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ナレッジマネージメントとは

団塊の世代が大量退職した事により、組織内のノウハウが大幅に減少していしまい、せっかく採用した後任人材を活用し切れていないという企業も多いのではないかと思います。


そんな中、生産管理、販売管理、財務管理、人的資源管理、情報管理に続く第6の管理領域と言われる「ナレッジマネジメント」が再び注目されました。


今まで属人的だった個人の持つ「暗黙知」をシステムなどに取り込んで「形式知」にすることにより、企業活動で得てきた知的資源「集合知」がストックされていき、知識の共有化、再利用の促進につながります。


ナレッジマネジメントは経営手法であり、その守備範囲は営業・マーケティングから人事評価に至るまで多岐に及びます。今回は人材教育、育成などの面にも触れながらご説明したいと思います。



目次



ナレッジマネジメントとは

ナレッジマネジメント(knowledge management)は、日本語で「知識管理」「知識経営」となりますが、訳語はあまり使われず、そのまま「ナレッジマネジメント」で使われています。


実はナレッジマネジメントが世の中で注目されるようになってから、そろそろ20年くらになります。企業の競争優位の源泉としてナレッジマネジメントに注目が集まったのが1995年頃でした。提唱者は、一橋大学大学の野中郁次郎教授と竹内弘高教授です。1990年代に発表された日本初の経営理論とされており、インターネットの普及とともに、どんどん情報のスピードが速くなると、企業活動にもスピードが要求され、このアプローチによる研究や取り組みが急速に広がりました。


ナレッジマネジメントを端的に表現するのであれば、「知識の管理」と「知識に基づく経営(知識創造の経営)」です。


会社組織のように多くの人達によって創造される知識は「集合知」と呼ばれます。残念ながら、個々の社員が持つ知識のすべてが、組織の持つ知識であるとは言い切れません。


個々の社員の、それぞれの経験やそれぞれの技術で培われていく、勘や知恵のようなものを「暗黙知」と言います。その暗黙知を文書などの形にすることで「形式知」となり、それがが集まって初めて「集合知」ができあがります。


ナレッジマネジメントとは、企業が蓄積した集合知である独自の営業ノウハウや技術情報、顧客情報などを全社的に共有し、企業が持つ競争力を活性・向上させる経営手法です。つまり、ナレッジマネジメントは、集合知の活用だけでなく、組織にとって有効な知識や情報を共有することで、新たな知識が生み出され活用されるというシステムを目指しています。



ナレッジマネジメントのメリット

インターネットによる情報化がビジネスの中心的役割を担いだして、仕事での時間の使い方に変化が生じました。


ある調査では、労働時間の3割を「検索」や「調査」に費やしているそうです。労働人口の減少、労働時間の長時間化、労働生産性の低下が進む中、 企業競争力を 維持・強化するためには、多くの時間を費やしているこの「情報検索時間」や「資料作成時間」を見直し、 従業員1人1人が組織のナレッジを活用して、自律的に働ける環境を整える必要があります。ナレッジマネジメントシステムが最初に注目されたのは、この「無駄な検索時間」を削減する効果でした。


社内イントラなどにナレッジマネジメントシステムを導入することで、全社員がナレッジ情報にアクセスできるようになります。オンライン化が、従来の会議や口頭での共有よりも正確性、スピードともに優れているのは言うまでもないでしょう。以前は、営業職や職人といわれるような技術職は、見よう見まねで仕事を覚えていくスタイルがありました。しかし、情報だけでなく、営業ノウハウや技術をデータベース化することで、専門的で価値ある情報を即座に共有・伝達するスピードもあがります。結果として、従業員の生産性の向上し、企業間の競争力を強化することができます。


近年は、SNSなどコミュニケーションツールを搭載したグループウェアなどがナレッジマネジメントで積極的に使われてます。会社には経験の浅い若手からベテランまで、経験の絶対量、経験の質が異なる様々な暗黙知が存在します。この人たちをコミュニケーションツールで結びつけることによって、新しい効率が可能となります。

ベテラン技術者であれば、ほんのひと手間の感覚的なプロセスが成果の質を上げていることがあります。事務職でも煩雑なタスクを短時間に確実に進める方法を見出して習慣にしている人がいるかもしれません。一見暗黙知を持っていなそうな新人が、ネットで見つけたツールを使って大幅な効率化を実現していることもあるのです。 コミュニケーションツールは、こうした「ちょっとした暗黙知」を集合知に変えるのに向いています。


また共有の障害がなくなることで、縦割りの組織構成では難しかった他部門との情報交換やノウハウを手に入れやすくなれば、独自のイノベーションや新たなサービスの創造がしやすい環境が生まれます。他部署のナレッジを見て、刺激を受けることも大切な効果です。


リスクを減らす意味でもナレッジマネジメントは大切です。組織の中で、誰にも共有されない業務を進めるための知識(暗黙知)があることは組織にとってはリスクと言えます。その社員が辞めてしまった場合、その知識を持つ人がいなくなることは、組織にとっては「人的損失」と「知的損失」が同時に起こったことになります。属人的な仕事をする社員は、仕事に追われて共有する余裕をなくしがちなので、共有化を促進して負担を分散化することでナレッジの資産化と離職防止の両面で効果があります。




ナレッジマネジメントシステムの活用例

冒頭でも述べましたが、ナレッジマネジメントは経営手法であり、その守備範囲は営業・マーケティングから人事評価に至るまで多岐に及んでいます。そのため、ナレッジマネジメントをシステム化した場合の使い方も多岐に及びます。


例えば、ナレッジマネジメントを「分析・戦略」に活かすのであれば、経営支援的な位置付けで、蓄えた成功例や失敗例、また業務プロセスなどの集合知をもとに、経営者は会社を左右する重要なディシジョンをします。


昔からのナレッジマネジメント的な手法として、「カスタマーサポート向けのナレッジマネジメント」があります。営業担当者やカスタマーサポートに届いた顧客からの意見やクレームを、ナレッジマネジメントシステムに搭載し、その分析と適した対処もセットでデータベース化すること迅速かつ最適な対応が可能となり、顧客満足度の向上が期待できます。これは今や当たり前と言えるくらいポピュラーな使い方でしょう。


他にも、法務部や財務部、情報システムやセキュリティなど、高度な専門知識が必要な部署向けに、ナレッジをDB化するのも良く使われる使い方です。「ヘルプデスク型」または「専門知型」のナレッジマネジメントシステムです。


そして、今回本コラムで注目している「人財教育」のシーンでも、ナレッジマネージメントは活用されています。 優秀な成績や実績を残した社員の知識や経験をナレッジとして、社員の教育に役立てるなどが「教育型ナレッジマネジメント」です。 コンピテンシー的な思考・行動パターンや問題解決方法など分析して、すぐに参照できる形でデータベース化することで、社員のスキル・質の向上効果が期待できます。 また、研修のデータやその後の変化などをまとめ、こういった人材を育てるにはどういったプログラムが良いのかなど、教育担当者が参考にすることも可能です。


また、ナレッジマネジメントシステムの役割として注目されている「ノウフー(know who)」機能も人材育成に一役買ってくれます。 ノウフーとは、「誰が何を知っているのか」「どこにどんな業務の経験者やエキスパートがいるのか」といった組織内の人的資源情報を蓄積し、検索できるしくみです。 詳しくはまた別の機会にご説明しますが、必要なナレッジがテキストや動画などで伝えにくい、もしくは、属人度が高く、人の手で相伝していくようなものの場合、無理にナレッジをコンテンツ化するよりも、「社内でそのナレッジを持っている人を結び付けてくれる」ほうが、効率が良かったりします。


このようにナレッジマネジメントシステムが担うナレッジの取り回し方は、目的や業種により異なってきます。


 

“知識共有化(knowledge sharing)”

知識共有化とは、今まで社内の一部の人達の知識を、社内掲示板やSNSなどツールを使って、集団全体への共有を図るものです。

具体的には、企業内のグループウェアなどを使ってコミュニケーションを取り、その中で記録されていく知識を共有します。

知識共有化の動きはネット黎明期から盛んで、QAサイト(Yahoo知恵袋、OKWave、はてな)のように広範な分野を扱うサイトや、Apple Support Discussionのような特定者向けサイトによる知識共有化の試みが行われてきた歴史があります。

企業内で行われる検索システムを「エンタープライズサーチ(企業内検索エンジン)」と言います。 また、ヘルプデスク型(FAQ)のシステムでは、システムに業務内の不明な点を入力すると、方法を知っている社員が答えを入力してくれます。これを繰り返してナレッジが蓄積されるわけです。

 

社員教育にナレッジマネジメントを活用する

ナレッジマネジメントシステムは人材育成、社員教育のプログラム上でも利用できます。研修やOJTには、時間もコストもかかります。かといってスキルを身に着けないまま働かせても効率は悪くなります。


そこで、今まで業務をする上で必要だったナレッジをコンテンツ化して登録しておきます。問題に対面し必要になった時に、自分で探せるようにします。


ナレッジコンテンツ(教材)を作るうえで大切なのは、手順やノウハウなどをドキュメントした「形式知」だけを掲載するのではなく、「なぜ、そのようにすることにしたか?」という経緯や背後に隠れている問題点なども一緒に掲載することです。問題に対面した人が、ナレッジマネジメントシステムを使って解決を探る際にも、この経緯やのちに問題となるポイントなどが書かれていることにより、様々なケースに合わせてスムーズに対応・解決することができます。ナレッジマネジメントシステムは単なる業務データベースではなく、社員全員で作るクリエイティブな集合知であることが大切です。


それらのナレッジは常に評価され、時代に合わせてバージョンアップしていかなければなりません。作りっぱなしで更新されないナレッジは意味がないからです。


したがって、ナレッジマネジメントシステムにナレッジを蓄積する手順を効率化し、社員に積極的に関わってもらう仕組みづくりしましょう。


 

“可視化(visualization)”

可視化とは、多次元・多要素で理解しにくい情報を、人間が得意な視覚認識、つまり見える形で表現し、理解しやすくさせることです。安価に動画が配信できるようになり、かつて作ったテキストベースだった自社のライブラリのコンテンツを映像などに作り直して、ナレッジマネジメントシステムに再登録するといったナレッジのリニューアルも盛んにおこなわれてきました。 可視化の新たな試みとして、「ノウフー(know who)」と呼ばれる組織内の人的資源情報を蓄積し、検索できるしくみがあります。 もともとマニュアルのように誰が見ても理解できるようにできる「形式知」とことなり、「暗黙知」は、文章や図式ではっきりと明示化しにくい、属人的な技能や暗黙のうちにつくられた手法や事例です。したがって、「探しているナレッジを知っている人を探して聞く」という方法を取ることで、コンテンツによる可視化をしないというやり方です。

 

ナレッジマネジメントシステム導入時の注意点

ナレッジマネジメントを導入する際は、現場の利用者が使用しやすいインターフェースや欲しい情報、抱えている課題を中心に考える必要があります。具体的にはどういうことを注意すればよいでしょうか?


まずは、システムから参照できるようにしたいナレッジコンテンツがちゃんと情報として掲載できるものかを考える必要があります。また、掲載するにあたり、「コンテンツの形式」はどの形が適切かということも大切です。テキストやイラストだけではわかりにくいものは動画や3Dなどのコンテンツにしなくてはいけません。


利用シチュエーションに対応したシステムであることも大切です。 カスタマーサービスセンターや開発などの現場ではPCを使っての利用がメインかもしれません。しかし、営業マンや顧客に出向いて行うサポート部隊にとって、PCのみの環境は最適ではありません。 また、工場など作業の現場での指導に使う場合も同様です。iOSなどのスマホ・タブレット端末などで、「欲しい時にその場ですぐ確認できる」というのは、ナレッジマネジメントシステム活用のカギとなる点です。当然閲覧は社内イントラのみというのもかなりの足かせです。社外でもセキュアな形で参照できるのが望ましいでしょう。


社員のITリテラシーに沿わないシステムを導入したため、利用率が極めて低かったり、初期の実装だけで、その後の運用が疎かになるといった失敗例もあります。


ITリテラシー以外の要因もあります。ナレッジを持っている人が多忙により時間が割けない、自分のノウハウの共有したくないなどの理由で、協力者である優秀な人材のノウハウを可視化できないという問題もあります。 また逆に、はりっきって隅から隅まで用意できても、ナレッジマネジメントシステムが過度なマニュアルとなってしまい、かえって現場社員の思考する機会を奪ってしまうこともあります。


こういったケースを踏まえ、最近のナレッジマネジメントシステムでは、SNSなどを使ってコミュニケーションを強化することによって、ナレッジを共有する形のシステムが増えています。



ナレッジマネジメントシステム構築に使えるツール

ナレッジマネジメントに使えるツールとしては、社内情報の共有を目的としたイントラネット、社外の企業と情報を共有するエクストラネット、膨大な蓄積データを検索できるエンタープライズサーチなどに分類されます。


社内情報の共有を目的としたツールとしては、エンタープライズサーチツールがあります。

有名なところではマイクロソフトの「Yammer」です。 コンセプトは組織内の情報活性です。オープンなコミュニケーションによる透明性の確保、成功事例の共有によるさらに強力なコミュニティの作成、アイデアのクラウドソーシングによるイニシアティブの推進などを推進するツールとして人気があります。



エンタープライズサーチの核である、「検索力」で勝負する「Neuron」も昨年話題になりました。Neuronは「検索力」と、その検索を効率化するのに欠かせない「情報の整理」に優れた機能を持っているツールです。




このほかにも、グループチャットやビデオ会議と言ったものもナレッジ共有に使えますし、ヘルプデスク型(FAQ)サービスもナレッジ共有に効果があります。


 

“ナレッジマネジメントとデータマイニング(data mining)”

データマイニングとは、人工知能や統計学を利用して、これまで蓄積してきたデータから知識を自動的に取り出そうとする仕組みです。文章(テキストデータ)を単語やフレーズに分解して、社内に蓄積されているデータから瞬時に検索したりします。 データマイニングはマーケティングの分野で行われている購買傾向やレコメンドなどで使われている技術です。 例えば、Amazonなどである本Aを買う人は、後に別の本Bを買うことが多いという傾向データから、本Aの 購入者に本Bを薦めるダイレクトメールを送るなど使われています。 こうした傾向を自社で使っているPOSやオンラインショッピングのDBから法則性を見つけ出して、分析結果をシステムで共有できるようにします。 データマイニングの良いところは、自動で行われるので、情報の有益性の判断をしたり、まとめたり登録する人の手間が軽くて済むことです。また、今まで社員は誰も気づかなかった思わぬ結果を見つけることもあります。そのためには、仕事の内容をしっかり蓄積するためのシステムが整っていなくてはいけません。

 

ナレッジマネジメントはPDCAで

集めた集合知は変わらないものありますが、いずれ古くなってしまうものがほとんどです。また、社会状況やイノベーションによってナレッジが刷新されることもあります。 間違ったナレッジがあった場合、それは報告され、訂正されなくてはいけません。そうしないと、ずっと失敗を繰り返すことになります。


たくさんの中からしっかりと「使える知識」を蓄えていくためには、ここでもPDCAサイクルの考え方が役に立ちます。


 
  1. 知識の収集 構成員が個々に持っている知識情報を効率的に収集し、共有スペースに蓄積していく。

  2. 知識の整理 収集・蓄積された膨大な情報の中から、「使える知識」を抽出する。

  3. 知識の利用 ビジネスの現場で、知識を活用していく。

  4. 事例の評価 ビジネス現場におけるナレッジマネジメントの効果を測定する。

 

この「1→2→3→4」のサイクルを繰り替えし業績を上げていきます。



最後に

企業内で知識の集積を図り、データとして集積した知的情報を活用して組織力を向上させることは、会社の成長上大切なステップだと思います。


今まで口伝中心にしてきたため、いきわたらなかったり、いつの間にか失ってしまった大切なナレッジはどの会社でもあるでしょう。今後失わないためにもどこかのタイミングでナレッジマネジメントの体制を整えることをお勧めします。


最後までお読みいただきありがとうございました。


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