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コンプライアンス教育とは(その2)

前回(その1)では、コンプライアンスが必要とされるに至った過程や違反の例などを紹介しました。そして、コンプライアンスは企業全員が取り組むべき問題であり、企業や団体がコンプライアンスを徹底するためには、「組織全員へのコンプライアンス教育」が必須であることもご説明しました。


その2の今回は、そのコンプライアンス教育の進め方や教育の手法についてご説明いたします。



目次



コンプライアンス教育とは「コンプライアンス意識を高めること」である

前回の最後にも少し述べましたが、社員へのコンプライアンス教育とは、「社員全員のコンプライアンス意識を高めること」にほかなりません。 「コンプライアンス意識」とは、「問題に対してどう行動するのが正しいのかを意識しながら、常に行動する」という意味になります。 「コンプライアンス意識」が向上すれば、企業の持つ社会的責任に対する意識も自然と向上するので、社員に対するコンプライアンス教育は、企業の経営に対しても非常に意味があります。


「コンプライアンス意識を高めること」には、当然コンプライアンスの教育をする必要がありますが、その第一歩は、就業規則や規定の内容とそれらが持つ意味を社員にアナウンスすることから始まります。もちろん、就業規則や規定の整備を行っただけではあまり意味がなく、それらが必要な時に「すぐ」閲覧できるようにしなくてはいけません。


次に、どういうことをすると良くないのか?コンプライアンス違反とは何なのか?それをすると企業がどうなってしまうのか?こうしたことを具体的に事例を使いながら理解させます。ケースワークや行動における基準などを説明し、理解・浸透させてください


忘れてはいけないのが、社内における情報伝達や相談窓口といった制度に関しても、しっかり周知して、いざという時に利用できる状態にします。個人で問題を抱えてしまわず、リスクの芽を積極的に積むためには、活発な情報発信と、日常的なチェックの制度が必要です。問題が起こりかけたら、コンプライアンス委員や上司や同僚を通して「指摘」「改善」を促すことを習慣化します。




コンプライアンス体制の準備と教育の流れ

組織としてコンプランアンス体制を整え、その教育を進める場合の第一段階は、プロジェクトとして企業理念や企業倫理を話し合い、文書化して、制定するところから始まります。


次に、企業コンプライアンスを浸透させる為の整備計画を立案します。コンプライアンス教育のプログラムを作成し、管理するシステムを考えます。


これらを立案すると同時に、整備計画を推進させ、定着させる為の組織の結成・整備も必要になってきます。コンプライアンスマニュアルも大事ですが、マニュアルに沿って経営活動に対するチェックを行う組織の整備が、企業コンプライアンスの肝になります。 そのため、人事部や管理部内で組織され、通常業務と兼任するなると、負荷がかかりすぎて機能しなくなることもあります。企業規模にもよりますが、外部の専門家(コンサルタントなど)と相談しながら、ちゃんと機能するチェック体制を整えると良いでしょう。


これらを整備したうえで、全社員レベルのコンプライアンス教育を進めていきます。コンプライアンス教育は研修などの「学習」だけでなく、日常的なモニタリング活動も重要な要素です。講義だけでコンプライアンス意識を根付かせることは難しいので、モニタリングや監査を通して、意識付けをしていくことが必要です。


そして、社会状況などの変化に合わせて追加・改変していきながら運用していきます。 次はこれらを詳しく見ていきたいと思います。



まずはドキュメントの用意から ~企業理念・倫理・行動規範の制定と文書化~

コンプライアンス教育の前段階として、コンプライアンス関連文書の整備があります。コンプライアンス関連文書には、「倫理方針」「行動指針」「コンプライアンス・マニュアル」「内部規程」などがありますが、それらがどこにあるのか、その所在をしっかり決めて社内に周知する必要があります。またこれらがいつでも必要なときに閲覧できるようになっていなくてはいけません。


そして、これらのドキュメントは作りっきりではなく、業務拡大などでのアップデートや社会変化に応じてバージョンアップもきちっとしなくてはいけませんので、運用体制の整備も必須です。

 

「企業理念・倫理・行動規範の制定と文書化」

  1. ドキュメントの所在をしっかり決めて、漏れなく社内に周知する

  2. 必要なときにいつでも閲覧できるような仕組みを作る

  3. ドキュメントの頻繁なアップデートを考慮した運用体制を作る

 


体制構築・整備がコンプライアンス教育の基礎

コンプライアンス教育を行うには、行動規範と社内規定の意味をきちんと理解させる事が大切です。


まずコンプライアンス推進室といった組織を社内に立ち上げるなどの体制構築が欠かせません。体制を構築することにより、声高らかに社員に対して会社の本気度を明示することができるようになります。これは遊びではなく、会社も本気で考えているという一種のポーズは、社員の危機意識を高めることに繋がります。


コンプライアンス推進室などが具体的に目標を設定してアナウンスすることにより、社員に対してコンプライアンスをわかりやすくする効果が期待できます。対外的に、つまり顧客や株主、投資家にも、コンプライアンス推進室や相談窓口があることで、コンプライアンス教育に力を入れているという企業というアピールになり、企業のイメージやブランド力の向上にも一役買っています。


社員のコンプライアンス教育には、行動規範を徹底させる事が重要です。では、行動規範とは一体どのような内容なのでしょうか。

 

行動規範とは何かを理解する

  • 行動規範を制定した意味や目的、義務を知る

  • 地域社会、国際社会、地球環境への貢献や配慮を理解する

  • 顧客、取引先、他社、株主、投資家との適切な関係やルール、モラルを守る

  • 役員や社員同士の組織としての健全性の維持

  • 会社や会社の財産の適正な管理と保持

  • コンプライアンスの運用と維持

 

「行動規範通りに行動する」ということはシンプルですが、そこにはいろいろな状況や利害が発生します。大切なのは「企業利益と倫理が相反する場合には、必ず倫理を優先させる」という基本原則を全員が徹底的に理解し納得することです。


企業の活動には上下関係や利害の問題が発生ますので、行動規範をわかっていても、その通りに行動することが難しいケースがあります。しかし、そういったケースを例外として見逃し続けると、コンプライアンス体制は形骸化してしまし、結果として深刻な問題を生み出すことになりかねません。 「悩んだときは行動規範を第一に考える」ことが社員のコンプライアンス教育の大原則になります。


そして、推進計画を立案・管理し、設定した目標に近い値が出ているかどうかを計測して、PDCAを回しながら修正を加え、継続的に運用し、定期的なチェック体制を作ります。


例えば、現場の各部署に「コンプライアンス推進委員」を置くようにしましょう。推進委員を身近に置くことによって、社員が気軽に相談できる窓口ができたことになります。これだけでも社員のコンプライアンス教育は、グッと前進します。そしてそのためには、まず推進委員となった社員が、アドバイスを行うといった行動が取れるように、他の社員よりも積極的に知識を身につける必要があります。社員全員の教育の前に、推進委員のための研修や勉強会を行う必要があります。


ドキュメントや閲覧システム、そして、運用体制ができたら、いよいよ社員全員に対する「コンプライアンス教育」を始めます。



どうやってコンプライアンス教育に取り組ませるか?

コンプライアンス教育というと、「あれだめ」「こうしなければいけない」という話になりがちで、参加者がうんざりしがちかもしれません。 関連する法律の勉強も、コンプライアンスの担当者や、法務の業務に就いている社員にとっては、なじみなる意味のある勉強ですが、それ以外の社員にはとっつきにくいもの。誰だって余計な勉強はしたくないものです。


一般的に、法律関連の勉強は聞きなれない言葉も多く、そのままだと慣れていない学習者の意欲を削いでしまいます。したがって、「法律をそのまま読ませる」ような退屈な学習方法はなるべく避けたいところです。 そこで、コンプライアンス教育には、自分の業務に近い話で、積極的に勉強を行いたくなるような「ネタ」を用意するのが効果的です。


コンプライアンス教育でよく行われる手法が、同業界トラブルの事例を集め、その背景を分析し、自社に当てはめて予防策を考える、といった参加型のケーススタディが有効とされています。こうした事例を集めるには、普段から新聞、ネットニュースなどにアンテナを張る必要があるため、社員の意識が自然と上がります。


また、これらを部署ごとに競わせるといった手法も、1つの方法です。 それぞれの部署にあった身近な事例を映像などでわからせることにより、危機感が伝わります。


全社的に行えるのであれば、パネルディスカッション形式の研修も有効です。講師が一方的に話す講習会よりも、報告者のレポートに対して、各部署や階層を代表するパネラーがそれぞれの意見を述べるパネルディスカッション形式を採用することで、聴き手の参加意識を高めることができます。 パネラーは、各部門・各階層の社員だけでなく、アルバイトやパート、派遣スタッフ、さらには協力会社の社員などにも参加してもらうことで、議論がより立体的になります。 そして何よりも、コンプライアンス教育は諦めないことが何より大切です。根気よく組織が続く限り、何度も繰り返して行い続ける仕事と認識してください。



コンプライアンス教育は階層別に内容を変える

コンプライアンス教育は、立場によっては、教育・監督する義務が生じますので、階層別に重点内容を変化させる必要もあります。


例えば、新人や一般職員にはコンプライアンスの基礎知識習得を目的として、「就業規則の理解」「従業員の心構え」「自社でコンプライアンス違反があったら場合のリスク」「行動規範遵守の重要性」などを中心とします。


そして、身近な管理職の主任・係長クラスには、「コンプライアンス対処法」を行うべく、「部下の行動見本となるためにはどうすべきか?」「報告フロー」「対処法の理解」などを教育します。


さらに上位の課長・部門長クラスには「コンプライアンスに対する組織的な問題解決策」を実践すべく、「組織的なコンプライアンス機能強化」「コンプライアンス機能を有効に働かせるための管理職の役割」などを考えさせます。


最後に組織トップ、つまり経営者・取締役クラスに対する教育内容は「社員をリードする経営者のコンプライアンスにおける役割」を学ばせます。「法人の社会的使命と経営者の責任」「社内コンプライアンス体制の構築法」について理解し、トップが「本気」なことをアピールする活動の大切さを教育します。


トップたちの意識を手本に、社員全員がコンプライアンス教育に取り組むようにするというのは非常に大切です。会社として「本気」で取り組むという姿勢を見せなければいけません。キャリアが長い上位職ほど、コンプライアンスについて認識の弱い時代を過ごしているので、有用な人材がいるとはいえ、なかなかこのクラスを教育することは骨が折れます。(笑)


また、近年は「アルバイトやパート、派遣スタッフ」などのテンポラリスタッフのコンプライアンス教育が急務となっています。 アルバイトスタッフなどが個人のSNSで顧客情報を漏らしたケースや、飲食店で不衛生な作業態度を撮影し、ブログで公開するなどの行為は、雇用している企業に非難が向けられます。もはや「社員でもないのに、バイトにコンプライアンス教育を強いるのは難しい」などとは言ってられず、この階層への教育は重点課題となっています。テンポラリスタッフといえど、新人や一般社員と同様の内容を教育する必要があります。


少し長くなってしまいましたので、急遽(その3)に続かせていただきます。次回はより具体的な教育方法についてご説明いたします。 ここまでお読みいただきありがとうございました。

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