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ゲーミフィケーションとは

少し古い話題になりますが、「ゲーミフィケーション」という言葉がバズワードとしてはやりました。Webサービスやアプリで取り入れられているこの「ゲーミフィケーション」ですが、私は教育コンテンツとの相性がいいのではないかと考えています。 なぜなら勉強のように、人によっては(多くの人はそうだと勝手に思ってますが)あまり乗り気がしないけど「やらなきゃいけない」ものについては、「ハマらせる」ことが難しく、モチベーションの維持が大きな課題です。 そうした教育コンテンツに、この「ゲーミフィケーション」が活躍するのではないかと思っています。事実、かなりの成果を上げているコンテンツがたくさん出てきました。 今回は、このゲーミフィケーションの基本概念と、教育コンテンツにおける活用例などをご紹介します。



目次



Gamification(ゲーミフィケーション)とは?

出来上がりだけで言ってしまうと、「ゲームが本来の目的ではないサービスやコンテンツなどにゲーム的要素を組み込むこと」のように思われがちですが、その本質をとらえておく必要があります。本質的には「ユーザーエンゲージメントを高めるために、ユーザーに楽しんでもらうための方法」という感じでしょうか。「ユーザーエンゲージメント」とは、ユーザーからの「愛着心」や「信頼」のことです。



ゲーミフィケーションのための典型的な手法が、ゲーム業界のノウハウを応用することです。なぜならば、ゲーム業界には、ユーザーから愛されるためのノウハウが多く存在すると考えられているからです。ユーザーに愛されるためにはユーザーのモチベーションやロイヤリティを高目る必要があります。つまり、ゲーミフィケーションとは、「ユーザーエンゲージメントを高めるために、ユーザーのモチベーションやロイヤリティを高めて、ユーザーに楽しんでもらう方法」であり、その典型例として「ゲーム業界のノウハウを応用する」ということです。


Gamificationが単なる「ゲーム化」ではないということに注意してください。ゲーム化というと、「ゲームを作ること」ととらわれそうですが、結果として「ゲーム形式」になりがちなだけで、手段と目的が混同しないようにしてください。ゲーミフィケーションは「ユーザーがコンテンツを愛し、ユーザーを楽しませる」ことが目的であり、ゲームの要素を持ち込むことは、そのための手段でしかないのです。



ゲーミフィケーションは昔からあった


例えば実生活においての典型的な例に、小学生の頃に「夏休みラジオ体操のスタンプ」がありました。これは、「早起きして体操をする」という、小学生ならずともあまり積極的に参加したいと思えないイベントですが、参加することでスタンプがもらえたり、集めたスタンプの数によって夏休みの最後にお菓子やノートなどの「ご褒美」がもらえたり、といったゲーミフィケーション要素を用意することで、モチベーションの向上を狙っています。つまり「夏休みのラジオ体操に参加すればもらえるスタンプ」と「ソーシャルゲームのログインボーナス」は本質は同じものなのです。


小学生が「横断歩道の白いところだけを歩くゲーム」をしているところをよく目にします。「白いとこだけ歩いて、落ちないようにする」と、あえて自分に制約を課すことで、それを完遂したときには小さな達成感を楽しんでいるのでしょう。これは、「退屈な日常を面白くするゲーミフィケーション」の一種です。他にも、お店のポイントカード、自動販売機のスロットくじなど、さまざまなゲーミフィケーション要素がすでに浸透しています。つまり、ゲーミフィケーションのアイデア自体は昔から使われており、2010年ごろから「ゲーミフィケーション」という言葉として登場しただけなのです。


このように、「ゲーミフィケーション」という言葉が生まれた2010年以前も「ゲーミフィケーション要素」はたくさんありました。それが、今になってなぜゲーミフィケーションがバズワードになったのでしょうか? 考えられることとしては、まず「名前がついたこと」でしょう。「ゲーミフィケーション」という名前(ラベル)が与えられることによって、初めて意識が向けられるようになったと考えれます。加えて、ソーシャルネットワークの発達です。ソーシャルネットワークとゲームはとても相性が良く、ソーシャル性がゲーム性をさらに面白くする強力な要素になっています。ネットを通じて他の人と競争することで、今までゲーム的でなかったものも、ゲームとして成り立つようになりました。



ゲームに学ぶユーザーを「ハマらせる」極意

「ゲームは「娯楽品」であり、生きるための「必需品」ではないですから、気に入ってもらえなければ、すぐに使われなくなってしまいます。多くのゲームでは、この問題を解決するために、ユーザーを「ハマらせ」、そのゲームを「好きになってもらう」ための“仕掛け”を用意しています。 ゲーミフィケーションは、特に人間の心理面に注目して、ユーザーが「ハマる」状態になるための条件や、継続的に「利用したい」と思わせる手段などを組み込んでいます。


「至福の生産性」とか「ソーシャルな構造」とかいろいろ言い換えられてますが、まとめると以下3つの要素の組み合わせです。


 
  1. 課題要素 クエスト、ミッション、ランキング、難易度設定など

  2. 報酬要素 達成バッジ、経験値などのレベル分け、プログレスバーによるレベルの可視化、仮想通貨、クーポン、表彰、ポイントなど

  3. 交流要素 チャット、対戦、ユーザー間の競争、アバター、ソーシャル、アンケートなど

 

ひとつづつ見ていきましょう。


 

課題要素

ゲーム用語でいう「クエスト」「ミッション」などのことです。つまり、「挑戦するべき課題」ですね。課題に挑戦し、クリアすることでユーザーは達成感を得ることができます。ただクリアするだけでなく、特典などのランキングや、ライバルの進捗を可視化することで、自身のステイタスのランクを上げたり、負けたくないという目標が生まれ、モチベーションアップにつながります。

また、課題の「難易度」をどんどん難して行くことにより、「飽き」を防ぎます。この辺はさじ加減が難しく、序盤難易度を上げすぎると、ユーザーは面白くなく、続けてくれません。ユーザーの熟練度と課題の難易度のバランスがうまく行くと「ハマ」ってくれます。課題のバランスは、ゲーミフィケーションにおいて重要な要素といえるでしょう。


報酬要素

ゲーム用語でいう「クリア報酬」「ボーナスポイント」などのことです。課題をクリアすることで得られる“ご褒美”ですね。バッジと呼ばれるアイコン画像を獲得できる形式が多いですが、それだけでなく、経験値が溜まることで、レベルアップして、いろいろな機能が付与されるものもあります。 こちらも苦労に対するバランスが大切で、あまりあげな過ぎてもダメ、簡単にあげてもダメです。 また、報酬は現物のプレゼントでない場合は、単なるデータなので、その「データ」を如何に貴重化することが大事です。そのためには、次のコミュニティ要素などで、「持っていると自慢である」「人より上位に入れる」など、「価値を作る」ことが大切です。


交流要素

交流要素はこれまでの課題要素や報酬要素との関連もあり、とても大切な要素です。この要素がなければゲーミフィケーションの効果は少なくなります。一般的なSNS・チャット・BBSといったテキストコミュニケーターだけでなく、「対戦要素」「ライバリング」の演出なども交流要素になります。ランキングでライバルとの差を可視化したり、獲得した「報酬要素」を「自慢」できる場を用意することも必要です。コンピューターよりも人間のライバルに勝つ方が盛り上がることは、対戦型ゲームにハマッた経験のある人ならば理解できることと思います。 また、「アバター」などの「仮想パーソナリティ」を使って、「身なり」を着飾ることにはまる人もいます。 教育コンテンツでは、ユーザープロフィールページにレベルや獲得した報酬が分かるようにしたりします。

 

ゲーミフィケーションの効果を裏付ける「フロー理論」

ゲーミフィケーションの効果の根拠を理解するには、「フロー理論」について知っておくと良いかと思います。 クレアモント大学教授チクセントミハイ氏が研究する「フロー体験」では、人はある状態になると、自分自身の心理的エネルギーが100%発揮される「フロー状態」になると発表しています。

フロー状態になるポイントは以下の6点です。


 

フロー状態になるポイント

  1. 活動の目標が明確であること

  2. 成果に対する迅速なフィードバックがあること

  3. 機会と能力のバランスが良いこと。

  4. 適切な難易度であること

  5. 十分に集中できる環境にあること。

  6. 対象へ自分がコントロールできている感覚があること

 

どうでしょうか。なんとなく「そうだよな~」と思える人も多いのではないかと思います。例えば、これは「仕事に集中するための条件」みたいなものでもあります。 例えば、(1)の反対で、今日一日の活動目標が明確ではなかったり、(5)の反対で業務に集中できる環境がない場合は、当然仕事に対しての意欲が下がり、ストレスとなり楽しくないと思います。 また、ある程度仕事に慣れるとマンネリ化し、つまらなくなりますから、ある程度スキルアップというか、チャレンジできる仕事があること大切です。(3)(4)のように、一定のチャレンジができて、(2)のように成果と評価が正しくできる環境であれば、人は仕事に辛さだけではなく、楽しさを感じることができるのです。


この「フロー理論」は細かく研究されているのですが、要は人が物事を経験していく過程で、スキルアップしながらフロー体験し楽しくなり、やがてそのレベルでは飽きてしまう。この時点で再びフローに戻るにはチャレンジを高める必要があるということです。 この「フロー理論」こそ、ゲーミフィケーションの手法の裏にある心理的なエンジンです。スマホの普及とともに爆発的に売り上げを上げている「ソーシャルゲーム」もこの理論を徹底的にチューニングし、利用者をフロー状態にはめていくことで多大なる利益を得ることができたのです。


 

「ゲームニクス」とは


“仕事や教育も、フロー体験を得ることのできる適切な難易度にすることを繰り返しながら、途中はつらいけど、やがて楽しさを感じるものであることが大切です。 前置きが長くなりましたが、仕事や教育にゲーミフィケーションを取り入れることで、活性化させる試みが行われています。 eラーニングサービスや社内教育でのゲーミフィケーション事例を挙げてみたいと思います。”

 

eラーニングサービスや社内教育でのゲーミフィケーション事例

仕事や教育も、フロー体験を得ることのできる適切な難易度にすることを繰り返しながら、途中はつらいけど、やがて楽しさを感じるものであることが大切です。 前置きが長くなりましたが、仕事や教育にゲーミフィケーションを取り入れることで、活性化させる試みが行われています。 eラーニングサービスや社内教育でのゲーミフィケーション事例を挙げてみたいと思います。



ココネ

ココネはWeb上で英語を楽しく勉強できるサービスで、ゲーミフィケーションの要素がふんだんに盛り込まれています。



いくつかサービスがありますが、例として「英語 組み立てTOWN」をご紹介します。 「英語 組み立てTOWN」はゲーム感覚で中学英語から高校英語まで、文法中心にパズル・クイズ感覚で覚えることができます。 各コースをクリアしていく、ポイントがたまります。ゲームの中には「アバターで交流」したり、「ココラウンジ」といった交流の場が用意されています。クリアしたときのセレブレーションや得点に応じた金・銀・銅のメダルコレクション、時間制限などのハラハラさせる没入感をあおる要素など、ゲーミフィケーション要素がふんだんに盛り込まれています。 ココネには、共通のアバター要素も取り入れられています。ゲーム内通貨を消費することで、アバターを装飾できます。アバターはコミュニケーションの潤滑剤になります




Khan Academy

Khan Academyは算数に始まり、金融、化学、歴史、美術などの多岐に渡る分野をオンラインで無料で学習できるサービスです。



元々はSalman Khanが自分の親戚にYoutubeを使って数学を教えていただけのものでしたが、今では3000本以上のビデオ教材と練習問題が提供されており、世界の知が誰にでも触れられる未来への大きな礎となるサービスへと成長しました。



ここでの「ゲーム的要素」は、“Knowledge Map”と呼ばれ、多くのゲームでも持ち入れられている仕組みです。 これは特定の知識を得ることで、初めて次の知識を得ることができるというものです。具体的に言うと、「足し算」の知識があって初めて「掛け算」を学ぶことができますよね。このようにどんどん学習を進めていくことができます。




日本マクドナルド「ハンバーガー大学」

日本のマクドナルドの社内教育システムである「ハンバーガー大学」では、ゲーミフィケーションならぬ、ニンテンドーDSを使った教育が行われています。 「ハンバーガー大学」はマネジメントスキルや店舗システム、リーダーシップ、チームビルディングなどを学べる社内教育機関、いわゆる「コーポレイト・ユニバーシティ」の典型ですが、その教材となる講座にはゲームの要素がふんだんに取り入れられています。社員だけでなく、アルバイトの教育にも熱心です。マクドナルドのアルバイトは国内で16万人もいるため、そのトレーニングの効果を高めるために、ニンテンドーDSと「e-SMART」というツールを利用し、トレーニング時間を半減することに成功したそうです。AJCCというアルバイト向けオペレーションコンテストも実施し、優勝者は海外のマグドナルドに仕事を兼ねて行けるほか、黒い特別なユニフォームが与えられます。




まとめ



仕組みだけで言えば、ゲーミフィケーションのシステムは決して複雑高度なものではありません。大切なのは、その要素を「どうサービスに組み込むか」のアイディアが肝になってくると思います。今後あたりしいサービスを目にしたら、ぜひ、「どういうゲーミフィケーションが隠されているか?」をチェックしならが見ると面白いかと思います。


最後までお読みいただきありがとうございました。


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