2019.04.27

モチベーション3.0とは(Part1)

モチベーション3.0」という言葉を耳にされたことがありますでしょうか?
2010年くらいからアメリカのIT関連企業を中心に、注目、導入されている人材マネジメントに関するキーワードです。

「モチベーション3.0」とはダニエル・ピンク氏の著書「モチベーション3.0 持続する『やる気!』をいかに引き出すか」で定義されている言葉です。Web2.0など「言葉の意味の変化をバージョンで表す」のが流行っていますが、「モチベーション3.0」もその類です。

今回はこの「モチベーション3.0」というキーワードについて、簡単にご紹介してみたいと思います。
※ちょっと長くなってしまったので、2回に分けて掲載させていただきます。

ダニエル・ピンク氏について

「モチベーション3.0」の説明の前に、まず著者のダニエル・ピンク氏についてどんな人物かをご紹介したいと思います。

ダニエル・ピンク氏は、クリントン元大統領など著名人が卒業したエール大学ロースクールで、法学を勉強し、ゴア元副大統領のスピーチライターとして活躍した人物です。
今ではベストセラー作家として活躍しており、「ハイコンセプト、新しいことを考え出す人の時代(三笠書房)」を書店で目にした方は多いのではないでしょうか。
「ハイコンセプト~」では、世界20か国語に翻訳され、日本語訳は大前研一氏です。

わかりやすくウィットにとんだ文章で、日本でも人気が高い作家です。また、日本のサブカルチャー、特に漫画については来日して研究し、本を出版するほど詳しい人であります。

2010年発売の「モチベーション3.0 持続する『やる気!』をいかに引き出すか」は同じく大前研一氏が翻訳してますが、原題は「Drive:The Surprising Truth About What Motivates Us」となってます(※アメリカでは2009年発売)。この本では、従来のモチベーションの定義やインセンティブの手法によるやる気喚起が果たして良かったのかを検証し、その間違いを立証する内容となってます。単純に給与を上げれば、問題が解決するというわけもなく、「アメとムチ」を基本にした従来の外発的動機づけ(モチベーション2.0)では、効果を期待できないばかりか、7つの致命的な欠陥があると指摘しています。

本の宣伝用コピーにはこのように書かれています。

「モチベーションについて信じられていることの大半が、とてもではないが真実とは言えない……これを本書で示したい。厄介なのは、動機づけについて、多くの企業が新しい知識に追いついていないという点だ。今なお、きわめて多くの組織が、人間の可能性や個人の成果について、時代遅れで検証されていない、科学というよりほとんど俗信に根ざした仮定に基づき運営されている。目先の報奨プランや成果主義に基づく給与体系がその例だ。」

 

人材育成や企業内教育に携わる者にとってはかなり興味をそそるコピーですが、仕事や自己啓発などに積極に取り組む自律した人材を育てたい方にぜひ読んでいただきたいと思います。

では、まずは「モチベーションの分類」について考えるところからスタートです。

タイプ I

モチベーションの分類

モチベーション3.0が注目される背景には、現代の社会状況や会社組織の変化があります。現代は以前より従業員がモチベーションを維持することが難しくなった、モチベーションは湧きにくいと訴える経営者が増えているようです。
半面、企業が求めるモチベーションの高い人材へのニーズは高まりを見せています。激しく変動する環境に適応し、指示されたことをただこなすだけでなく、自分でモチベーション高く自律的に行動ができる人材を育成すべく、企業はさまざまな施策を行っています。

こうした変化から、メンバーのモチベーションを維持管理”する・させる”ための方法として、やる気を引き出す動機付け「モチベーション3.0」に注目が集まりました。

「モチベーションx.x」とは、「モチベーション」という言葉を、その動機別に数字を使って分かりやすく分類したものです。
人類には「モチベーションが3つある」と、ダニエル・ピンク氏はそれにそれぞれのバージョンを付けて説明しています。
※説明に「OS」という表現がありますが、詳しくは後述しますので、とりあえず「行動原理」という感じで読んでいただければと思います。

1. モチベーション1.0:飢餓動因・渇動因・性的要因などの生物学的な動機づけ

もっとも原始的な「モチベーション1.0」は、生存を目的としていた人類最初のOSです 。

2. モチベーション2.0:周囲からの報酬や罰に対しての反応するもう一つの動機づけ「外発的動機づけ」

アメとムチ=信賞必罰に基づく与えられた動機づけによるOSです。報酬をもらいたい、もしくは罰を逃れたいというモチベーションですね。
ルーチンワーク中心の時代には有効だったが、21世紀を迎えて機能不全に陥ると説明されてます。

外発的動機づけ

3. モチベーション3.0:内発的動機づけ

3つ目は20世紀半ばに、ハリー・ハーロウ、エドワード・デシなどが主張した「内発的動機づけ」です。
自分の内面から湧き出る「やる気!=ドライブ※」に基づくOSです。活気ある社会や組織をつくるための新しい「やる気」の基本形となります。

今後の時代を生きていくには、自律性・成長性・目的性を伴うモチベーションである「モチベーション3.0」が必要になると述べられています。
しかし、ビジネスの世界にはこの新たな認識は十分に活かしきれていないので、ギャップを埋める必要があるとダニエル・ピンク氏は主張します。
※「Drive」は、訳者の大前氏が日本語にちょうどいいものがなかったので、「やる気」に「!」を付けたそうです。

参考:ハリー・ハーロウとエドワード・デシによる内発的動機付けの概念

心理学者のハリー・ハーロウは、リーザスザルの檻の中に、掛け金や留め金、蝶番などの仕掛けによって構成されたパズルを置いて、そこにサルを一匹ずつ入れてどのような行動をするか観察した。するとサル達はパズルに大きな関心を示したのである。そして、彼らはそのパズルの解き方を発見し、一度解いたパズルを元に戻す方法まで見出した。しかも、彼らは何度もこの一連の行為を繰り返し行うのだ。パズルを解くことにたいするエサの報酬が存在したわけではないのに、この好奇心旺盛なサルたちは熱心にパズルに取り組んだ。

ハーロウはこの状況について「さらには、それを楽しんでいるようだった。パズルを解くために彼らは何時間も費やし、まるでその活動をすること自体が報酬であるかのようだった。」と述べている。そこで、ハーロウは、このような現象に対して「内発的動機付け」という名前をつけたのである。

また、ロチェスター大学のエドワード・デシ教授は、パズルを解かせる実験で、報酬を与えた場合、与えなかった場合、また途中与えたがやめてしまった場合などのケースを検証し、「報酬によって、人のやる気を短期間起こさせることは可能だが、報酬の効果は弱まる」として、アメとムチによる外発的動機づけが長期的なプロジェクトを続けるために必要な長期的なモチベーションにつながらない、むしろ悪影響があると発表した。

これは当時の学界から「邪説だ!」とずいぶん反対を受けた。また、人間には「新しいことややりがいを求める傾向や、自分の能力を広げ、発揮し、探求し、学ぶというい傾向が本来備わっている」として、1975年に「内発的動機付けとは、活動することそれ自体がその活動の目的であるような行為の過程、つまり、活動それ自体に内在する報酬のために行う行為の過程を意味する」と定義している。

モチベーション2.0の盛衰~新しいオペレーティングシステムの誕生

ダニエル・ピンク氏は著書の最初で、モチベーションに関して行き渡っている見解が、いかにビジネスや現代生活を相容れないか検証・説明しています。

その中で、コンピュータと同様に社会にも「人を動かすための基本ソフト(OS)」があると述べています。人間を動かす「やる気の素(DRIVE)」をコンピューターのOSに例え、このOSは人間の心理の奥にあり、ほとんど表面には現れないが、行動のすべてを司どっていると説明しています。

このOS論で言えば、人間の最初のOS「モチベーション1.0」は、生存を目的としていました。「生理的動機付け」と呼ばれることもあります。人間は生きるために、食料を探したり作ったり、野生動物と戦ったりしました。モチベーション1.0が一般的だった時代は、生きるか死ぬかのサバイバルの時代なんですね。

戦後の日本や後進国では「生きるため、社会や組織を継続させるために頑張るという動機付け」で働いている人は数多くいました。しかし、今の日本のように発展し、高い生活水準を持っている先進国では、今日の食事を心配する人はあまりいません。モチベーション1.0は、自身と社会の生存を維持するための動機付けなので、会社で働くときのやる気としては、現在ほとんど機能しないのです。

次のOSである「モチベーション2.0」は、社会の発達に応じて進化したものです。つまり、外的な報酬と罰というシステムに対応します。

モチベーション2.0、つまり「アメとムチ」の外的動機付けが主流となり始めたのは、産業革命が始まった19世紀後半からです。農林漁業と製造業が職業の大半を占めていた当時は、モチベーション2.0による動機付けが、単純作業をする労働者にとって最適な動機付け方法でした。
「シャツをたくさん縫えば、それに応じて報酬が払われる」
「リンゴをたくさん収穫すれば賃金がそれに応じてもらえる」
という答えや手法が決まっていて、あとはどれだけ早く、どれだけ多くこなせるかが課題となる仕事は、インセンティブによるやる気が労働者の成果を高めます。

しかしながら、これら外的なインセンティブが人間にとって必ず合理的に反応する、という前提に基づいて説明されてきた考えが、近年の行動経済学では必ずしもそうでないことが証明されてきました。むしろモチベーションに対して不合理的に反応することもです。

例えば、収入が少なくても、明確な目的意識が得られる仕事のために、実入りの良い仕事をやめてしまう人がいるのは、モチベーション2.0の動機とは一致しません。つまり、人間の経済行動を十分に理解するためには「モチベーション2.0」と一致しない考え方も受け入れる必要があるということです。

モチベーション2.0でマネジメントする

ダニエル・ピンク氏は、「モチベーション2.0は20世紀のルーチンワークには有効だったが、21世紀に私達の組織、仕事に対する考え方やその手法とは、互換性がないことが明らかになってきた」とし、OSのアップグレードが必要であると説明しています。
つまり、現代の仕事には単純作業はもっぱら機械・ロボットにまかせ、クリエイティブとイノベーションのために想像力を働かせることが仕事となっています。このような社会では、インセンティブのような動機付けはあまり有効ではないということです。有効でないどころか、様々なデメリットを発生させると氏は警告しています。

例えば下記のようなデメリットです。

モチベーション2.0によるデメリット

  • 成果を出すことへの必死さが視野を狭め、創造性を失わせる。
  • ホスピタリティなど、成果につながらないことへの意欲が失われる。
  • 目先の成果を追い求めるあまりに、不正を働く、仲間と協力しなくなる。
  • 成果が出ないと罰せられるため、成功への自信を失ってしまう。

 

そして次に出てくるのが「モチベーション3.0」:内発的動機づけです。
核心のモチベーション3.0の説明の前にちょっと脱線して、次章ではモチベーション2.0で行われた「アメとムチ」つまり、「外発的動機づけ」がうまくいかなくなった理由の話をしてみたいと思います。

アメとムチが(たいてい)うまくいかない7つの理由

「モチベーション2.0」つまり「外発的動機づけ」が、本来の意図とは反対の影響を生み出すのはなぜかの理由を7つの問題点で説明してます。

外発的動機づけのデメリット

  • 内発的動機づけを失わせる
  • かえって成果が上がらなくなる
  • 創造性を蝕む
  • 好ましい言動への意欲を失わせる
  • ごまかしや近道、倫理に反する行為を助長する
  • 依存性がある
  • 短絡的思考を助長する

 

アメとムチマネジメントでは、ありきたりすぎて、喜ばないばかりか、逆に反作用があることが実証実験にて報告されています。

例えば、生活に必要な最低限のものが満たされてない人や、仕事の目的や意義が十分に理解できない人にとっては、ある程度の動機づけにはなりますが、ある程度満たされた職場にいて、自律して物事が考えられる人材に対してこの手法を続けると、創造的な発想をむしばみ、短絡的なものの見方を助長し、悪影響をあたえることになります。そして意欲の減退につながりやすく、しだいに成果が上がらなくなることが多数報告されてます。

そこで、内発的動機づけとして、モチベーション3.0が必要になってきます。これは、金銭で報いるのではなく、興味、好奇心、才能の開花、自己の成長、キャリア意識、達成感、顧客や他のメンバー、更には地域社会への貢献意識を中心にした動機づけになります。これは、メンタリングやコーチングによる動機づけ法と同じです。

誤解があるといけないのですが、アメとムチが常に悪影響を及ぼす訳ではありません。
くどいようですが、規則的なルーチンワークならアメとムチマネジメントは効果を発揮します。内発的動機づけも、破壊される創造性も、この種の仕事にはほとんど存在していないから悪影響を受けません。
さらに、仕事の必要性の根拠を説明し、退屈な仕事だと認めつつ、望む方法でその仕事を完成させる自由を相手に与えた場合には、このアメとムチが一層効果を発揮する場合もあるようです。

しかし、残念ながらモチベーション2.0で対応できるルーチンワークは、今後ロボットなどに置き換わり、仕事として少なくなっていくことは確実な未来です。
したがって、ビジネスを考えるのであれば、よりモチベーション3.0に対応したマネジメントを真剣に考えなければならないタイミングに来ています

あなたはどちら?タイプ I と タイプ X

モチベーション3.0の説明の前に、「タイプI」と「タイプX」について少し説明しておきます。
「タイプ」とは、モチベーション(動機づけ)に対する行動原理みたいなものと考えてます。
「I」は「内発的(intrinsic)」から、「X」は「外発的(extrinisic)」からと言えば何となく想像がつくと思います。

例えば、「タイプ I」は、モチベーションとして、第三の内発的動機づけを活力の源とする思考を持つ人物です。このタイプの人は、「自分で人生を管理したい」「新しいことを学び想像したい」、そして「成長して世界に貢献したい」という感じに、人間に内在する欲求を元に行動するタイプです。モチベーション3.0は、21世紀のビジネスを円滑に機能させるために必要なアップグレード版で、「タイプ I」に適しています。

タイプ X」は逆で、内部からの欲求と言うより、外部からの欲求によって動く、つまり外的報酬でマネジメントすると良いタイプです。活動から自然と生じる満足感ではなく、むしろ、その活動から得られる外的な報酬と結びついてます。したがってモチベーション2.0は「タイプ X」に効果があります。

もちろんタイプXの人が活動により生じる喜びをいつも無視しているというわけではないし、タイプIに人が外部からの報酬に全く効果がないというわけではありません。あくまで、その人の主な動機づけがどちらに重きがあるかという話です。

「タイプ I」 は生まれながらの資質ではなく、後天的に培うことができ、その行動は、フォーマンスの向上、健康の増進、全般的な幸福度の上昇に繋がります。

最後に

モチベーション2.0の話しが少し長くなってしまったので、続きは次回に回したいと思います。
次回は、核心であるモチベーション3.0の「3つの要素」について、企業における事例などを交えてご説明します。

最後までお読みいただきありがとうございました。

モチベーション3.0でマネジメントする

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▶ モチベーション3.0とは(Part3)

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