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メンタル不調の予防とは?企業が取り組むべき一次予防とセルフケア支援

8月26日
読了時間: 14分


従業員のメンタル不調にどう向き合うべきか、悩んでいる人事・労務担当者の方も多いのではないでしょうか。

厚生労働省が2025年8月に公表した「令和6年労働安全衛生調査」(※1)でも、現在の仕事や職業生活に強いストレスを感じている労働者は68.3%にのぼり、メンタルヘルス不調により1か月以上の休業や退職者が出た事業所は12.8%にのぼることが分かっています。

もはやメンタルヘルス対策は一部の企業だけの課題ではなく、多くの企業が向き合うべき経営課題だと言えるでしょう。


この記事では、メンタル不調を未然に防ぐ「一次予防」の考え方と、企業が実際に導入できるセルフケア支援策を解説します。読み終える頃には、自社の一次予防の現状を整理し、次に何を検討すべきかが明確に判断できる状態を目指します。


日本アンガーマネジメント協会が提供する研修プログラムでは、従業員の「感情のマネジメント」を軸に、怒りやイライラに振り回されないセルフケア力を強化します。

これにより、メンタル不調の一次予防と、心理的安全性の高い職場づくりを通じた健康経営の実現をトータルにサポートいたします。 

サービスの詳細については、公式ページをご覧ください。

 

[出典]※1:厚生労働省、「令和6年労働安全衛生調査(実態調査)結果の概要」、https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/r06-46-50b.html ) 






目次




メンタルヘルス対策の基本「3つの予防」と「4つのケア」

 

メンタルヘルス対策を効果的に進めるためには、厚生労働省が示す「3つの予防」と「4つのケア」の考え方を理解しておくことが基本です。

これらは、不調の発生段階に応じて適切な対策を講じるための指針となります。個人のセルフケアから組織的な取り組みまで、多角的な視点から心身の健康を守る枠組みを見ていきましょう。


人事・労務担当者としては、特に「一次予防」の段階で何を仕組み化できるかが重要になります。

 


 

未然に防ぐ「一次予防」、早期発見の「二次予防」、復職支援の「三次予防」

 

メンタルヘルス対策における「3つの予防」とは、不調の段階に応じたアプローチのことです。まず「一次予防」は、メンタル不調そのものを未然に防ぐ取り組みを指し、ストレスの原因となる職場環境の改善や、従業員へのストレス教育などが含まれます。

次に「二次予防」は、不調を早期に発見し、迅速に対応することを目指す段階です。具体的には、ストレスチェックや相談窓口の設置により、不調のサインを見逃さず、重症化を防ぎます。


最後の「三次予防」は、メンタル不調で休職した従業員の職場復帰を支援し、再発を防止するための対策です。復職支援プログラムの提供などが該当します。

 

 

メンタルヘルスを守る「4つのケア」とセルフケアの重要性

 

厚生労働省は「労働者の心の健康の保持増進のための指針」の中で、事業者が推進すべき4つのケアを示しています。


1つ目は従業員自身が行う「セルフケア」、2つ目は管理監督者が部下に対して行う「ラインによるケア」、3つ目は産業医や保健師などが行う「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」、4つ目は外部の専門機関が提供する「事業場外資源によるケア」です。


これらは相互に連携して機能しますが、全ての基本となるのが「セルフケア」です。従業員一人ひとりがストレスに気づき、自ら対処法を身につけることが、メンタルヘルス対策の第一歩となります。

 

 

 

なぜメンタル不調が起きる?ストレス発生の仕組みと初期サイン

 

自分自身のケアの重要性を理解した上で、次に知るべきはメンタル不調が起こるメカニズムです。ストレスがどのようにして心身に影響を与えるのか、その仕組みを理解することで、より効果的な予防策を講じられます。

また、不調の初期サインを見逃さないことも、重症化を防ぐために不可欠です。

 

 

 

仕事のストレスはどう生まれる?(NIOSHの職業性ストレスモデル)

 


仕事におけるストレスの発生メカニズムを説明するモデルとして、NIOSH(米国国立労働安全衛生研究所)の職業性ストレスモデルが知られています。


このモデルでは、仕事の量や人間関係といった「ストレスの原因(ストレッサー)」が、個人の性格や経験、プライベートの状況といった「個人的な要因」や「仕事以外の要因」と相互に作用し、「ストレス反応」を引き起こすとされます。

このストレス反応が長期化すると、心身の疾病につながる可能性があるのです。そのため、ストレスの原因そのものを取り除く一次予防の視点が重要になります。


 

見逃さないで!従業員の「行動・精神・身体」に現れる不調の3つのサイン

 

メンタル不調のサインは、主に「行動面」「精神面」「身体面」の3つの側面に現れます。行動面のサインとしては、遅刻や欠勤の増加、仕事でのミスが目立つ、飲酒量や喫煙量が増えるといった変化が挙げられます。


精神面では、イライラしやすくなる、気分が落ち込む、何事にも興味が持てなくなるなどの状態が見られます。


身体面では、寝つきが悪い、食欲がない、頭痛や肩こりが続くといった症状が現れることが少なくありません。これらのサインは、本人だけでなく周囲の管理職や同僚も気づくことができる変化であり、早期発見のポイントになります。

 

 

特に「イライラ・怒り」は心が悲鳴をあげる前のSOS

 

多くの不調サインの中でも、特に注意したいのが「イライラ」や「怒り」といった感情です。怒りは、不安、悲しみ、焦り、孤独感といった、より根本的な感情(一次感情)が許容量を超えたときに、それらを覆い隠すために現れる二次感情である場合があります。

つまり、頻繁に怒りを感じる状態は、心の内側でネガティブな感情が限界に達し、SOSを発しているサインかもしれません。


従業員がこのサインに気づき、自分の内面と向き合えるようになることが、メンタル不調の一次予防につながります。


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セルフケア教育の効果的な切り口「アンガーマネジメント」

 

心のSOSである怒りの感情への気づきを促すセルフケア教育の中でも、特に効果的なテーマの一つが「アンガーマネジメント」です。

怒りの感情をコントロールし、ストレスを軽減するための心理トレーニングであるアンガーマネジメントは、体系立てて学ぶことで再現性のあるセルフケアスキルとして従業員に定着させやすいという特長があります。


ここでは、研修やeラーニングでよく扱われる代表的な手法を3つ紹介します。







① 衝動的な怒りをやり過ごす「6秒ルール」

 

怒りの感情のピークは、長くても6秒程度とされています。そのため、カッとなった瞬間に衝動的な言動に出るのを避け、この6秒間をやり過ごすことが有効です。


具体的には、心の中で1から6までゆっくり数えたり、その場から一旦離れたり、深呼吸を繰り返したりする方法があります。物理的に時間と空間の距離を置くことで、感情的な反応ではなく、理性的な対応を選択する余裕が生まれます。


このように、シンプルながら効果を実感しやすい手法は、研修の導入部分で扱うと従業員の関心を引きやすいポイントです。


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② イライラを生む「〜すべき」思考を手放すコツ

 

怒りの感情は、「〜であるべき」「〜すべき」という自分の中の固定観念や価値観が裏切られたときに生じやすくなります。


例えば、「部下は上司の指示にすぐ従うべきだ」と考えていると、そうでない状況に直面した際に強い怒りを感じるかもしれません。この「べき思考」を、「〜だと嬉しい」「〜だと助かる」といった、より柔軟な願望の表現に変えてみるのがおすすめです。


自分の価値観はあくまで一つであり、他者がそれに従う義務はないと理解することで、心の許容範囲が広がり、イライラを感じにくくなります。特に管理職層にとっては、部下とのコミュニケーション改善にも直結するテーマであり、研修効果を実感しやすい内容です。

 

 

③ 怒りの強さを客観視する「スケーリング(数値化)」

 

怒りを感じたときに、その感情の強さを自分の中で点数付けする「スケーリング」という手法も有効です。例えば、「今の怒りを0(全く怒っていない)から10(人生最大の怒り)で表すと何点だろう?」と自問自答します。


この作業により、自分の感情を客観的に見つめ直すことができます。「今回は3点くらいだから、それほど大きな問題ではないな」と冷静に判断できたり、怒りのレベルに応じた対処法を考えたりするきっかけにもなります。感情を数値化する習慣は、怒りに飲み込まれるのを防ぐのに役立ちます。


このように、アンガーマネジメントは個人が独学で身につけるよりも、研修という形で体系的に学ぶことで、組織全体のコミュニケーション改善やハラスメント予防にもつながりやすいセルフケア教育のテーマです。









 

 

 

職場で・日常でできるセルフケア習慣         

 

アンガーマネジメント以外にも、企業が従業員に紹介できるセルフケア習慣は複数あります。研修やイントラネットでの情報発信に活用できる内容を紹介します。


 

【職場で】適度なストレッチや有酸素運動で心身をリフレッシュ

 

長時間同じ姿勢でデスクワークを続けると、身体的な緊張が精神的なストレスにつながることがあります。仕事の合間に、肩を回したり首を伸ばしたりする簡単なストレッチを取り入れるだけでも、血行が促進され気分転換になります。


また、昼休みにオフィスの周りを軽く散歩したり、一駅手前で降りて歩いたりするなど、軽い有酸素運動を習慣づけることも効果的です。身体を動かすことは、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を抑制し、気分を高揚させるセロトニンの分泌を促すため、手軽で効果的なセルフケアです。

 


【職場で】「今の気持ちを書いてみる」でネガティブ感情を整理

 

仕事で感じたストレスやネガティブな感情は、一人で抱え込まずに外に出すことが大切です。


その一つの方法が、自分の気持ちを紙に書き出す「ジャーナリング(筆記開示)」です。頭の中で漠然と感じていた不安や怒りを文字にすることで、自分の感情を客観的に見つめ直せます。誰かに見せるものではないので、思ったことを自由に書き出すだけで構いません。


感情の整理という心の運動を行うことで、問題点が明確になったり、解決の糸口が見つかったりする効果も期待できるケア方法です。

 

 

【日常で】脳を休めるための「質の高い睡眠」を確保する

 

メンタルヘルスの維持において、睡眠は極めて重要な役割を担います。睡眠不足は、脳の疲労回復を妨げ、感情のコントロールを難しくさせます。


質の高い睡眠を確保するためには、就寝前の過ごし方を見直すことが効果的です。例えば、寝る1〜2時間前にはスマートフォンやパソコンの使用を控え、脳への刺激を減らすこと。また、ぬるめのお風呂にゆっくり浸かってリラックスしたり、寝室の照明を暗くして静かな環境を整えたりすることも、質の良い眠りにつながるセルフケアです。

 

 

【日常で】「マインドフルネス瞑想」で過去や未来の不安から離れる

 

私たちの心は、過去の後悔や未来への不安にとらわれがちです。

マインドフルネス瞑想は、意識を「今、この瞬間」に向けることで、心の平穏を取り戻すためのトレーニングです。


静かな場所で楽な姿勢をとり、自分の呼吸に意識を集中させるのが基本的な方法です。雑念が浮かんできても、それを評価せずにただ受け流し、再び呼吸に意識を戻します。1日数分でも続けることで、ストレス反応が緩和され、集中力が高まるなどの効果が報告されている有効なセルフケアです。


これらの習慣は、社内報やイントラネット、朝礼などの短い時間でも紹介しやすく、セルフケア教育の導入コンテンツとして活用できます。

 

 

企業・職場全体でメンタル不調を防ぐためのアプローチ 

 

個人のセルフケア習慣の紹介と並行して、企業や職場が組織としてメンタルヘルス対策に取り組むことが、一次予防を機能させる上で欠かせません。


厚生労働省の令和6年労働安全衛生調査(※1)によれば、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所は63.2%、うち労働者50人以上の事業所では94.3%にのぼりますが、規模が小さくなるほど取り組み率は下がる傾向にあります。


従業員が安心して働ける環境を整備し、不調を未然に防ぐための仕組みづくりが求められます。

 

 

ストレスチェックを「実施して終わり」にせず、集団分析で職場改善につなげる

 

労働安全衛生法に基づき、従業員50人以上の事業場では年1回のストレスチェックが義務付けられています(2025年の法改正により、義務化対象は将来的に50人未満の事業場にも拡大される予定です)。この制度は、従業員が自身のストレス状態を客観的に把握し、セルフケアにつなげるきっかけを提供することを目的としています。


一方で、個人結果のフィードバックだけで終わらせず、部署単位の「集団分析」を活用することも重要です。集団分析では「業務の質」「業務の量」「周囲のサポート状況」などを部署ごとに数値化でき、どこにストレス要因が偏っているかを可視化できます。


実際、令和6年調査(※1)でも、メンタルヘルス対策に取り組む事業所のうち「ストレスチェックの実施」に次いで「職場環境等の評価及び改善(集団分析を含む)」が2番目に多い取り組みとして挙げられています。

結果を衛生委員会で共有し、現場の実感と照らし合わせながら改善策を検討することで、ストレスチェックを一次予防の実効性ある起点として機能させることができます。

 

[出典]※1:厚生労働省、「令和6年労働安全衛生調査(実態調査)結果の概要」、https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/r06-46-50b.html 

 

 

セルフケア教育を「義務化」せず、自発的に取り組める環境を作る

 

企業が従業員のメンタルヘルスを支援する上で大切なのは、セルフケアを強制しないことです。


研修や情報提供を「義務」として課してしまうと、従業員は「やらされ感」を抱き、かえってストレスを感じる可能性があります。そうではなく、eラーニングやセミナーなど、従業員が自分の興味やタイミングに合わせて学べる機会を複数用意し、自発的な参加を促す環境づくりが望ましいです。

セルフケアの重要性を伝えつつも、最終的な選択は個人に委ねる姿勢が、主体的な健康管理意識を育みます。


健康経営におけるeラーニング教材については「健康経営を推進するeラーニング教材」で詳しく紹介しています。


 

セルフケアだけに頼らず、上司や産業保健スタッフに相談できる体制を整える(ラインケアの活用)

 

セルフケアだけでは対処しきれない問題に直面するケースもあるため、従業員が一人で抱え込まず周囲に相談できる体制づくりが重要です。直属の上司が相談を受けることは、ラインによるケアの一環であり、職場環境の改善につながる第一歩となります。


また、企業内にいる産業医や保健師、カウンセラーといった産業保健スタッフは、守秘義務を持つ専門家です。業務上の利害関係なく、中立的な立場で話を聞き、専門的なアドバイスを提供してくれます。


人事・労務担当者としては、これらの相談窓口の存在を従業員に周知し、実際に使われる窓口として運用していくことが求められます。

 



まとめ


メンタル不調の予防は、まず不調が起こるメカニズムと初期サインを正しく理解することから始まります。


その上で、一次予防として、ストレスチェックの集団分析活用やセルフケア教育(アンガーマネジメント研修を含む)といった仕組みづくりを進めることが重要です。

また、個人の努力だけに頼らず、ラインケアや産業保健スタッフとの連携体制を整える視点も欠かせません。


人事・労務担当者としては、従業員一人ひとりが自身の変化に気づけるよう、日頃からの情報発信と、相談しやすい環境づくりを進めていくことが、メンタルヘルス対策を機能させる鍵となります。





メンタル不調の予防に関するよくある質問



セルフケア研修はどのくらいの頻度で実施すべきですか?

 

決まった正解があるわけではありませんが、単発のイベントではなく年1回以上の定期開催を基本とし、新入社員研修や管理職昇格時など節目のタイミングに組み込むと定着しやすくなります。

あわせてeラーニングを常時視聴できる状態にしておくと、従業員が必要なタイミングで学べる環境になります。

 

 

メンタル不調の初期サインにはどのようなものがありますか?

 

メンタル不調の初期サインは「行動」「精神」「身体」の3つの側面に現れます。具体的には、遅刻や欠勤が増える、集中力が低下するなどの行動の変化、イライラや不安感が続く、気分の落ち込みといった精神的な変化、そして不眠、食欲不振、頭痛、肩こりなどの身体的な症状が挙げられます。

管理職や人事がこれらの変化に早く気づけるよう、日頃から周知しておくことが早期対応の第一歩です。

 


ストレスチェックで高ストレスと判定された従業員が出た場合、どう対応すればいいですか?

 

高ストレスと判定された従業員には、まず医師による面接指導の申し出を勧めることが基本です。面接指導は希望者のみが対象で、結果が本人の同意なく会社に共有されることはありません。


産業医などの専門家に状況を相談することで、業務の負担軽減など具体的な就業上の措置につなげやすくなります。あわせて、該当部署の集団分析結果を確認し、職場環境側に改善余地がないかも点検することをおすすめします。




 
 
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