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アクイ・ハイヤーとは

人材教育の言葉ではありませんが、「アクイ・ハイヤー」という言葉をご存知でしょうか?


アクイ・ハイヤー」は買収して雇うことの造語です。「買収採用」なんて呼ばれ方もしますが、言葉の意味としては「買収による人材獲得」の意で、人材教育の現場でもこの言葉を頻繁に聞くようになりました。


一生懸命人材教育を行っても、時間がかかってサービスのスタートアップに間に合わない、そもそもその技術や教育できる人間が企業内にいなかったり、採用しても全然集まらなかったと言った事情で、「アクイ・ハイヤー」に活路を見出そうとしているのだと思います。


今回はこの「アクイ・ハイヤー」について、簡単に説明したいと思います。




目次



アクイ・ハイヤーとは

前段で触れましたが、「アクイ・ハイヤー(acqui-hire)」とは、英語の買収(acquisition)と雇用(hire)を掛け合わせた造語で、買収による人材獲得を意味します。


言葉として使いだしたのは、米Googleが始めたのがきっかけと言われています。優秀なエンジニアや開発チームを獲得するために、そうした人材が所属する零細ベンチャー企業をまるごと買収するのです。


アクイ・ハイヤーは、一般的な「買収」が「事業とブランドを買う」のとは異なり、「スタートアップの経営陣や技術者を買って自社でやる」という意味合いが強いことが特徴です。 現在ではGoogleだけでなく、AppleやAmazonといったIT企業を中心に、盛んにおこなわれるようになりました。


アクイ・ハイヤーがシリコンバレーから広まったのは、技術者・開発チーム人材の慢性的不足が原因です。


GoogleやApple、Amazonといった好待遇のメジャー企業ですら、常に人財不足の状態で、新たにサービスを立ち上げようとしても、それに合ったエンジニアが集まらず、かといって既存の人材を使って育てるにはこの業界のスピードが速すぎて間に合いません。


そこで、自分たちがこれからやろうとしていることと同じ、もしくは似たようなことをスタートアップしている企業(主にお手頃な零細ベンチャー)をリサーチし、彼らをまるごと買収します。丸ごと買収するので、買収先企業の開発リーダーや開発チームを手っ取り早く確保でき、サービスを迅速に立ち上げられるのです。


また、単純に人財だけ欲しいという場合もあります。ある製品を作っているスタートアップ企業をアクイ・ハイヤーしても、その製品は出さず、その技術者だけを目的の開発に回すというケースもあります。




アクイ・ハイヤーの実績

アクイ・ハイヤーと言えば、真っ先に浮かんでくるのは当然Googleでしょう。日進月歩のサービス開発を進めるために、グーグルは毎週のごとくスタートアップをアクイ・ハイヤーしています


実績として、Googleは2010年から2013年前半までに、約196社を買収、推定で約1兆8700億円(187億ドル)を投じています。ざっくり1年間に約50~60社のペースでアクイ・ハイヤーを繰り返している計算ですが、一件あたりの買収額は平均で30億円程度にすぎません。この中には利益からほど遠い企業もたくさんあります。これは同社が、アクイ・ハイヤーの手法で「人材獲得を目的とした買収」を展開しているからです。


ここのところ、Googleは複数のハードウェア関連企業のアクイ・ハイヤーを実施しています。例えばロボットの分野では、四つ足ロボット「ビックドック」で有名な「Boston Dynamics」を買収、東大ロボットベンチャーの「シャフト」や、MITのスピンアウトベンチャーでロボット・アーム研究の「レッドウッド・ロボティックス」、ロボット用カメラのベンチャー「ボット・アンド・ドリー」などを次々と買収しています。どれも最先端ではありますが、利益を出しているわけではありません。


そのほか2014年には、ロボット以外にも「ネスト・ラボス」を3,200億円(32億ドル)で買収しました。同社は、ネットワーク対応サーモスタット(空調)スイッチや火災報知機を製造販売している家電ベンチャーで、設立者・CEOのTony Fadell氏は、かつてアップルで開発者としてiPodの開発リーダーを務めていた人物です。買収後にGoogle Glassプロジェクト責任者になっています(現在は辞任)。この件はタレント・バイとしても話題になりました。


Googleだけでなく、AppleのiWatchの開発チームもアクイ・ハイヤーで集められた人材だったことは有名です。


日本国内では、DMMが非常に積極的にアクイ・ハイヤーに取り組んでします。質屋アプリ「CASH(キャッシュ)」の買収も話題になりました。


ペイパル、スペースX、テスラなどを創業した実業家・投資家であり、自身もエンジニアだったElon Musk氏のもとには、アクイ・ハイヤーの売り込みが殺到しているとか。確かに彼の事業のスピードはアクイ・ハイヤーなしには実現できなかったのでしょう。


このようにITなど先端技術関連事業を中心に、アクイ・ハイヤーは単純な企業買収案件よりも積極的に行われるようになりました。




アクイ・ハイヤーは果たして儲かるのか?

アクイ・ハイヤーが積極的に行われている理由を表すキーワードは「コスト」と「スピード」です。


1から人材を集めて開発チームを立ち上げようとしても、時間とコストが膨大にかかってしまいます。 特にこれらのIT企業で重視するのは「スピード」でしょう。たとえ数十億円かかっても、ライバルとの熾烈な開発競争に勝つことができれば、投資費用などすぐに回収できるのでしょう。


もっとも、多くのベンチャー企業がしのぎを削るシリコンバレーという圧倒的な産業集積があってこそ、ここまでスピードアップできたのかもしれません。


また、Googleのケースでは、先行投資的な意味合いも強くなります。 Googleは既にスマホなどの市場の縮小の先を見ています。その証拠に市場が未発達のホームオートメーションを狙ってネスト・ラボスを買収(2014年2月)しました。Googleほどの企業でさえ、もうすぐに動かなければホームオートメーションを制せないという判断だったのでしょう。 結局、若干Amazonの「Echoe」に先を行かれましたが、Googleのホームオートメーション第1弾として登場した「Google home」はまさにお家芸のアクイ・ハイヤーの成果だったのです。


また、アクイ・ハイヤーは普通の買収の感覚で判断しないほうがいいと思います。日本国内では、買収後に被買収企業のサービスが伸びたという話はまれでした。まさに「事業」よりも「人財」を買ったと思うほうが良いと思います。


アクイ・ハイヤーが果たして儲かるのか?という疑問については、その企業のその後の成長を見て判断するしかないのかもしれません。 そして、アクイ・ハイヤーは「オープン・イノベーション」を積極的に活用できる企業に向いていると言えます。



オープン・イノベーション

アクイ・ハイヤーのように、社外から人材や技術などのリソースを取り込むことで、開発競争を優位に進めることを「オープン・イノベーション」と呼びます。


逆に、研究・開発施設などを社内で整備し、自前のエンジニアを育成して、新サービスの創出を目指すことを「クローズド・イノベーション」といいます。


後者の開発手法では、コンピュータ関連やネットビジネスなど、技術革新のスピードが著しく激しい分野の競争にはなかなか対応できません。だからこそアクイ・ハイヤーで、人もアイデアも、手っ取り早く「組織ごと買う」のでしょう。



日本はクローズド・イノベーションが根深い

Gooogleは年間で50社から60社ものベンチャーを買うことで、他社との開発競争に勝っています。Gooogleに限らず、トップ企業のほとんどが「オープン・イノベーション」を使って開発競争を優位に展開してきました。


対して日本は未だに「クローズド・イノベーション」が色濃く残っている面があります。かつて日本は大手が、中小や町工場と言った技術の匠達とともに成長してきたという歴史があります。企業の独立性を維持しながら協力関係の中で成長してきました。しかし、第2次産業が主流の時代とは異なり、比較にならないスピードでイノベーションが起こる現在の状況には、その関係性では対応できていないというのが現状です。


残念ですが、日本企業が踏襲してきたクローズド・イノベーションや事業開発手法がコンピュータやネットビジネスでいかに弱力であるかを痛感させられています。



最後に

基本的にアクイ・ハイヤーによって買収された企業側の人材が、買収側で活躍することも多いと聞きます。それは、アクイ・ハイヤーが会社として買うものの、欲しいのは「企業」ではなく「人(チーム)」だからなのでしょう。 結果新たな人材が本社の人材育成に良いシナジーをもたらしています。


気をつけるべき点もあります。特にベンチャーの独特のカルチャーが、大企業のカルチャーとぶつかったりもします。急速な環境変化は従業員のモチベーションに影響します。また、事業とともにその人たちが活きるように配慮する必要があります。そうでなければ彼らは優秀なのですぐに次の職場を見つけ、逃げてしまいます。そのためにも、買収した企業のTOPやスター社員を本社側に呼び込んでパイプ役にし、風通しを確保したりする工夫が必要です。


今回はアクイ・ハイヤーについて説明しました。若干人材教育とは違うカテゴリの話だったかもしれませんが、あなたの会社がどうしてもやりたいことがあった場合、そこにスピード感が要求されるのであれば、アクイ・ハイヤーによる展開も有効だと思います。 そして良い人材を育てるには、良い手本が必要です。企業の買収は安くはありませんが、その手本が与える効果を考えれば、人材投資として決して無駄にはならないはずです。


最後までお読みいただきありがとうございました。



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