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人材育成で大切なこと7つ|成功事例や階層別のポイント、フレームワークも解説

  • 執筆者の写真: nanaekunai
    nanaekunai
  • 10月31日
  • 読了時間: 30分
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企業における人材育成は、単なる研修や教育にとどまらず、経営戦略そのものを支える重要な要素です。

特に昨今は、人的資本経営への注目や、急速な技術変化、働き方の多様化といった背景から、従来の画一的な研修では不十分となりつつあります。

多くの企業では「社員が忙しく学ぶ時間がない」「育成担当者の指導力が不足している」「社員が自発的に学ばない」など、共通する課題が浮き彫りになっています。

これらの課題を放置すると、人材の成長は停滞し、組織全体の競争力低下につながりかねません。


本記事では、まず人材育成の現状やよくある課題を整理したうえで、育成を成功させるために大切なこと7つを解説します。

さらに、階層別に求められるポイントや実践に役立つフレームワーク、成功事例も紹介し、担当者がすぐに活用できる知見を提供します。


実際に人材育成で成果をあげている企業の事例は「事例紹介(オリックス株式会社、明治安田生命保険相互会社、ワタミ株式会社他)」で詳しくご紹介しています。


多機能型LMS「SmartSkill Campus」は、人材戦略の高度化や人的資本経営の実現を支援しています。

サービスの詳細や機能については、公式ページをご覧ください。


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目次





人材育成の現状                   


近年、企業を取り巻く環境は大きく変化し、リモートワークや多様な働き方の普及、DX推進などが進む中で、人材育成の重要性はますます高まっています。

人事部門では、単にスキルや知識を社員に習得させるだけでなく、組織全体の成長や人的資本価値の向上につなげる視点が求められています。


厚生労働省の「能力開発基本調査」によると、職場外研修(OFF-JT)や自己啓発支援に費用を支出した企業は全体の54.9%にとどまり、約半数の企業は人材育成への投資を行っていません。

また、直近3年間で育成費用を増加させた企業は27.6%に過ぎず、実施なしと回答した企業が51.8%に上る一方、今後3年間に増加予定とする企業は40.6%であり、将来に向けた投資意欲の高まりも見られます。


育成上の課題としては、約8割の事業所が「指導する人材の不足」(59.5%)や「育成しても離職されてしまう」(54.7%)、「育成のための時間不足」(47.4%)を抱え、事業内職業能力開発計画を策定している企業は全体の約2割にとどまっています。

企業規模が小さいほど、計画的な育成は難しい傾向にあります。


こうした状況を踏まえると、日本企業の人材育成は制度面・リソース面での課題が大きく、限られた資源を戦略的に活用することが求められます。

このような背景を理解した上で、人材育成に大切なことを整理していきます。


※1:厚生労働省、「令和6年度「能力開発基本調査」の結果を公表します」https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00202.html



人材育成でよくある課題6つ             


人材育成は企業成長の要ですが、多くの企業がさまざまな課題に直面しています。

ここでは、企業が直面しやすい代表的な課題を整理し、それぞれの背景や影響について解説します。



社員が忙しく、育成の時間と余裕がない


社員が日々の業務で多忙を極める状況は、多くの企業で共通する課題です。


特に営業やプロジェクト管理、カスタマーサポートなど、業務量が不規則で負荷の高い職種では、研修や自己啓発に充てる時間を確保すること自体が難しくなります。

結果として、育成プログラムが設計されていても、参加率や学習効果が低くなる傾向があります。


また、業務の忙しさが続くと、社員は学習の優先度を下げ、短期的な業務対応に追われる状態が常態化します。

こうした状況は、個々のスキル習得の停滞だけでなく、組織全体の能力開発の遅れにつながり、中長期的な人材戦略の実行にも影響を及ぼします。

社員が成長の機会を活かせないまま時間だけが経過すると、モチベーションの低下や離職リスクの増加といった、二次的な問題も生じます。



指導側の育成スキルや意識が不足している


部下を育成する立場にある管理職や先輩社員が、必ずしも指導の専門家であるとは限りません。

特にプレイングマネージャーは、自身の業務に追われるあまり、部下育成に必要なスキルを学んだり実践したりする時間が不足しがちです。


指導には、知識や技術を教えるティーチング、相手の考えを引き出すコーチング、そして成長を促すフィードバックという3つの重要なスキルが求められます。

これらのスキルが十分でない場合、社員が意図した通りに学べず、育成の効果は大きく制限されてしまいます。

その結果、計画的なスキル習得が進まず、社員の成長実感やモチベーションの低下を招きます。


指導側の育成スキルや意識不足は、組織全体の能力開発に影響し、結果として潜在能力の活用不足や育成投資の効果低下を招きます。

指導者側の意識とスキルの向上は、計画的な育成の実行や組織文化の醸成と密接に関連する課題です。



社員が育成の意義を理解できず、自発的に学ばない


会社がどれだけ充実した研修制度を用意しても、社員自身が「なぜ学ぶのか」という意義を理解していなければ、学習効果は十分に得られません。

育成施策が自身のキャリアプランや日々の業務にどう結びつくのかが不明確だと、社員は受け身の姿勢になりがちです。


こうした状況では、上司と部下の継続的なコミュニケーションが重要な鍵となります。

会社が社員に期待する役割や将来のキャリアパスを共有し、本人の成長意欲を引き出す対話が求められます。


学習意欲が低いままでは、必要なスキルの習得が遅れ、組織全体の能力向上に偏りが生じます。

また、自発的学習が進まない状態が続くと、社員の成長実感が得られず、モチベーションの低下や離職リスクの増加につながります。

社員が育成の意義を理解することは、長期的な人材戦略を成功させるための重要な前提条件です。



育成施策が無計画・場当たり的に進められている


人材育成が経営戦略や事業目標と連動せず、単発の研修や流行の手法を導入するだけで終わってしまうケースは少なくありません。

こうした場当たり的な施策は、一時的な知識の習得にはつながるものの、組織全体の能力向上や業績への貢献には結びつきにくいのが実情です。


また、OJTや研修が個人任せで進められ、階層別・職種別に体系化された育成が整っていないケースも見受けられます。

このようなケースでは、社員が必要な能力を段階的に習得できず、育成効果にばらつきが生じることになります。


本来、人材育成は「自社が目指す姿」を実現するために、「どのようなスキルやマインドを持つ人材が必要か」を定義することから始まります。

その上で、現状とのギャップを埋めるための体系的かつ継続的な育成計画を策定し、着実に実行していくことが重要です。

無計画な育成では効果測定も難しく、次回施策への改善が進みにくくなります。

結果として、社員のキャリア形成の機会損失や組織全体のパフォーマンス低下を招き、長期的な人材戦略の実行にも影響します。

体系的な育成計画の欠如は、学習文化の醸成にも大きな制約となります。



育成の効果測定やフィードバックが十分でない


研修やOJTを実施しても、効果測定やフィードバックが十分に行われないケースは少なくありません。

研修後のアンケートだけで済ませたり、理解度や職場での行動変容を確認しなかったりすると、学習内容の定着が進まず、次の育成施策への反映も困難になります。


社員がどのスキルを習得できたのか把握できないままでは、能力の偏りやスキルギャップが放置され、組織全体の成長にも影響を与えます。

また、評価やフィードバックが不足していると、社員自身も成長実感を得にくく、学習意欲の低下や離職リスクの増加につながる可能性があります。

中長期的には育成投資のROIが不透明となり、戦略的な人的資本経営にも影響します。


育成の効果を多角的に測定し、結果を的確にフィードバックする仕組みの整備は、組織の成長と戦略的人材育成を両立させるうえで不可欠な課題です。



階層や職種に応じた育成が不足している


社員の成長段階や職種に応じた育成が整備されていない場合、組織全体のスキルバランスが偏り、必要な能力開発が進みにくくなります。

例えば、新入社員向けの基礎教育、若手・中堅社員向けの専門スキル研修、管理職向けのリーダーシップ研修など、階層や職種ごとに体系化された育成が欠如すると、社員は必要なタイミングで必要なスキルを習得できず、キャリア形成の停滞やスキルギャップが生じます。


背景には、育成ニーズの把握不足や、リソースの制約、制度整備の遅れなどが影響しています。

効果的な人材育成を実現するには、各階層や職種における役割と責任を明確にし、キャリアステージに応じて最適化された育成プログラムを提供することが不可欠です。

社員一人ひとりに合わせた育成機会の提供が、組織の成長を支える鍵となります。



社員の挑戦や失敗を許容する文化が不足している


育成を通じて新たな知識やスキルを学んでも、実践の場で失敗を恐れていては、本当の意味での成長は望めません。

人が成長する過程では、実践を通じた挑戦と失敗の経験が不可欠ですが、減点主義の評価制度や一度の失敗を厳しく追及する文化は、社員の自主性やチャレンジ精神、成長意欲を大きく削いでしまいます。

さらに、挑戦の機会が不足すると、リーダーシップや問題解決力の習得が遅れ、長期的な人材戦略の実行にも影響を及ぼします。


この課題を解消するには、経営層や管理職が率先して挑戦を称賛し、失敗を学習の一環として受け入れる姿勢を示すことが重要です。

社員が安心して新しいことに取り組める心理的安全性の高い文化が醸成されることで、個人の成長だけでなく、組織全体のイノベーション力や自律型人材の育成にもつながります。

挑戦と失敗を許容する文化は、持続的な人材育成と組織成長の基盤といえるでしょう。



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人材育成で大切な7つのポイント           


人材育成における様々な課題を克服し、企業の成長に繋げるためには、体系的かつ戦略的なアプローチが不可欠です。

成功の鍵は、経営戦略と連動した目標設定から、社員一人ひとりの成長意欲を引き出す環境整備、そして成果を正しく評価する仕組みづくりまで、多岐にわたります。

これらを個別の施策としてではなく、一貫した方針のもとで総合的に推進することが、実効性の高い人材育成を実現する上で極めて重要になります。

ここでは人材育成で大切な7つのポイントを解説します。



1.経営戦略と人材戦略を連動させた育成目標を設定する


人材育成は、単に研修やOJTを行うだけでは組織の成長にはつながりません。

重要なのは、育成施策が経営戦略や事業目標と整合していることです。

組織が将来どの方向に進むのか、どのような人材を育てる必要があるのかを明確にすることで、育成の優先順位や投資リソースの配分が適切になります。

人的資本経営の観点からも、投資効果の可視化やROIの確認は経営判断に直結するため、戦略との連動は欠かせません。


<具体的な取り組みのポイント>

・事業戦略から必要な能力要件を洗い出す

・階層や職種ごとに育成目標を明確化する

・定量的なKPIや評価指標を設定し、進捗を定期的に確認する

・育成投資の効果を可視化し、経営層に報告する


このポイントを押さえると、育成施策は「やって終わり」ではなく、組織全体の能力向上や業績への貢献に直結するものとなります。

また、経営層や人事担当者が育成施策の価値を把握することで、次年度以降の改善や新しい施策の導入も効果的に進められます。

戦略に沿った育成目標の設定は、組織の中長期的な成長と、社員一人ひとりのキャリア形成を両立させるための出発点と言えます。



2.社員一人ひとりのキャリアと成長機会を可視化する


社員が自ら学び成長していくためには、自身の目指すキャリアや現状スキルが明確化されていることが重要です。

育成の機会や役割期待が不明瞭なままでは、社員は受け身になり学習意欲が低下してしまいます。

人的資本経営の観点からも、個々の能力や成長状況を可視化することは、育成投資の効果評価や戦略策定に欠かせません。


この可視化には、タレントマネジメントシステム(TMS)の活用や、TMSと学習管理システム(LMS)を連動させる方法が非常に有効です。

TMSを使えば社員の職務経歴やスキル、評価履歴を一元管理でき、現状と目標のギャップを明確に把握できます。

さらにTMSとLMSを連携させることで、スキルギャップを埋める学習の実施や、習得スキルの履歴がリアルタイムで反映され、社員自身が学習の進捗や成長実感を得やすくなります。


<具体的な取り組みのポイント>

・TMSで社員ごとのスキルマップを作成し、現状と目標のギャップを可視化する

・キャリアプランや目標設定を定期的に上司と確認する

・TMSとLMSを活用して、自社内外の学習機会や研修プログラムを整理・可視化する

・スキルギャップを埋める学習を実施する


こうした取り組みにより、社員は自身に必要な行動や学習を理解でき、主体的に取り組む環境が整います。

社員の成長が促進されるだけでなく、組織全体の能力向上にも直結し、戦略的な人材育成の実現につながります。



■タレントマネジメントシステム「SmartSkill HCE」でキャリアと成長機会を可視化


人的資本経営を支援する「SmartSkill HCE」は、社員一人ひとりのスキルやキャリア情報を一元管理し、成長機会を可視化します。

キャリア志向や目標に応じた育成計画を立てられるほか、多機能型LMS「SmartSkill Campus」と連携することで、スキルマップを埋める学習をすぐに開始でき、個人と組織の成長を同時に促進します。



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3.中長期視点で育成計画を策定する


人材育成は短期的な成果だけでなく、中長期的な組織成長を見据えて計画することが不可欠です。

場当たり的な研修やOJTだけでは、必要なスキルやマインドの定着は不十分で、組織の能力開発にも偏りが生じます。


<具体的な取り組みのポイント>

・事業戦略に基づき、階層・職種別に育成ロードマップを作成する

・半年~1年単位で育成進捗をレビューし、計画を柔軟に調整する

・成長段階ごとに必要な研修やOJT、自己啓発プログラムの内容を設計する


中長期視点で計画を立てることで、社員の段階的な成長を支援し、組織全体の能力向上につなげることができます。

計画に基づいた育成は投資効果の可視化にも役立ち、戦略的な人材育成を後押しします。



4.挑戦と失敗を許容する文化を醸成する


研修で学んだ知識やスキルは、実践で試して初めて身につきます。

しかし、失敗が許されない組織風土では、社員は新しいことへの挑戦をためらい、結果として成長の機会を失ってしまいます。


<具体的な取り組みのポイント>

・経営層や管理職が挑戦を称賛し、失敗を学習機会として受け入れる

・挑戦した行動やプロセスを評価対象として含める

・小さな成功・失敗も共有し、学びを組織で活かす仕組みを作る

・安心して新しい業務に取り組める心理的安全性を確保する

・小規模なトライアルやパイロットプロジェクトで挑戦の機会を増やす

・学びを次の行動につなげるフィードバックを行う


こうした文化が醸成されると、社員は自主的に取り組み、組織全体のイノベーション力や自律型人材育成に直結します。

挑戦と失敗を許容する文化は、企業の長期的な成長と学習基盤の要です。



5.社員が自ら学びたくなる環境を整備する


社員が学習に主体的に取り組むためには、まず自分が何のために学ぶのか、その意義を理解していることが重要です。

自身のキャリアプランや日々の業務と学習の結びつきが明確であれば、社員は目的意識をもって行動し、スキル習得の定着や成長実感につながります。

学ぶ意義が理解されていない状態では、研修やOJTも形骸化し、学習効果は十分に得られません。


その上で、自発的に学びたくなる環境を整備することが不可欠です。

社員が「学びたい」と思ったときに、いつでも学べる仕組みや支援があれば、持続的な学習文化の醸成につながります。

LMS(学習管理システム)やeラーニングの活用は、このような環境づくりに非常に有効です。

社員一人ひとりの知的好奇心や成長意欲に応えるよう多様な学習コンテンツを用意し、進捗や成果を可視化することで、社員は自身の成長を実感しやすくなります。

また、社内で学習成果を発表・共有できる場を設けることで、他者の学びを刺激に、自律的な学習が促進されます。


<具体的な取り組みのポイント>

・LMSを活用し社員の興味・スキルに応じた多様な学習コンテンツを提供

・LMSで学習進捗や成果を可視化

・社内で学習成果を発表・共有できる場を作る


こうした取り組みにより、社員は学ぶ意義を理解した上で主体的に行動でき、スキル習得や成長が加速します。

社員が自ら学びたくなる環境を整備することで、組織全体の能力開発が促進され、人的資本の戦略的活用にも直結します。



■多機能型LMS「SmartSkill Campus」で自ら学びたくなる環境を実現


多機能型LMS「SmartSkill Campus」は、社員が自ら学びたくなる環境づくりを支援します。

eラーニングや動画学習、クイズ、集合研修など多彩な学習コンテンツを一元管理し、個々の学習進捗や履歴を可視化。

受講者に応じたコンテンツのパーソナライズ配信や、自分が学ぶべき講座がすぐにわかるUIにより、学習効果を最大化します。

スマートフォン対応により、通勤時間やスキマ時間でも学習可能です。



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6.育成担当者の指導スキルを向上させる


人材育成の成果は、現場で直接指導にあたる管理職や先輩社員のスキルに大きく左右されます。

特にOJTでは、指導者の関わり方次第で部下の成長速度が大きく変わることも少なくありません。

しかし、優れたプレイヤーが必ずしも優れた指導者であるとは限らず、指導スキルの差が育成効果のばらつきにつながることもあります。

そのため、指導者自身に対する育成も計画的に行うことが重要です。


具体的には、コーチングやフィードバックの手法、効果的な目標設定の仕方を学ぶ研修を提供し、組織全体で指導の質を標準化・向上させる取り組みが不可欠です。

また、定期的な行動観察や指導後の振り返りの仕組みを設けると、学んだスキルの定着がさらに進みます。


<具体的な取り組みのポイント>

・管理職やOJT担当者向けに指導スキル研修を実施

・社員の行動観察や効果的なフィードバック方法をトレーニング

・指導者同士でケーススタディや成功事例を共有する場を設ける

・評価データや学習履歴を活用して指導改善のPDCAを回す


こうした取り組みにより、育成担当者の質が向上し、社員の成長スピードやスキル定着率が高まります。

育成担当者の指導スキルを向上させることで、組織全体の能力開発効果を最大化することができます。



7.成長を正しく評価しフィードバックする仕組みを作る


社員の成長を促すには、育成の成果を客観的に評価し、本人に的確にフィードバックする仕組みが欠かせません。

育成計画の開始時に設定した目標の達成度や、実務での行動変化を評価するために、目標管理制度(MBO)やコンピテンシー評価を活用することが効果的です。

評価結果を人事考課や処遇に適切に反映することで、社員は自身の努力や成長が正当に認められていると感じ、次の学習や挑戦へのモチベーションが高まります。

また、評価面談では、良かった点だけでなく改善点や今後の期待についても具体的に伝え、次の成長サイクルへつなげることが重要です。


<具体的な取り組みのポイント>

・理解度テストや実務での行動変容など、多角的な評価手法を導入

・定期的に上司と1on1で成長状況を確認し、具体的なフィードバックを実施

・評価結果を次の育成計画に反映させ、継続的に改善する

・LMSやTMSを活用して、学習履歴やスキル習得状況を可視化し、客観的な評価材料とする


さらに、評価とフィードバックをPDCAサイクルとして回す具体的手順としては以下が有効です。


・Plan(計画):育成計画の開始時に目標設定と評価基準を明確化する

・Do(実行):研修やOJT、実務経験を通じて目標達成に向けた取り組みを実施する

・Check(評価):目標達成度や行動変化、学習履歴を多角的に評価し、偏りや課題を把握する

・Act(改善):評価結果をもとに次の育成計画や学習施策を改善し、社員にフィードバックする


このPDCAを回すことで、評価やフィードバックは単なる事務作業ではなく、社員の成長を確実に支援するプロセスとなります。

成長を正しく評価しフィードバックする仕組みを整えることで、社員は自身の成長を実感し、学習意欲が高まります。

また、組織全体の能力開発も加速し、戦略的な人材育成の実現につながります。



階層ごとに求められる人材育成のポイント       


企業の成長を支える人材を育成するには、全社員に同じ教育を施すのではなく、各自のキャリアステージや役割に応じた育成プログラムを設計することが不可欠です。

新入社員、若手・中堅社員、管理職、経営層では、担う責任や求められる能力が大きく異なります。

各階層の特性を理解し、その段階で最も重要なスキルやマインドセットを効果的に伸ばす育成ポイントを押さえることで、組織全体のパフォーマンスを最大化できます。



新入社員には「基礎知識と組織理解」を


新入社員育成の目的は、学生から社会人への意識転換を促し、組織の一員として円滑に業務をスタートできるよう支援することです。

そのためには、業務に必要な基礎知識やビジネスマナー、コンプライアンス、報連相などの社会人としての基本動作を確実に身につけさせることが最優先です。

同時に、自社の経営理念や事業内容、組織文化を理解させることで、帰属意識を高め、職場でのコミュニケーションや自律的な行動を促進できます。


具体的な取り組みとしては、OJTトレーナーによるマンツーマン指導や、同期との集合研修を組み合わせる方法が有効です。

さらに、eラーニングやLMSを活用して基礎知識をいつでも復習できる環境を整えることや、先輩社員によるメンター制度や定期的な1on1面談で疑問点を解消することも、早期の職場適応や離職防止に効果的です。


こうして「基礎知識」と「組織理解」を育むことにより、新入社員は短期間で基礎を固め、組織の一員として自信をもって業務に取り組めるようになります。



若手・中堅社員には「専門性と自律性」を


入社から数年が経過した若手・中堅社員は、一通りの業務を習得し、次のステップに進む段階にあります。

この階層の育成では、担当業務における専門性の深化と、自ら判断して行動できる自律性の獲得が重要です。


専門知識や技能を高めるために、部門横断のプロジェクトやOJT、eラーニングや外部研修、関連資格の取得など、多様な学習機会を提供することが有効です。

また、後輩社員の指導役を任せることで、ティーチングスキルや責任感を育み、将来のリーダー候補としての自覚も促せます。


自身のキャリアについて考える機会を提供することも若手・中堅社員には重要です。

キャリアプランや目標設定を上司と定期的に確認し、成長状況を可視化することで、社員の主体性や学習意欲を高めることができます。


こうした取り組みにより、社員は自律的に課題解決や業務改善に取り組む姿勢を養い、組織の中核人材として貢献できるようになります。

若手・中堅社員の専門性と自律性を伸ばす育成は、組織全体の成長を支える重要な基盤となります。



管理職には「マネジメント力とリーダーシップ」を


管理職は個人の成果だけでなく、チーム全体のパフォーマンスを最大化する役割が求められます。

そのため、育成の重点はマネジメント力とリーダーシップの強化に置かれます。

具体的には、部下の能力や適性に応じた業務の割り振り、目標管理、モチベーション向上、フィードバックやコーチングなど、部下の成長を支援するスキルの習得が不可欠です。

また、組織戦略を理解し、部門目標を適切に設定・管理する能力も求められます。


実践的な取り組みとしては、コーチング研修やケーススタディによるトレーニング、管理職同士の情報共有や意見交換の場を設けることが有効です。

さらに、心理的安全性の高い職場環境を整え、部下が安心して挑戦できる文化を醸成することも重要です。


マネジメント力とリーダーシップの育成により、管理職はチームを目標達成に導くと同時に、部下の成長を促進し、組織全体の成果向上に直結する人材として活躍できるようになります。



経営層には「戦略立案と意思決定力」を


経営層には、企業全体の視点から事業の将来を構想し、組織を牽引する高度な意思決定力が求められます。

単に日々の業務を管理するだけでなく、市場動向や競合状況を踏まえた中長期戦略の立案、リスクマネジメント、人的資本の最適配分など、複雑で不確実な経営環境での判断が不可欠です。


育成の具体策としては、経営シミュレーションやケーススタディ、他社事例の分析を通じた戦略的思考力の習得が有効です。

また、MBAプログラムや外部研修、経営層同士や中堅管理職との戦略会議・交流を活用し、多角的な視点での意思決定力を磨くことも重要です。


これらの取り組みにより、経営層は組織全体の方向性を示し、適切な意思決定を下す能力を高めることができ、企業の中長期的な成長と持続可能な価値創造を支えるリーダーとして活躍できます。



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人材育成に役立つフレームワーク           


人材育成を感覚や経験だけに頼って進めるのではなく、論理的かつ体系的に設計・運用するためには、確立されたフレームワークの活用が非常に有効です。

これらのフレームワークは、目標設定から計画立案、スキル定義、効果測定に至るまで、人材育成の各プロセスにおいて思考を整理し、客観的な基準で施策を評価するための指針となります。

自社の状況に合わせてこれらのモデルを応用することで、育成施策の精度と効果を高めることが期待できます。



目標設定に役立つ「SMARTの法則」


人材育成において「目標設定」は、学習意欲の喚起や成長実感の醸成に直結します。

その際に有効なのが「SMARTの法則」です。


SMARTとは、Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(関連性がある)、Time-bound(期限がある)の頭文字を取ったものです。

この枠組みに基づいて目標を設定することで、抽象的で曖昧になりがちな育成目標を、実行可能かつ評価可能な形に落とし込むことができます。

特に育成施策では、学んだスキルが実務にどのように結びつくのかが重要であり、SMARTを意識することで「社員が納得感を持ち、自ら取り組みやすい目標」に変換できる点が大きな利点です。


<人材育成で使う際のポイント>

・一人ひとりの業務やキャリアに即した「具体的」な目標を設定する

・研修の成果が「数値」や「行動」で確認できるようにする

・部門目標や企業戦略と「関連性」を持たせることで納得感を高める

・活用の具体例


<活用の具体例>

・新入社員に対して:「3か月以内に自部署の主要業務プロセスを説明できるようになる」

・若手社員に対して:「半年以内に担当顧客からの問い合わせ対応を独力で完了できる割合を80%にする」

・管理職に対して:「四半期ごとに部下の目標達成率を90%以上に保つ」



育成プロセスの設計に役立つ「思考の6段階モデル」


「思考の6段階モデル(ブルームのタキソノミー)」は、学習者の理解度を段階的に把握し、育成プロセスを設計するためのフレームワークです。

具体的には、知識の習得、理解、応用、分析、評価、創造の6段階に分けられます。


研修プログラムを作る際には、単に用語を覚える知識レベルなのか、学んだことを実務で活用できる応用レベルなのか、あるいは新しい解決策を生み出す創造レベルを目指すのかを意識することで、内容や手法を最適化できます。

「思考の6段階モデル」を活用することで、学習到達度を意識したプログラム設計が可能となり、知識習得だけでなく、業務で活かせる能力や問題解決力まで育成できます。


<人材育成で使う際のポイント>

・学習対象ごとに習得段階を明確化する

・初期段階では知識・理解に焦点を置き、段階を追って応用や創造に進む

・評価やフィードバックも段階に応じた内容にする


<活用の具体例>

・新入社員研修:商品知識を「理解」→模擬接客で「応用」

・若手育成:過去事例を分析して「問題点を評価」→改善策を提案する「創造」



スキル管理に活用できる「カッツモデル」


カッツモデルは、職務に必要なスキルを「コンセプチュアルスキル」「ヒューマンスキル」「テクニカルスキル」の3つに分類するフレームワークです。

若手は「テクニカルスキル」、管理職は「ヒューマンスキル」や「コンセプチュアルスキル」の比重が高まるなど、階層や役割による育成重点を整理できます。


育成担当者は、このモデルを基に階層ごとのスキルギャップを把握し、OJTや研修、資格取得などの施策を適切に組み合わせることが可能です。

組織全体のスキルバランスを可視化する際にも有効です。


<人材育成で使う際のポイント>

・階層や職種に応じて重点スキルを整理する

・スキルマップや評価シートで現状と目標の差を可視化する

・個人・チーム・組織の育成施策の優先順位を決定する


<活用の具体例>

・新入社員:テクニカルスキル(業務知識、PC操作)を重点的に育成

・管理職:ヒューマンスキル(部下指導、コミュニケーション)研修を実施

・経営層:コンセプチュアルスキル(戦略立案、意思決定)を高める研修に参加



研修効果の測定に役立つ「カークパトリックモデル」


カークパトリックモデルは、研修や育成施策の効果を4段階で評価するフレームワークです。

レベル1は受講者の反応、レベル2は学習の習得度、レベル3は業務での行動変化、レベル4は組織への成果への影響を評価します。


このモデルを活用することで、単なる研修参加状況の確認に留まらず、実際に業務成果や組織成長に結びついているかを多角的に把握できます。

人材育成担当者は、評価指標を明確化し、定期的にフォローアップすることで、施策の改善や次年度の育成計画に反映させることが可能です。


<人材育成で使う際のポイント>

・各評価レベルに応じたデータを収集する(アンケート、テスト、業務データ)

・レベル3以降は現場の観察や上司評価を活用する

・結果を育成計画に反映させ、継続的改善につなげる


<活用の具体例>

・レベル1:研修満足度アンケート

・レベル2:習得度テストや実技評価

・レベル3:OJTでの行動変化の確認、1on1での成果レビュー

・レベル4:売上、業務効率改善、離職率低下などの組織指標との連動



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人材育成の成功事例                 


実際に他社がどのように人材育成に取り組み、成果に繋げているかを知ることは、自社の施策を考える上で大きなヒントになります。

ここでは、多機能型LMS「SmartSkill Campus」を活用し、社員と組織の成長を実現している企業の事例を紹介します。



明治安田生命保険相互会社様


「明治安田フィロソフィー」を体現できる人財づくり

企業内大学「MYユニバーシティ」の設立


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明治安田生命保険相互会社では、企業理念「明治安田フィロソフィー」を体現できる人財づくりを目的に、2020年に企業内大学「MYユニバーシティ」を設立しました。

目的は、経営人財(マネジメント能力を持つ人財)と専門人財(専門知識を持つ人財)の双方を計画的に育成することです。


設立時の課題は、従来の集合研修や社内ネットワーク依存の学習では、テレワーク環境下で社員が自由に学べない点でした。

これを解決するために、SmartSkill Campusを導入し、以下の工夫を行っています。


・経営人財・専門人財向け学部の設計

「MYユニバーシティ」では、経営人財向けの「経営学部」と専門人財向けの「専門学部」を設置。

各人財タイプに応じた成長の場を提供し、計画的なデュアルラダーによる人財育成を支援しています。


・社内実務者を講師に起用

社内で活躍する職員を講師に起用し、具体的で実務に直結する講義を提供。

役員や顧問による経験談の共有、専門人財による生配信講義など、リアルな事例を通じて学習効果を高めています。


・スマートフォン対応の動画学習

SmartSkill Campus上で動画コンテンツを配信。

スマートフォンからいつでもアクセス可能で、通勤時間や待ち時間などのスキマ時間を活用して学習ができる環境を整備しました。


・研修前の事前課題で学習効果を最大化

若手職員向けの階層別研修では、動画視聴を事前課題として組み込み、研修前に基礎知識を習得する仕組みを導入。

研修当日の理解度と実践効果を向上させています。


導入により、職員一人ひとりが主体的に学ぶ文化が醸成され、DX・ITスキルの習得や資格取得など、具体的な成果につながっています。

「MYユニバーシティ」は教育の「1丁目1番地」として、社員一人ひとりの成長を支える基盤となっています。





株式会社大分銀行様


LMSとタレマネの連携により、行員の能力レベルに応じた最適な能力開発支援を実現


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株式会社大分銀行様では、行員一人ひとりが「ありたい自分」や「やりたい仕事」を実現できるよう、自律的にキャリアを切り拓く人材育成に力を入れています。

その基盤となるのが、2022年度に創設された企業内大学「D-Careerアカデミー」です。


人材戦略の中核には「人財戦略グランドデザイン」を掲げ、キャリア形成支援と専門能力の開発を両立させる仕組みを構築。

特に次のような工夫がポイントです。


・キャリア開発プログラム(CDP)との連動

行員の「知識」「スキル」「経験」を数値化し、能力レベルに応じて最適な研修や自己啓発コンテンツをレコメンド。

個々の成長課題に沿った育成を実現しています。


・LMS「Progress Navi」とタレントマネジメントシステムの連携

API連携により、能力診断結果に基づいて学習コンテンツを自動的に提示。

自己啓発の「見える化」と「いつでもどこでも学べる環境」を提供しています。


・スマートフォンアプリの活用

アクセスの8割以上がスマートフォン経由。

世代を問わず使いやすいUI設計で、学習の習慣化と利用促進に大きく寄与しています。


これらの取り組みにより、大分銀行様は「キャリア形成支援」と「専門能力開発」を両輪とし、顧客への価値創造と従業員エンゲージメントの向上を同時に実現されています。

今後はインプットだけでなくアウトプットや共有の機会を取り入れ、行員同士が楽しみながら成長できる学習プラットフォームを目指しています。




ワタミ株式会社


社員一人ひとりの夢や目標を実現するキャリア支援


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ワタミグループ様では、「地球上で一番たくさんの“ありがとう”を集める」という理念のもと、社員一人ひとりの夢や目標の実現を重視したキャリア支援に取り組まれています。


従来の集合研修では全員に共通するテーマが中心となり、個々の成長ニーズに応えることが難しいという課題がありました。

この課題を解決するため、グループ共通教育の基盤としてSmartSkill Campusを導入し、自社運営サイト「GROW」として展開。

社員一人ひとりの成長を支える仕組みを整備しています。

主なポイントは以下の通りです。


・オンライン学習環境の構築

コロナ禍を契機に遠隔での研修・動画視聴を可能にし、時間や場所にとらわれない学習を実現。


・情報発信の一元化

グループ報・ビデオレター・SNSなどに分散していたトップメッセージや会社動向を「GROW」に集約。社員に迅速かつ一貫性のある情報提供が可能になりました。


・豊富なコンテンツとコスト効率

一般社員から管理職まで役職に応じたスキルが網羅された動画を活用し、多機能なLMSと学習コンテンツを予算内で提供。


・従業員エンゲージメント向上

「GROW」の認知度が高まり、「学ぶならまずここで探す」という習慣が浸透。トップページのカスタマイズやマルチデバイス対応により、より身近で利用しやすい学習環境が整いました。


さらに、人事異動やキャリア支援との連動も進めており、社員の夢や目標に寄り添った育成を実現しています。

今後は昇格や異動に必要なスキル習得を「GROW」で可視化し、キャリア形成を力強く後押ししていく方針です。





オリックス株式会社様


多様な人財を育成する、パーソナライズ化された学びの実現


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オリックス株式会社様では、多様な社員が互いを尊重し協力することで新しい価値を生み出す「Keep Mixed」の考え方を軸に、人材育成・開発に取り組まれています。


事業の多角化に伴い、育休中社員や内定者などの学習環境整備や、人事業務の効率化が課題となっていました。

これらの課題を解決するため、全社共通の学習ポータル「ORIX training portal」をSmartSkill Campusで構築。

グループ各社で実施する研修や自己研鑽用コンテンツを一元化し、社員一人ひとりにパーソナライズされた学びを提供しています。

主な取り組みは以下の通りです。


・学びの集約とパーソナライズ化

全社共通研修、各グループ会社の研修、自己研鑽コンテンツをポータルに集約。

育休者向けコンテンツや「水曜セミナー」も提供し、個々の学習ニーズに応える仕組みを整備。


・教育履歴・受講状況の一元管理

これまで分散していた研修情報を個人のマイページで確認可能に。

部門ごとのスキルニーズに応じた学習テーマも提供し、従業員に寄り添った学びを推進。


・キャリア自律を支援

社員が自分のキャリア目標に必要なスキル・資格・ロールモデルを把握できるように可視化。

現状とのギャップを埋める学習計画を「ORIX training portal」で支援。


導入から約5年、社員が自律的に学ぶ文化を育み、グループ全体で一人ひとりが最大限のパフォーマンスを発揮できる環境づくりに成功しています。




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まとめ


人材育成は、企業の成長を左右する最重要テーマの一つです。

現状では、社員の多忙さや担当者の指導力不足、自発的な学習意欲の欠如など、どの企業にも共通する課題が存在します。

しかし、これらを克服するには難しい仕組みや大きな投資が必ずしも必要ではありません。

経営戦略と連動した育成目標の設定や、中長期的な視点に基づく計画づくり、挑戦と失敗を許容する文化の醸成といった基本を押さえることで、社員が自ら成長し、組織の活力を高める好循環を生み出せます。


本記事で紹介した「大切なこと7つ」やフレームワーク、そして成功事例が、その第一歩を踏み出すうえで大きなヒントとなれば幸いです。

人材育成に正解はありませんが、継続的に改善しながら取り組む姿勢こそが、企業の未来を支える強固な基盤となります。




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