所属の講師派遣もしくはeラーニングにより研修を実施する方法です。


「アンガーマネジメントパワーハラスメント防止研修」は、アンガーマネジメントの基礎に加え、パワーハラスメント防止対策に特化したプログラムです。

本研修は、現場のリーダー層を対象としており、パワーハラスメントに関する知識を再確認するとともに、怒りがどのようなメカニズムで生じるのかを理論的に学び、自身の怒りの傾向やその衝動を抑えるための具体的なテクニックを習得します。


90分~3時間の短時間集中型で、多忙な管理職でも参加しやすく、現場ですぐに活かせる指導力・コミュニケーション力を養います。

知識を得るだけでなく、実践的なワークを通じて、明日から現場で使えるスキルを身につけ、具体的な行動変容を促すことを目的とした研修です。



■3,000社以上の導入実績|アンガーマネジメント研修が選ばれる理由


日本アンガーマネジメント協会の研修プログラムは、金融、製造、IT、官公庁など、業種や規模を問わず、これまで累計3,000社以上の企業に導入されてきました。

多くの企業から選ばれ続けている理由は、その理論の普遍性と実践性、そして企業の多様なニーズに応える柔軟なサービス提供体制にあります。

ここでは、本研修が支持される3つの具体的な理由を紹介します。



■企業の課題に合わせた研修プログラムのカスタマイズが可能


一言でパワハラ対策といっても、企業が抱える課題は様々です。

「管理職の指導方法を改善したい」「正しい叱り方が分からない」「組織全体の風通しを良くしたい」など、それぞれのニーズに対応するため、多彩な研修プログラムを用意しています。


相手の成長を促す建設的な伝え方を学ぶ「叱り方研修」や、互いの価値観の違いを理解し尊重し合う方法を学ぶ「チームビルディング研修」と組み合わせるなど、企業の課題に合わせて最適なプログラムを組み合わせ、カスタマイズして提供することが可能です。

これらのプログラムを通じて、職場のコミュニケーションの質を向上させ、パワハラの発生しにくい健全な人間関係を構築する実践的なスキルを習得できます。



■専門知識が豊富な協会公認講師による質の高い研修を提供


研修の質は講師によって大きく左右されます。

当協会には、日本のアンガーマネジメントの第一人者である安藤俊介、戸田久実をはじめ、厳しい基準をクリアした「協会公認講師」が多数在籍しています。

ビジネス経験豊富な講師陣が、専門的な知識と具体的な事例を交えながら、受講者の理解を深め、行動変容を促す質の高い研修を提供します。


講師は全員が専門の資格を有しており、安心してご依頼いただけます。










②社内講師の育成による研修の内製化


2つ目は、人事担当者や現場リーダーが「認定資格」を取得することにより、アンガーマネジメント研修を内製化する方法です。


日本アンガーマネジメント協会の「アンガーマネジメントファシリテーター養成講座」では、アンガーマネジメントの基礎から人に教えることのできるスキルまでを総合的に習得することができます。

資格取得後は、日本アンガーマネジメント協会が公認するテキストやカリキュラムを活用し、社内でアンガーマネジメント研修を内製化することが可能になります。


さらに、アンガーマネジメントファシリテーター資格取得後に受講可能なステップアップ講座として、「アンガーマネジメントハラスメント防止アドバイザー養成講座」をご用意しております。

こちらを受講していただくことで、アンガーマネジメントを活用したハラスメント防止対策を体系的に伝えるスキルを取得することができ、ハラスメント防止対策に特化した研修についても内製化することが可能になります。



■組織の状況に応じた柔軟な研修運営が可能


社内講師を活用することで、外部講師との日程調整作業を軽減し、スケジュール調整が容易になるだけでなく、自社の他プログラムや別の内容の社内研修と組み合わせて実施するなど、柔軟な対応やカスタマイズが可能になります。


さらに、自社ならではの価値観や、職場における具体的な課題・業務実態に即した事例を取り入れた研修を実施できるため、受講者の理解が深まり、高い定着効果が期待できます。



■継続実施による組織文化の醸成・習慣化


パワーハラスメント防止対策を組織文化として定着させるためには、継続的な取り組みが不可欠です。


社内の資格保有者が携わり、継続的に研修を実施することで、感情のコントロールに関する共通理解が組織内に浸透し、ハラスメント防止や心理的安全性の高い組織風土の定着が促進されます。

さらに、社内で研修を継続して実施できる仕組みを構築することで、実施回数を重ねるほど1回あたりの費用を削減でき、長期的な教育投資としての高い対費用効果が見込めます。






※アンガーマネジメントアンガーマネジメントパワーハラスメント防止講座は、アンガーマネジメントファシリテーター(AMFT)資格取得後にお申し込み可能








③パワハラ行為者の行動変容を促す「アンガーマネジメントコンサルティング」


3つ目は、パワハラの行為者に対して、1on1のコンサルティングを実施する方法です。


「アンガーマネジメントコンサルティング」は、部下や同僚と良好な関係を築くために、1on1のセッション形式で、感情マネジメントの視点からコミュニケーションの質を見直していくプログラムです。


自分自身の感情やコミュニケーションの傾向は、客観的に把握しマネジメントをすることが難しく、とりわけパワハラの行為者は、一般的な集合研修ではなかなか「自分事」として捉えきれない場合も多くあります。

本プログラムでは、日本アンガーマネジメント協会認定のコンサルタントがマンツーマンで伴走します。社内では言いづらい個人の怒りの傾向や周囲への影響を客観的にフィードバックし、素直な内省とパワハラを繰り返さない行動変容へ導きます。



■個別の課題や状況に応じて完全カスタマイズ


本プログラムでは、対象者の職位や性格、業務環境に合わせて具体的なビジネスシーンを想定し、単なるコンサルティングでは終わらず、実務での行動変容にこだわった指導を行います。

「怒り」の傾向や、進捗状況、セッションへの取り組み姿勢なども、人それぞれであり、対象者に合わせて完全カスタマイズされた内容で進めていきます。



■自己研鑽と組織の心理的安全性の向上


本プログラムは、単なる「ペナルティや指導」や叱責ではなく、本人のキャリア開拓や会社貢献につながる「自己研鑽」の機会として位置づけています。


このアプローチにより、本人の意欲や心理的安全性を損なうことなく前向きな改善を引き出すことが可能です。

結果として、対象者が組織の「リスク」から「原動力」へと生まれ変わり、誰もが活き活きと能力を発揮できる、心理的安全性の高い職場環境の実現につながります。






まとめ


本記事では、パワハラ対策について、その定義から法律で定められた企業の義務、そして具体的な予防策までを網羅的に解説しました。

パワハラは、「優越的な関係を背景に、業務の適正な範囲を超えて、就業環境を害する行為」と定義され、企業にはその防止措置を講じる法的義務があります。


対策を怠れば、従業員の心身の健康を損なうだけでなく、企業の社会的信用や業績にも深刻な影響を及ぼしかねません。

事後対応のフローを整備すると同時に、アンガーマネジメント研修などを通じてパワハラを未然に防ぐ予防的なアプローチを取り入れ、全ての従業員が安心して能力を発揮できる健全な職場環境を構築することが不可欠です。






パワハラ対策に関するよくある質問


ここでは、企業の担当者から寄せられるパワハラ対策に関するよくある質問とその回答をご紹介します。



パワハラ防止研修では具体的にどのような内容を学ぶべきですか?


パワハラの定義(3要素・6類型)、企業の法的義務、相談窓口の役割、指導との境界線などを学ぶ必要があります。

加えて、怒りの感情をコントロールするアンガーマネジメントのような実践的スキルを学ぶことで、単なる知識習得に終わらない、より実効性の高い研修となります。



パワハラと業務上の厳しい指導は、どこで判断すればよいですか?


「業務上必要かつ相当な範囲」を超えているかどうかで判断します。

その言動の目的が、あくまで部下の成長を促すといった業務上の正当なものであり、その手段や態様が社会の常識に照らして妥当な範囲内であれば、適正な仕事上の指導と見なされます。

人格否定や暴力は一切許されません。



社内に設置したパワハラ相談窓口を形骸化させないためには、どうすればよいですか?


窓口の存在と「相談しても不利益はない」ことを全従業員に繰り返し周知徹底することが第一です。

相談者のプライバシー保護を厳守し、相談担当者には守秘義務や中立性を保つための適切な研修を実施します。

外部の専門機関と連携し、相談しやすい選択肢を増やすことも有効な企業努力です。


さらに、社内の相談担当者に対してアンガーマネジメントファシリテーター資格の取得を推奨する企業の事例もあり、有資格者が相談に応じることで、相談者の気持ちに一段と配慮した親身な対応が実現できているという声も寄せられています。

社内の相談担当者のアンガーマネジメントファシリテーター資格の取得についても、ぜひ検討を進めてみてはいかがでしょうか?





 
 
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