2019.02.28

ソーシャル・レコグニションとは

前回は、仲間や同僚などが作用し、お互いの行動、生産性に影響を与え合う「ピア効果」と、それを利用した報酬制度である「ピアボーナス」についてご説明いたしました。

ピア・ボーナスは、従業員同士が互いに仕事の成果や行動を評価し、報酬を贈り合うことができる評価制度で、HRテクノロジーの進歩で、従業員間で報酬を贈り合えるツールが登場し、メディアでもよく取り上げられています。

今回は、ピアボーナスなどピア効果を利用した昇給・昇格に変わるモチベーションアップの手法として「ソーシャル・レコグニション」の考え方に注目してみました。

ソーシャル・レコグニションとは

英語の「レコグニション(recognition)」の意味は、「承認」とか「認識」と訳されます。

日本の会社にも、もともこの「レコグニション」が人事制度として存在していました。
例えば、月間売上などの業績表彰や勤続に関する表彰などです。これらの精度は、会社が従業員の貢献に対して、給与アップやボーナスなどの金銭報酬(リワード)で評価するだけでなく、表彰制度といった「賞賛・承認」といった「栄誉」をもって報います。中には、より賞賛・承認効果を上げるために社内報や社内ビデオニュースに載せたりするところまあります。ただこれは数字など上から見た会社からの一方的な評価でした。

こうした会社からの一方的な「レコグニション」に対して、「ソーシャル・レコグニション」は、組織においてメンバー同士が互いを承認しあうこと、また、その仕組みのことを指します。
基本的には社員同士が「賞賛・承認」するのがソーシャル・レコグニションで、そこに金銭的なものが含まれるのが前回説明した「ピアボーナス」です。「ピアボーナス」は「ソーシャル・レコグニション」の一例と言うことです。

最近では、社員同士が気軽に褒め合える社内向けのHRツールも登場し、社員のモチベーションアップや人事評価制度を補助する目的で導入する企業が増えています。

みんなに認められる

ソーシャル・レコグニションの効果

ソーシャル・レコグニションは、従業員同士が感謝や称賛を伝えあう「ピアツーピアの称賛システム」です。そこには「ピア効果」によるエンゲージメントやモチベーションアップの仕組みがあります。

今までは、社員のエンゲージメントの向上には、昇給や昇格が有効と考えられていました。しかし金銭的報酬は、もらった時に一時的な幸福感を生み出しますが、それが永続的なエンゲージメントやモチベーションアップにはつながりません。ソーシャル・レコグニションは、長期的なエンゲージメントや、恒常的なモチベーションアップに効果があると言われています。

例えば、ソーシャル・レコグニションのメリットをまとめるとこんな感じです。

①従業員エンゲージメントを高める

一般的な離職理由の上位は「人間関係が原因」だったり、「周囲に適正に評価されていないと感じる」という理由です。そうした気持ちをソーシャル・レコグニションという見える形で評価されることで、満たしてあげることができます。

②優秀な人材を流出させない

「自分が必要とされている」と表立って評価されることによって、帰属意識を想像以上に高める効果があるそうです。結果、優秀な人材を流出させない離職率も下がります。

③評価の漏れを防ぐ

前回のピアボーナスでも述べましたが、数値や表立ってわからない「縁の下の力持ち」的な働きをする人材を正しく評価し、数値などで計りにくい貢献度を知ることができます。結果今後もポジティブに従事してもらうことができます。くすぶり易い影の存在にも光が当たるので、結果として、会社の雰囲気が良くなるのです。

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ソーシャル・レコグニションの事例

世界的にも、ピアツーピアで感謝を伝える「Achievers」や360度評価を活用した「Bonusly」などのサービスが登場し、ソーシャル・レコグニションを職場環境の改善につなげようとする取り組みが増えています。

①メルカリのメルチップ賞

フリマアプリとしてシェアNo.1のメルカリでは、レコグニション制度として「メルチップ賞」というリワードを設けました。メルカリは急成長した故に、メンバーの顔と名前が一致しなくなり、コミュニケーションロスから問題が発生するという状態だったそうです。
そこで、「メルチップ(mertip)」と「感謝の言葉」を併せて相手に贈るという仕組みを導入し、ソーシャル・レコグニションを制度として成功させました。メルチップは1ポイント=1円とし、最も多くメルチップを得た従業員にメルチップ賞を授与するそうです。メルチップなしで感謝の気持ちだけを贈ることも可能で、これもコミュニケーションアップに貢献しています。

ベースとなっているシステムは、ピアボーナスの説明時に出てきたFringe81の「Unipos(ユニポス)」です。詳しくは「ピア効果とは、ピアボーナスとは」の回をご覧ください。

Achievers

Achieversは P2P (Peer to Peer)方式で、相手に感謝の気持ちや報酬を与えることができるツールです。1対1でのやりとりなので、周りの人に気兼ねせず、自分の気持ちに正直にお礼ができるという特徴があります。つまり集団心理に左右されず、自分の中にある素直な感謝の気持ちを直接相手に伝えることができる賞賛システムなのです。

Achieversは何よりも、「簡単に」「すぐに」お礼が言えることを重視しています。感謝のタイミングが遅れてしまうと、感謝を受ける側の効果が下がってしまうそうです。働き方について研究している会社なので、様々な働きやすさを追求したシステムを開発しています。その中の機能の一部がレコグニション&リワード機能なのです。

Bonusly

米国のBonusly社のHRシステムでは、360度評価機能に「ボーナスポイント」という要素を加えることで、組織内のソーシャル・レコグニションを活発化させる狙いがあります。社員同士による360度評価を実施しつつ、特に良いと思う同僚にはボーナスポイントを付与することが認められています。獲得したボーナスポイントは、そのままアマゾンやスターバックス、PayPalなど数多くの選択肢から自由に選んで交換することができるので、エンターテイメント性・ゲーミフィケーションエッセンスも持ち合わせたシステムです。
2012年の設立以来、オラクルなど大手にも採用されて実績を伸ばしています。

最後に

360度評価方式は、評価の客観性を高め、コンピテンシー(行動特性)の浸透につながると話題になりました。しかしながら、年に数回の評価時のみに実施されるため、良かったことを忘れてしまうなど、抜け落ちる評価点も多いと思います。

ソーシャル・レコグニションのツールの多くは、「すぐに称賛・感謝できる」ことに重点を置いているところが多いです。即時性もモチベーションアップに大切だと分析されているのです。また、「何が良かったのか」「みんなが自分のどこを認めてくれたのか」は、その場で即時評価されないとなかなかわかりにくいのかもしれません。

ソーシャル・レコグニションの価値は、単に褒め合って気分を良くすることではなく、組織の中で自分の存在が肯定されることにあると思います。上司による評価は、組織内でのその人の業務の必要性を、必ずしも正しく評価する基準で決められているわけではないからです。したがって、組織的には大切な人材なのに、評価基準から漏れている不遇な人は結構います。こうした人が、周りからさりげなく、かつオープンに賞賛され、さらにそれがちゃんと給与にも反映されることによって、公平性や納得感を得ながら働くことができるのは非常に大きな働き方の進化だと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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